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パ・リーグの試合をVR観戦、Supershipのプラットフォームで

 パシフィックリーグマーケティングは、VR(仮想現実)による映像配信サービス「パーソル パ・リーグTV VR」を7月25日より提供する。Supershipのプラットフォーム「XRstadium(エックスアール・スタジアム)」で提供する。

 「パーソル パ・リーグTV VR」は、プロ野球のパ・リーグの試合をVRで配信するサービス。2018年シーズンは30試合以上のリーグ公式戦をライブおよびオンデマンドで配信する。

 配信される映像は、VR用に撮り下ろしたもの。バックネット、1塁側のフィールド、センター、3塁側フィールド、3塁側ベンチと最大5カ所のカメラアングルを自由に切り替えて楽しめる。離れた場所にいる家族や友人がアバターで登場し、VR空間上の観覧席で隣に座り、音声で会話をしながら一緒に観戦することもできる。

 カメラが設置される球場は、札幌ドーム、メットライフドーム、ZOZOマリンスタジアム、京セラドーム大阪、楽天生命パーク宮城の5カ所。対応デバイスは、OculusGO、Gear VR、MirageSolo、Daydream View。またスマートフォンとVRゴーグルの組み合わせでも利用できる。

 料金は1試合あたり500円。なお、7月27日~29日の試合は、499円返金されるとのことで、実質1円で観戦できる。

5G見据えた「スポーツ×通信」

 VRプラットフォームを手がけることになったKDDIの繁田光平ビジネス統括部長は、同社が通信とライフスタイルの融合を目指す中で、2020年代の5G時代での取り組みの一環として「スポーツ×通信」があると説明する。高速・大容量、超低遅延、超多数接続といった特徴を持つ5G時代に適したサービスとして、高精細で迫力ある映像をVRで楽しむといった世界観だ。

 これまでにもKDDIでは、スポーツをより楽しめるサービスを手がけてきた。たとえばかつての3G時代には、au Smart Sportsというサービスを提供。1人で走るだけではなく、ネットを通じて、他のユーザーの運動を見せることで、体験の共有・可視化を進めてきた。

 繁田氏は「5Gでは、音声エージェント、ARなど新たなユーザーインターフェイスが登場するかもしれない。時間や空間を超えるなかでスポーツをアップデートできる、観戦体験を変えるxRサービスの第1弾として提供する」と意気込みを見せる。

森岡氏(左)と繁田氏(中央)

 プラットフォームを提供するSupershipの森岡康一代表取締役社長は、「コンテンツの作り方らが2次元から3次元にあわせつつある。5G時代が到来する今、空間をまるごと伝送することで、社会の課題が何か解決できるのではないかと過去2年間模索してきた」と説明。まずはスタジアムという環境にフォーカスを当てて、「XRstadium」を開発してきた。

マイナースポーツの振興にも役立てられる

 まずはパ・リーグという人気スポーツ分野での取り組みとなるが、球団にとっては、球場が仮に満席でも、VRであればさらに観客を増やせる、つまり収入増も期待できる仕掛けであり、メジャースポーツだけではなく、マイナーな分野のスポーツにとっても期待できそう。

 あえてKDDIやSupershipとして参入したい競技はあるか? という問いに森岡氏は、2019年にワールドカップを控えるラグビーを例に挙げる。森岡氏自身がラグビーに親しんできたという個人的なバックグラウンドから、ラグビーの普及に一役担いたいと語りつつ、「XRstadiumは解説を聞きながら楽しめる。とっかかりが難しい競技であっても経験者からの解説を聞きながらであれば、理解が進む」と説明する。

スポーツが結ぶコミュニティにxRで貢献する

 また繁田氏は、スポーツブルと高校野球に関するコンテンツを手がけている現状を踏まえ、「そうした(高校球児の)試合のVR配信にはOBが集まるのではないか。一般にOB会の運営は難しく、会費を集めることも難しいと聞くが、そうしたコミュニティの形成にも役立ちたい。配信する空間に人が集まることで、たとえばVRプラットフォーム上で1000円寄付するといった手続きもできる」と、距離と時間を超えるVRならではのアイデアを披露。

 これに森岡氏も「純粋に母校の試合って観たいですよね。普段、繁田ともそんな話をしています」と応じる。

競合に対するアドバンテージ、ノウハウに自信

 日本国内では、スポーツの映像配信サービスを手がけるDAZNといった事業者も存在する。そうした企業が、似たような仕掛けを展開してきた場合、KDDIとSupershipはどう対抗するのか。

 森岡氏は「実は2年ほど試行錯誤を重ねてきた。2Dと3Dの映像配信は、似て非なるもの。すぐには追いつかれないだろう」と語り、ノウハウが必要だと説明。たとえば映像もさることながら、没入感を高めるには音声が重要だという。アドバンテージを維持していくためにも、継続して、新たな仕掛けを取り入れていく考えだという。