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KDDIがドコモの「解除料」に疑惑の眼差し、第20回モバイル研究会
2019年11月20日 17:32
総務省は20日、都内第2合同庁舎において「モバイル市場の競争環境に関する研究会(第20回) ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWG(第19回)」を開催した。
今回の焦点は、各キャリアにおける改正電気通信事業法の前後の取り組みやSIMロック解除などの状況のヒアリングとなった。
NTTドコモ
10月1日から施行された改正電気通信事業法に対応する新プラン「ギガホ」と「ギガライト」を6月から提供していることを紹介。また、ドコモのクレジットカード「dカード」で支払うことで2年契約よりも170円安い「dカードお支払割」を提供、1980円から利用できる。料金自体も従来プランから4割程度値下げされた。10月21日時点で800万契約超で、直近では900万件を突破する見込み。
端末販売についても、前述の分離プラン提供開始後は定価販売を基本としているがユーザーの負担を減らす施策に取り組んでいる。一例としては「iPhone 11」は8万円弱、「Galaxy A20」については2万円弱ほどの販売価格であり、これからも4万円以下のスタンダードモデルの充実を図るとした。
旧プランユーザーへ対しての周知としては、フィーチャーフォンユーザーを対象とした「はじめてスマホ割」や、dカードお支払割やキャンペーン施策も提供し法を遵守する形で積極的に移行推進を促していく。マス向けの周知としてはCMやWebサイトで幅広く自分に適したプランを知ってもらい、個別の周知としては月々サポートなど2年契約が終わるタイミングでメールなどで新プランへの移行を促すメールを送るという。また、ドコモショップ店頭での「料金相談フェア」も継続する。
また、改正法の施行に伴い全社員向けのWeb研修などを行い、広告表示については新たに自己チェックを増やした。消費者庁の意向に従い、負担額をわかりやすく表示する。
さらに、SIMロック解除について、前回の会合でも議論があったが、義務化に先駆けて中古端末のロック解除を半年早く実施。加えてWebでの申込みも受け付けるとした。
KDDI
通信料金については、LTEが開始した当初、通信容量7GBに対して6000円という値段で始まったことを紹介。これが直近では同じ7GBでも料金は3480円と価格が低下した。さらに大容量の通信を必要としないユーザーに対しては、1GBで1980円からという低廉な料金での提供もあり、2年契約についても解除料を1000円として定期契約なしプランとの差額も170円と法に従った形のプランを提供。加入者は1600万人と好評を博しているという。
移行促進については、ユーザーの自由な選択を妨げることのないような訴求方法を取っている。auショップなどでは、ユーザーの利用実績に基づいて、一人ひとりに適したプランを勧めるよう指導しているという。旧プランユーザーには更新月の到来前に通知を出し、2年契約で解除料1000円のプランがあるということを周知している。
広告表示の適正化については、さらなる徹底、チェック体制を強化するとした。不適切な事例を社内共有、実際にユーザーが見てわかりやすいかなどユーザーの意見を取り入れたチェックを行うとした。
また、キャリアと代理店との関係についても、従来は新規契約数に比重を置いた評価をしていたが、市場環境が変化しつつある昨今の事情を踏まえて、ユーザーの継続的な利用を評価軸にするとした。
ソフトバンク
改正電気通信事業法に適合した料金プランを9月13日から、ワイモバイルについても10月1日から提供していることを紹介。新プランは解除料を撤廃、旧プランからの移行時にも解除料は免除される。今後は、継続的な利用を前提として、プランのシンプル化やさらなる低廉化を検討している。
解除料を撤廃したことはワイモバイルでも同様で、従来は「S/M/L」のプランだったが、大容量通信を必要とするユーザーが少数派であることを受けて、中容量プラン「R」の提供にいたった。
端末販売については、以前の会合でも議論に上がった「半額サポート+」の名称を「トクするサポート」へ名称を変更した。CMの出稿停止なども行い、広告から「半額」の表示を取りやめた。SIMロック解除についても総務省からの要請により、即日解除を可能とした。SIMロック解除については、今後もガイドライン変更があるものとして、その都度見直しをしていくとした。
