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KDDIが通信設備を提供、4000mの海底探査競技で日本チームが決勝進出
「Shell Ocean Discovery XPRIZE」、決勝に臨むロボット探査機を披露
2018年9月18日 19:23
海洋研究開発機構(JAMSTEC)ら8つの機関・企業が若手スタッフを中心にチームを結成した「Team KUROSHIO」が、ロボット探査機で海底探査技術を競う「Shell Ocean Discovery XPRIZE」の決勝競技に進出する。9月18日には同チームが使用する無人のロボット海底探査機などが披露された。決勝の競技は11~12月にかけて開催される予定。
「Shell Ocean Discovery XPRIZE」は、XPRIZE財団が運営する、世界規模の大きな課題解決を目的にした競技会。今回のテーマである海底探査技術は、地球の大部分を占める海底のほとんどが、おおまかな地形しか探査できていないことや、海底資源の開発ではすばやく低コストに、広範囲を探査することが求められ、海底探査に技術革新が求められていることなどを踏まえたもの。スポンサーはロイヤル・ダッチ・シェルで、賞金総額は700万ドル(約8億円)。
「Shell Ocean Discovery XPRIZE」は2015年末に概要が発表され、約3年をかけて実施されてきた。ロボット開発をともなう競技会としては短期間に実施されることになり、各チームでは急ピッチで開発が進められている。2018年11~12月に実施される「Round2 実海域競技」が決勝にあたる。同競技会には32チームが参加し、決勝は8チームで競われることになった。日本からは3チームが参加、「Team KUROSHIO」が決勝に残っている。
ルール
決勝の競技では、指定された海域にて、500平方kmという超広範囲の海底地形図を作ることが目標になる(一般的なAUVは10平方km)。解像度は水平5m、垂直50cm以上。
水深は4000m、調査は24時間で、最低でも250平方km以上の海底地形を調査することと、海底ターゲットの写真撮影10枚が必要になる。
また、海面に(人が乗船する)母船が待機しない母船レスのオペレーションが規則で、展開できる装備は40フィートコンテナ1個に収める必要がある。24時間の調査を終えた後は、48時間以内に海底地形図を作成し提出しなければいけない。
「Team KUROSHIO」
決勝では、目標海域の近くの地上から通信することは認められており、「Team KUROSHIO」では、無人の母船「ASV」(Autonomous Surface Vehicle、洋上中継機)を沿岸から通信衛生経由で操作する方法をとる。ASVは、沿岸から2隻の「AUV」(Autonomous Underwater Vehicle、自立型無人潜水機)を曳航して目標海域まで向かい、海面を移動しながら、潜行するAUVと音波で交信、監視を行う。探査終了後は再びAUVを曳航して沿岸に戻る。
24時間という長時間の調査が必要になること、広範囲を調査するために推進速度も必要になることから、AUVは2隻とし、250平方kmずつ担当する形。想定通りにいけば、1隻で250平方kmのマッピングを終えることは可能という。
KDDIは主に、AUVを曳航し、海面を移動するASVの通信設備を提供する。ASVには通信衛星対応のアンテナが装備され、沿岸からの操作に対応するほか、周囲の様子を捉えるカメラの映像もリアルタイムに送出する。沿岸ではKDDIの遠隔作業支援システム「VistaFinder MX」で監視が行える。
また、2隻のAUVのうちの1隻「AE-Z」は、旧KDDI研究所が開発したAUV「AE-2」を元に、東京大学生産技術研究所が改修した機体になっている。
「Team KUROSHIO」共同代表の中谷武志氏は、「アジア唯一の決勝進出チーム。日本代表、アジア代表として決勝に向かう」と意気込みを語ったほか、ほとんどをロボットによる無人と自動潜行で実現することから、競技会で競う技術を基にして、将来的には、調査会社がワンクリックで調査を依頼し入手できることが目標とした。