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ドコモ株主総会、5Gは1兆円の設備投資で3年をめどに黒字化目標

 NTTドコモは6月16日、第29回定時株主総会を開催した。同社の吉澤和弘社長が事前に受けた質問に対して一括回答を行い、質疑では株主からの質問を受け付け、役員が答えた。

 総会は会場となった都内ホテルのほか、株主向けにオンラインでのライブ配信も行われた。全員にマスクの着用を呼びかけ、吉澤社長を含む登壇者全員もマスクを着用して総会に臨んだ。

コロナウイルスの影響により収支影響は不透明。配当は前年同水準

 新型コロナウイルス感染症の影響により国際ローミング手数料や金融決済取扱高の減少などによる影響に加え、ネットワーク関連の費用減も影響しているとし、今後の拡大状況や終息時期により2020年度の収支影響は不明であるとした。配当については安定性と継続性を考慮し前年同水準の年間120円とした。

 5Gについては「設備構築のために2023年まで1兆円の設備投資を行う。先行してコストがかかるが、3年をめどに単年度黒字化を目指す」という。

 dポイントなどによる株主優待を実施する予定はあるかという質問に対しては「実施する予定はない」と回答。すべての株主への平等な還元のために、現金配当で還元を行うとした。

質疑応答

 質疑応答では、配当金額や社債発行枠といった株主目線の質問に加えて、NHKのストリーミング放送による受信料の取り扱いに関する質問や、料金プランに関する消費者目線の質問といった、消費者目線の質問も寄せられた。

代表取締役副社長 丸山誠治氏
取締役 中村寛氏
取締役 坪内恒治氏

――ワンセグ付きケータイの頃には、NHKの受信料が必要であるかの説明をしないで販売されていた。最近ではカタログなどにも受信料が必要になる場合があると記載されているが、それまでは一切説明がなかった。

 今後、NHKがストリーミング放送を開始して、ドコモのスマートフォンを所持しているだけで徴収員に契約させられる可能性があるが、ドコモはどう対策をするのか。

代表取締役副社長 丸山誠治氏
 現在のところ、最高裁の判決ではワンセグ端末も受信契約の義務があると出ている。あくまでもユーザーとNHKの間の話になるため、当社からの直接のコメントは難しい。店頭購入時に、支払い義務が生じるかどうか問われたら、NHKの受信料窓口をご案内するようにしている。

 ストリーミング放送については、現時点では受信料徴収の具体的な基準が決まっていないため不明であるが、いずれにせよ、当社からの直接のコメントは控える。

――NB-IoTについて、3月30日に終了を発表して3月31日にサービス終了になった。利用者が1人もいなかったことになると思うが、コストをかけて開発したのは無駄だったのでは。

取締役 中村寛氏
 IoTの通信方式や省電力技術はNB-IoTを含めて複数あり、NB-IoTについては、残念ながら市場の皆様の利用や、ユーザーからの反応も少なかった。引き続きほかの方式は続けているため、IoTサービスは今後も提供していく。

――5Gサービスが開始された。利用形態の例としてはB2B、B2B2X、M2Mなど、一端に法人がいる。サービスとしては各キャリアで同じようになると思うが、ソフトバンクでもなくauでもなく、法人がドコモを選ぶポイントとしては何があるか。

取締役 坪内恒治氏
 当社を選ぶポイントとしては3つある。1点目は8000人の営業体制やコールセンターを用意し、非対面でもサポート体制が整っている点。2点目は技術力で、R&D部門と連携し先進技術を活用したソリューションの提供が可能な点。

 3点目はパートナー企業の存在で、5Gオープンパートナープログラムにはすでに3400社が参加している。地方では地方創生セミナーなどを通じて全国の自治体や企業とのつながりを活かした連携ができることを強みだと思っている。

取締役 廣門治氏
取締役 田村穂積氏

――ドコモの社債について、4月3日、ムーディーズおよび日本格付研究所から国内発行枠に格付けが付与されている。格付けはドコモが新規に依頼したのか、格付け機関の定期的な見直しか。

 社債発行額が500億円であるのに対し社債発行枠が1兆円と大きい点も気になる。今後、M&A案件の予定があり、1兆円の枠を用意しているのか

取締役 廣門治氏
 新規ではなく2年ごとに行っている更新。枠は1兆円だが、あくまで余裕をみての枠取りであり、大きな資金需要は今のところない。

――数年前、来場したらお土産で中継車のミニカーをもらった。その後に広島の崖崩れがあって、中継車は現地に行けなかった。千葉県の台風もそうだが、中継車に意味はあるのか。

取締役 田村穂積氏
 移動基地局車は全国で100台強を用意している。2019年の千葉の台風の時には各地域から出動している。万が一、中継車が行けない場合は、ドローンを飛ばしてエリア確保や被災状況の把握する仕組みを用意している。ご理解いただきたい。

――今期以降も増配を継続してほしい。毎年増配しているのに据え置きとなると株主の失望は大きい。10円の増配に必要な資金はわずか100億円。20円でも200億円であり、ドコモにこの資金は十分にある。

 ドコモは業績がいい。吉澤社長の手腕のたま物だ。自社株買いは株主に株価でも配当でも貢献しないため、今後は自社株買いを行わないでほしい。

取締役 廣門治氏
 配当については新型コロナウイルス感染症の影響で経済と業績の先行きが不透明であるため、2020年度の配当については増配ではなく、2019年度と同じ水準にさせていただいた。ただ、継続的、安定的な配当という方針は変わらないため、財務状況を見ながら機会があれば増配を行う。

 自己株買いは効果が分かりにくいが、株式の数を減らし、企業価値の向上につながる。配当と自己株買いの二本立ては長期保有の株主から支持をいただいているため、ご理解を賜りたい。

代表取締役副社長 辻上広志氏
取締役 藤原道朗氏

――料金体系に関して、前々から不思議だった。総務省から不公平だという報道があるが、以前は端末を機種変更でもらえたりしたが、最近はポイントや買ってくださいという施策。まだ会社を変える人の方がちょっと有利なやり方のように思える。

 FOMAユーザーだが、通信方式が変わることで今の端末が使えなくなるのであれば、既存ユーザーに対する囲い込みやサポートが必要なのでは。

代表取締役副社長 辻上広志氏
 FOMA(3G)をご利用いただいている方には、新しい世代の回線に移行してもらうことも大事な経営課題だと考えている。スマートフォンを新しく購入する方には、はじめてスマホ購入サポートといった形で、手頃な価格で取り替えてもらう施策も進めている。

――MVNO向け接続料が将来原価方式となり、今まで他社と比べて一番安かったドコモが逆に一番高くなった。MVNOが他社に行ってしまう可能性もある。ドコモの設備投資の効率が悪いのではないか。

取締役 藤原道朗氏
 ネットワークの広さと品質に加えて、サポート体制の強化にも取り組んでいる。接続料はそれを踏まえたものであり、継続してご利用いただいている。効率性に関しては、引き続き取り組みを続けている。他社の詳細は分からないのでコメントは控えるが、当社としてもしっかり対応していきたい。

 総会はこの後、剰余金の処分の件、定款一部変更の件、取締役選任の件など6つの議案を可決し、40分で終了した。