広告については、ルールを整理しており、代理店に対してTwitterなどのSNSにおける価格訴求を禁止していたが、ブログでも訴求を禁止する。もし代理店側が違反した場合の罰則強化を11月から行っているという。従来の違反報告フォームはショップにのみ対応していたが今後は量販店を含めた全チャンネルに拡大する。
解除料についてKDDIが指摘する場面も
サービスを途中解約する場合の解除料だが、10月から施行の改正法により上限が1000円と定められた。KDDIとソフトバンクは、既往契約である旧プランから新プランへ移行する際の解除料9500円の支払いを免除している。
このことについて、KDDIは「一部他社では、旧プランから(解除料1000円の)新プランに移行したにも関わらず、従来の解除料9500円を請求されるケースがあるようだ。ユーザーの自由な選択を考慮すると、法令やその主旨に反するのではないか」と他社の施策に対して言及。具体名は伏せつつもドコモを非難する内容となった。10月以降に新プランに移行したにも関わらず、9500円の解除料が請求されるのは法令に反するのではないかと見解を示した。
これに対しては平野晋構成員からもドコモへ説明を求める声が上がった。ドコモ担当者は「従来は2年契約を選択したユーザーが途中で2年契約なしに変更した場合に解除料(9500円)をいただくという仕組みだった」と説明。2年契約プランを中途解約する際の抜け道になることを阻止する措置だ。
「改正法に対応するために新プランでは、解除料のなくなるdカードお支払い割やdカードのない方にも2年契約ありの解除料1000円のプランを用意した。しかし旧プランのユーザーについては、既往契約の考え方に則り、(10月以降も)2年契約の期間中に契約を変更する場合には9500円の解除料の留保期間としている」とした。なお、旧プランの2年契約が終了すれば、解除料は1000円となる。
広告のあり方や料金に対する意見
北俊一構成員からは、ソフトバンクの広告の施策である違反した代理店への罰則強化について「あくまで代理店への罰則。定期的に確認や抜き打ち検査など検討しているようだが、ルート営業などが日々チェックすれば済む話ではないか」と指摘。
ソフトバンクは「ソフトバンクの社員が定期的に行っている。どこまでの頻度で実現できるかは営業と相談しなければならない。問題があれば代理店だけではなく指導する我々の責任でもある。覆面調査などはやるが、通常の営みのなかでやっていないこと、足りないことがあれば実現検討したい」とした。
また、北構成員は「モバイル市場に関する最近の動向」について、野村総研が2018年5月に実施した携帯料金の意識調査でも携帯料金に満足か、納得しているかと同じことを聞いたが、高いし納得していないと回答したユーザーはおよそ3割と同程度であったことを明らかにした。
こうした回答の背景には携帯電話会社への不信感があると指摘。必要のない高いプランを契約させられた、必要のないサービスへ登録させられたなどの経験を持つ人は不満を持つ傾向が高い。「各事業者の料金への取り組みがもっと広まっていけば、日本の携帯電話ユーザーの不信感は薄まっていく。そうすれば同様のアンケートを行っても高いけど納得する、安いし納得すると回答する人が増えるのではないかと期待する」と語った。
このほか、西村真由美構成員は「広告価格はWebショップでの価格を基にしているが、お店にいくと独自の頭金を加算するケースが多い。広告には頭金の話がなかなか出てこない。安くしていこうという時代の流れでショップがこれからも頭金をつけるというのはよく分からない」と意見を述べた。
3社は、頭金の設定にはノータッチであり、代理店が決めているものだとした上で、わかりやすい表示をするよう指導するとした。
会合の中で内容が紹介された「モバイル市場の最近の動向について」によると、「日本の携帯料金が安くなったか」という設問に対して、回答者のうち53%が変わらないと回答。端末の平均試用期間は2.4年だった。
消費者庁からは
また、消費者庁はTwitterで新しいスマートフォンを購入する際には、自分に適した買い方を知ろうとお知らせを出したことを紹介。1台の端末を長期間使う場合は、各割引施策を利用しないほうが支払額が安くなる場合がある、毎月の支払額よりも総額を知ろうという内容で、今後も状況を見ながら適宜対応するとした。