ニュース
5G×VRでプロ野球観戦、ソフトバンクが福岡ヤフオク!ドームで実験
アバターによるコミュニケーションで遠隔地での観戦をイメージ
2019年3月22日 22:43
ソフトバンクは、福岡ソフトバンクホークスとともに福岡ヤフオク!ドームで実施している5Gを活用したVR野球観戦の実験の模様を報道関係者向けに公開した。
今回の実験では、球場内4カ所(バックネット、一塁側カメラマン席、三塁側カメラマン席、ライトスタンド)に高画質VRカメラを設置。それらで撮影した映像を3.7GHz帯と28GHz帯の5Gネットワーク経由でVRヘッドセットに伝送する。
ソフトバンクでは昨年、5Gを使用しないVRライブ映像配信サービスを提供していたが、高速大容量という5Gの特長を使うことで、より高精細な映像の配信が可能になる。さらに同社がこだわったのが、低遅延という5Gの特長を使ったコミュニケーション要素の追加だ。
ソフトバンク テクノロジーユニット モバイル技術統括 モバイルネットワーク本部 本部長の野田真氏によれば、「古くは手紙に始まり、電話ができ音声でコミュニケーションが行えるようになり、今ではテキストチャットも行われており、コミュニケーションは時間と空間を超えてリッチになってきている。今回の実験でイメージするサービスは、コミュニケーションの濃さのレベルをさらに上げる」と語る。
実験では、球場内のスーパーボックス(VIP観戦ルーム)をVR空間上に再現。そこに4人のユーザーが集まり、1人のガイド役と一緒に試合を観戦するという演出となっている。現時点では、VR空間上に再現されたスーパーボックスの中に実際にユーザーが集まって体験する形となっているが、正式サービスでは5Gネットワークを使用し、離れた場所にいる家族や友達がVR空間に集まって利用することを想定しているという。
VRゴーグルとヘッドホンをつけ、横を向くと他のユーザーがアバターとして現れ、音声での会話を楽しめる。試合中は実況音声も被って聞こえてくるが、ユーザー同士が会話する際には自動的に実況の音量を絞るなどの工夫も施されている。
観戦中はコントローラーを使い、前述の4つの視点を自由に切り替えられる。コントローラーを持つ手を振れば、自身のアバターも手を振るため、「なんでやねん」などの簡単なボディランゲージによるコミュニケーションも可能だ。
野田氏によれば、5Gの無線区間自体の遅延はほぼ無いとはいえ、映像のエンコードやデコードなどで数秒の遅延が発生するため、商用化に向けて、こうした別の技術要素による遅延をいかに抑えられるかが課題だという。また、実験ではVRゴーグルとしてOculus Goを使用しているが、長時間使用すると温度の上昇でフリーズしてしまうなどの課題もあるようだ。
それでも野田氏は「福岡ヤフオク!ドーム以外や他のスポーツイベントでも同様の実験やデモを行い、商用化につなげたい」と述べ、5Gならではのサービスの実現を目指す意向を示した。