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VRで新たな野球観戦スタイルを提案する福岡ソフトバンクホークス

ソフトバンクのVR事業担当者に聞く

 ソフトバンクでは、福岡ソフトバンクホークスとともに、7月26日~29日にかけて福岡 ヤフオク!ドームで開催される「鷹の祭典2018」をVRライブ映像で楽しめる視聴権チケット付きのVRゴーグルと、「鷹の祭典2018専用ユニフォーム(レプリカ)」のセットを販売している。

 VR技術を活用して新たなスポーツ観戦の形を模索するソフトバンクだが、同プロダクトを企画した新規事業開発室 新規事業推進部 VR事業推進課 担当課長の杉浦正武氏に、サービス提供の背景を伺った。

視聴権、ゴーグル、レプリカユニフォームをセットにした「ホークスVR」

期待は大きいが、なかなか普及しないVR

ソフトバンク 新規事業開発室 新規事業推進部 VR事業推進課 担当課長の杉浦正武氏

 杉浦氏は、「さまざまな調査でVRが期待されていることは明確に分かっているが、VRが普及しているかというと、どうしても体験者が少ない状況」と語る。ただ、若い世代ほどVRに興味を持つ傾向が顕著で、男女ともに興味を持っており、コンテンツが足りないからゴーグルが普及しない、ゴーグルが普及していないからコンテンツを制作する業者が出てこないというネガティブなスパイラルを脱却すれば、市場が開けるはずだという。

 そこで目を付けたのが福岡ソフトバンクホークスというグループ内の強力なスポーツコンテンツ。正式なサービス提供に先立ち、VR配信ソリューションを手掛けるピクセラと組んで、今年3月末のオープン戦と開幕3連戦でテスト配信を実施した。

 その際の視聴データを確認したところ、平均視聴時間が約20分で、一定数のユーザーが60分以上の長時間するという結果が出たという。このデータに「非常に勇気づけられた」という杉浦氏は、サービスの改良と球団との交渉を重ね、鷹の祭典での本サービス提供にこぎつけた。

球団と交渉してVRのために球場の壁面に穴をあける

バックネット下にあけられた四角い穴

 無料テストの際には、バックネット裏、1塁側カメラマン席、外野席の3カ所にカメラを設置していたが、やはりもっといろんな視点で楽しめるようにしたいということで、3塁側カメラマン席にカメラを追加。さらに、バックネット裏のカメラをバックネット下の球場の壁面に穴をあけ、そこにカメラを設置してしまった。

 「いかに良い場所にカメラを置けるか、というのが勝負」と語る杉浦氏は、「フィールド内にカメラを置くというのは、現状のプロ野球の仕組みとしては、そこにボールが当たったらどうするのか、選手がぶつかったらどうするのか、となる。(カメラを設置できるのは)やはりフィールド外となるのですが、その境目の一番ギリギリ、客席の最前列よりも前に置きたい、ということで、この位置になった。そこから見ると、かなりの迫力になる。ここに関してはホークスさんに最大限のご協力をいただき、(バックネット下の)球場内に穴をあけてしまうことにも許可をいただいた」と振り返る。

穴の中にVR撮影用のカメラが設置されている

 4つのカメラの視点切り替えは、コントローラー不要で、見たいカメラ位置にあるカメラアイコンを画面内のポインターが合うように見つめることで行える。また、“マジックビジョン”というアップ映像を画面内に表示することで、クロスプレイなどもあわせて楽しめるように工夫されている。さらに、音声実況も流すことで、試合展開を楽しめるようにした。

無料テスト時のアングル
本サービスでのアングル

VRゴーグルにもこだわり、実は貴重なレプリカユニフォーム

特注のVRゴーグル

 また、無料テストの時は、VRゴーグルは自前のものを用意する必要があったが、今回は専用のホークスロゴ入り特注品を用意。「240gと比較的軽く、手軽に持ち運びができて、それでいてそんなに安っぽくない。布地が貼ってあって、上品な感じのデザインで、顔に接するクッションの部分もいい感じで、隙間なくフィットする。それが没入感が増すということにも繋がる。安いゴーグルにはない、ツマミで焦点距離を調節する機能もある」(杉浦氏)という自信作だ。

 実はゴーグルとセットで提供されるレプリカユニフォームも、ホークスファンからすれば非常に貴重なものなのだとか。杉浦氏は「鷹の祭典のユニフォームは、基本的に鷹の祭典に行かないと入手できません。鷹の祭典のチケット自体がなかなか手に入らないものなので、結果としてユニフォームも手に入りにくいという状況がありますから、このセットには非常に価値があるんです」と、そのレア度を表現する。

夢は通年でのサービス提供

 気になるのは、鷹の祭典が終わった後。球場の壁面に穴をあけるなど、かなりの無茶をしているだけに、通年でのサービス提供も期待される。また、ファンからすれば、カメラの数をさらに増やし、普通は見られないようなアングルで視聴できるようにしてもらいたい。

 これについて杉浦氏は、「例えば、ブルペンで控えのピッチャーが投球練習しているところだとか、優勝して、胴上げだとかビールかけだとか、こういうものも撮れるものなら撮りたい。せっかくだから続けたいですよね。現時点で発表できるものはないが、VRの担当者個人としては、通年でやりたいという希望はある」と夢を描く。

 他球団についても、現時点で発表できるものはないが、興味があるというところがあれば協業していきたいとしている。

オウンドメディアの「ソフトバンクニュース」でレポーターを務めるHKT48の坂口理子(左)と渕上舞(右)もホークスVRを体験