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ドコモ、2019年度は新料金プラン影響で減収減益に

 NTTドコモは4月28日、2019年度の決算説明会をオンラインで実施した。営業収益は前年同期比3.9%減の4兆6513億円、営業利益は15.7%減の8547億円で減収減益となった。

 通信事業での営業収益は前年同期比2901億円減の3兆6870億円となったが、非通信事業のスマートライフ領域での営業収益は前年同期比1082億円増の9977億円となった。

 モバイル通信サービス収入の減少と、端末販売数の落ち込みが影響し、通信事業では赤字となった。スマートライフ領域においては、ケータイ補償サービスをはじめとしたあんしん系サポートサービスによる収益が全体の60%を占めているという。

契約者数は8000万を突破、5Gの契約者数は計画通りの滑り出し

 携帯電話契約数は前年比2%増の8033万契約となり、このうちスマートフォンやタブレットの契約数は前年比4%増の4204万契約となった。解約率は全体で0.54%(MVNOを除く)、ハンドセット(スマートフォンおよびフィーチャーフォン)のみで0.44%となり、いずれも前年同期比で0.03ポイント減少した。ドコモ光は前年度比13%増の649万契約となった。

 3月25日にサービスを開始した5Gの契約者数については、3月末時点で1.4万契約となり、おおよそ計画通りとした。また、直近では約4万弱の契約者数となっているという。

 なお、5Gのエリア展開については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が影響しているといい、2021年6月に目標としている1万局の達成は難しくなる可能性を示した(※関連記事)

 2019年度第4四半期のARPU(ユーザー1人あたりの月間平均収入)は4760円で、前年同期比から10円減少した。なお、NTTドコモのARPUには各種コンテンツなど付帯サービスの収入は含まれていない。

各種サービスの利用・契約状況

 dポイントクラブ会員数は7509万会員(前年同期比7%増)、dポイントカード登録数は4326万件(同28%増)となった。dカードやd払いなどを含む金融・決済サービスの取り扱い高は5兆3200億円(同36%増)で、そのうち4兆1500億円(同32%増)がdカードによるものだった。dカード契約数は1297万件(同14%増)となり、このうちdカードGOLDは685万件(同30%増)となった。

 d払いの取扱高は3990億円(前年度の3.2倍)となり、ユーザー数も約2.0倍に増加し2526万人となった。決済・ポイント利用可能な加盟店数も前年比63%増の171万カ所まで増加した。

 2019年度のdポイント利用数は1998億ポイントとなり、そのうち半数を超える1211億ポイントが提携先での利用だった。dポイント連携先は前年度比1.8倍の752銘柄となった。

2020年度は新時代のスタートの年、新たな取り組みへ

 同社は2020年度を「新時代の成長に向けたスタートの年」と位置付ける。5Gの早期展開をはじめとした「顧客基盤のさらなる強化」、金融・決済分野などの強化による「会員を軸とした事業運営の本格化」、パートナー企業とに共創による「5G時代の新たな価値創造」を柱に、デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務プロセスの効率化や3Gマイグレーションの強化による事業運営のスリム化による構造改革に取り組んでいくとした。

 なお、2020年度の業績予想については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、合理的な業績予想の算定が困難であるとし、現段階では非公表となった。業績予想の開示時期については、合理的な算定が可能となった時点において速やかに行うとしている。年間の配当金については前年同期末や前期末と同水準の120円を維持する。

質疑応答

――2020年度、業績の見通しが出しにくい中で、一番予想しづらい部分は何か。

吉澤氏
 2020年度の業績予想は非公開だが、新型コロナウイルス感染症の影響や変化、予兆は極力捉えたい。今年度の業績そのものへの不確実なものがたくさんあるが、利益水準は前年度の同水準を目指したいという意思はある。ただ、ユーザーの来店数などが読めない。3月後半以降、来客数がかなり落ちており、どこまで続くかわからない。来店数にともなう端末販売もあり、どこまで影響するかわからない。

 国際ローミングは想定できるが、実は音声通話は、3月中旬以降、増えている。とはいえ、定額の方が増えている。これが収益にどう影響するか読み切れない。一方、データ通信量も伸びている。1月からギガホを30GBから60GBに増量したことで、1月~2月ごろから対前年で5~6%伸びていた。3月以降は、それ以上伸びておらず微増と表現した。今後も動きを見なければわからない。

 配当も、安定・継続的な増配を基本方針にしてきたが、ドコモとして減配は一度もしていなかった。新型コロナウイルス感染症の影響はある程度があるが、財務的な基盤へどこまで影響するかといえば「すごい大きな変化が起きる」というほどではないのかなと。今回は2019年度と同程度を予定している。自社株買いについて決めたものはない。財務状況などを見て決めていくことになる。

