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センサー内蔵ボールでのデータ計測、スマホでの試合観戦――KDDIが大学スポーツ支援

大学スポーツ協会とパートナーシップを締結

 大学スポーツ協会、KDDI、マイナビ、MS&MDインシュアランスグループ ホールディングスは、大学生アスリートの学修支援、安心安全、ファン層拡大を目指してパートナーシップを締結した。21日、都内で大学スポーツ協会(UNIVAS)パートナーシップ発表会が開催された。

 大学スポーツ協会(以下、UNIVAS)は、2019年に設立された一般社団法人。大学スポーツを盛り上げるための取り組みを行っており、競技横断大学対抗戦「UNIVAS CUP 2019」の開催や、動画配信などのイベントを開催している。

テクノロジーを用いてアスリートの支援を

 UNIVASは、大学生アスリートに「キャリア学習支援サポート」、「トレーニング及びコンディショニングサポート」、「リハビリテーションサポート」などの支援策の提供を予定している。KDDIとUNIVASは、これらのサービスを学生にとってより使いやすく、精密なデータを基に提供することを目標に、2020年以降にUNIVASに加盟する222大学、34競技団体の選手やチームの情報を管理する「UNIVAS FUNDAMENTAL DATABASE」を構築する。

繁田光平氏

 また、競技力データや身体データなどをIoTやウェアラブル、センシングデバイスなどを用いて収集することで、オンラインコーチングなど選手への競技指導、練習環境の改善や怪我の予兆検知への活用などを進めていくとしている。

 パートナーシップの参加については、UNIVASの理念に深く共感したことが大きいと、KDDI ライフデザイン事業企画本部 ビジネス統括部 部長の繁田 光平氏は語る。「少し時間はかかるかもしれないが、KDDIもこの分野にフルコミットして大学スポーツを盛り上げていきたい」と繁田氏は意気込みを口にした。

IoTを指導に組み込んでより効果的なトレーニングへ

 そうしたデータの収集においては、KDDIとアクロディアの提供するセンサー内蔵型のボールなどのIoTデバイスを活用する。また、KDDIのスポーツIoTプラットフォーム「athle:tech(アスリーテック)」を活用する。センサーが内蔵されたボールを使い、普段どおりの投球などの競技を行うだけで、データが蓄積されスマートフォンやパソコンなどで、閲覧しながらコーチングやコンディション管理など普段の練習に取り入れることができる。

 従来では、スポーツの指導は主に指導者の経験に基づく判断がなされていたが、「athle:tech」を用いることにより、特別な設備を用いなくてもデータに基づいた練習ができる。

野球ボールのカットモデル。中央に見える半透明の球体がセンサー
アプリ画面。ここにセンサーが記録した情報が表示される

 センサー内蔵野球ボールの耐用投球数はおよそ1万球。センサーは交換不可のボタン電池で動作しているが、センサーよりも先にボール自体が寿命を迎えるという。メーカーでは、今年度中にも革の張替えサービスをアナウンスする予定としている。

 また現在は、センサー内蔵ボールは野球ボールのみだが、ゴルフボールやクリケットボールなどの展開も見込んでいる。

 KDDIが出資するベンチャー企業ユーフォリアが運営するアスリートのコンディション・傷害管理を行うWebサービス「ONE TAP SPORTS」の活用を予定しているという。これは、アスリートの試合や練習を通じて得られる行動データに加えて、食事メニューやケガの状態などを組み合わせて解析することで、トレーナーなどが選手に対して適切な指導ができる。

 また、5Gが開始された暁には、ARグラスを活用した練習も実現する可能性がある。センシングデバイスから得たさまざまなデータをARグラス上に表示しどう動けばいいかを判断するということもあるかもしれないと繁田氏。

スマホを用いた観戦も

 さまざまな試合の映像化を進めることもまた、KDDIの取り組みの1つ。より多くの試合を映像化し、ライブ配信やダイジェスト配信することで、選手も自分の分析に使うことができる。また、視聴機会が増えることで、ファン層の拡大やOBが集うコミュニティの創出なども可能だとしている。

 そうした取組の一環として、KDDIは、運動通信社と共同で運営するスポーツメディア「SPORTS BULL」を通じて、スマートフォンやタブレットを用いた新しいスポーツ観戦を提供している。従来では、観戦機会が限られていた大学スポーツをスマートフォンやタブレットなどを通じて手軽に楽しめるようになった。

 また、リアルな観戦にも新たな経験を提供するとしている。肉眼で見るだけではなくマルチアングルや360度映像で決定的瞬間を観戦しながらリプレイや、ナイスプレイに対して、「いいね!」ボタンを押して「ネット観戦とリアル観戦の一体感を得られる世界を創りたいと繁田氏。

 将来的には5G通信を用いてVR技術により過去の名勝負など時間と空間を超えた観戦体験なども見据える。

 最後に繁田氏は「KDDIはUNIVASとともに、スマホを中心としてパフォーマンスアップや試合観戦ができる環境を創りたい。ぜひ皆で盛り上げていけたらと思う」とコメントした。

人材や安心安全のサポートも

 同パートナーシップにはマイナビとMS&AD インシュアランスグループ ホールディングスも参加している。

 マイナビは、主に「アスリートと社会を繋ぐエコシステムの構築を目指す」としている。全アスリートを対象とする職業の紹介や、人材開発を行うという。

 MS&AS インシュアランスグループ ホールディングスでは、アスリートの安心安全の部分をメインに活動を行う。競技中の事故のみならず、用具落下による受傷やハラスメント問題、経済面など様々なリスクを未然に防ぎ、万一発生した場合の影響や負担の軽減策を提供するとしている。

早急に大学生アスリートを支援する体制を

池田淳司氏

 発表の中で、UNIVAS 専務理事の池田淳司は「今日、パートナーからも力強く共感するといっていただけた。協会もできて半年が経過する。早めにアスリートの方々のサポートができるようなプログラムをリリースを目指したい」と今後の抱負を語った。

スポーツ庁長官 鈴木大地氏が祝辞を述べた
ゲストトークも行われた。右からスポーツコメンテーター田中雅美氏、野球指導者田中浩康氏、ハンドボール選手宮崎大輔氏。