――2019年度、端末販売数の下落が続いた。4月の状況は。

吉澤氏
 4月の結果はまだですが、落ちていることは確か。具体的な数字は申し上げられない。

――テレワークに伴うモバイルトラフィックは微増とのことだが、ARPUの下げ止まりはいつ頃とみているのか。

広門氏
 モバイルARPUは、割引適用後のものが、2019年度第3四半期と比べ、第4四半期は40円増え反転している。ただ、前年同期比はマイナス。新型コロナウイルス感染症の前は、前年同期比でも2020年度の第2四半期、第3四半期ごろに反転を狙っていた。しかし国際ローミング収入の減少などがどう影響するかというところだ。

吉澤氏
 4月は、フィーチャーフォンからスマートフォン、3GからLTEへの切り替えを進めてきた。しかし60代、70代の来店が少なくなっている。本来は、スマホ移行へのARPU増大も考えられた。あるいはアップセル(上位プランへの切り替え)もある。5Gギガホの契約率が高いことも(今後のARPU反転への期待要素として)ある。

――ショップの営業時間短縮による影響は。

吉澤氏
 緊急事態宣言の発令にあわせ、受付業務の制限を実施している。直近では、非常に影響があり、4月の来店数は、全国で7割減り、前年の3割程度になっている。その関係でコールセンターにも多く連絡いただいているが、コールセンターの体制も縮小しており、Webサイトでの手続きを案内している。

――販促費の減少は、4月の実績にどう影響しているのか。

吉澤氏
 端末販売の数が減り、契約も減っており、それにともなうインセンティブが減っているのは事実。ただ、まだ4月全体がどうなるかはまだまとまっていない。3月末時点では、2019年度最後で、新型コロナウイルス感染症の影響で、販売数の減少や手数料の減少となっており、4月も続くと見ている。

――楽天モバイルのサービスが始まった。受け止めと影響への見通しは。

吉澤氏
 4月8日時点でバージョン2ということで、わたくしどもも少し驚いた。まだ開始から1カ月経っていないが、大きな影響は発生していないという認識だ。新型コロナウイルス感染症の影響もあるが、今のサービスエリアの状況がどうなっているか、わからないこともあり、今後の楽天モバイル側のエリアやラインアップの展開をよく見ていく必要がある。6月に5Gサービス開始を予定しているとのことで、必要に応じて対策を講じていく。

 新型コロナウイルス感染症の影響はドコモも同じだが、ネットワーク品質やアフターサポートなどをしっかり訴求して対応していきたい。

――5G契約数について。3月末と新型コロナウイルス感染症の影響で目標に達しているかどうか教えてほしい。

吉澤氏
 3月末時点で1.4万人。25日開始だったため計画通りだと思っている。端末調達数が予定よりも少なかった。ちょうど今、サービス開始から1カ月経ったが、端末調達は現行の2機種は順調に入っており、契約数は4万弱。4月末で4万を超えるだろう。たとえば5Gギガホの選択率も約半分。従来のギガホは20数%で、倍程度になった。オンライン購入の比率も高い。

――新型コロナウイルス感染症で、エリア整備の影響は?

吉澤氏
 設備投資のなかでも建設関連では、やはりネットワーク機器などの物品が、中国を含む海外生産のものについては、サプライヤーの製造の遅れがある。4月時点で影響はないが、今後影響する可能性がある。ただ、それがどの程度になるか、状況を見ていかねばならない。

 建設工事事業者側は、かなり止まっているということで、通信建設も仕掛中のものを優先してもらいつつ、あとは優先順位をつけて対応していただいている。作業者がフルで出てこられるわけではない。5Gをしっかり推進していくが、今の状況が続けば、年度末の政令都市を含む500都市は絶対達成したいが、その次の来年6月までの1万局という目標はかなり難しくなる。何千局の減少になるか、注目してシミュレーションしている。

――5Gの基地局整備について、来年3月時点での目標に向けた自信や工夫は?

吉澤氏
 5GだけではなくLTE高度化の工事もあるが、結局は優先度をどうつけるか。2020年度末の500都市は必ず達成したい。その次の1万局は、かなり前倒しした計画で、影響が出てくる。

――5Gを体験するイベントが、五輪など中止になっているが、顧客獲得への影響は?

吉澤氏
 コンシューマー向けのイベントが中止になると、影響は少しあるかなと思う。しかしイベントは、実際に開催する方から5G端末をお貸し出しする形で、結局はB2B、法人との契約や、産業向けのサービス。できれば法人向けは計画通りしっかり進めたい。今の状況からは、エリアがかなり限定されるものの、5Gの通信速度がありつつも、「LTEで使い放題」をメリットと感じてもらっているようだ。積極的に働きかけて、250万契約を達成したい。