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NTT固定電話網のIP化、円滑な移行の在り方をまとめた1次答申案

意見募集開始、携帯電話事業者が設定する通話料の高止まりに注文も

 情報通信審議会は、総務大臣から「固定電話網の円滑な移行の在り方」について諮問を受け、調査審議を重ねた結果として1次答申案を取りまとめ、公表した。2月23日まで意見を募集し、総務大臣に答申する。その後は、2次答申も取りまとめられる予定。

 NTT東西は2010年に固定電話網に関する展望を示し、情報通信審議会はこれを受けて提言。2015年には改めてNTTから、固定電話をIP網へ移行する構想が示され、同時に、2025年頃には既存設備の維持限界を迎えるという見通しも明らかにされた。

 NTT、総務省ともに、2025年をターゲットにNTT東西の固定電話網のIP化を進めている中で、審議会から総務大臣に向けたものとして具体的な考え方や対応方針が示された形になる。

 NTT東西の固定電話網(公衆交換電話網、PSTN)は、現在も基幹的な通信インフラであり、競争基盤としても提供されていることから、移行後のIP網の姿は利用者・事業者双方に大きな影響を与えると想定されている。今回の答申案では、「移行後のIP網のあるべき姿」の考え方や移行時の個別の問題について対応が整理されている。

 答申案では基本的な考え方として、IP網への移行で、距離に依存しない低廉な電話サービスが可能になると指摘。アクセス回線の光化とあわせて、低価格化や競争環境の整備などの“移行の意義”を最大限活かすことが、移行の円滑化につながるとしている。

利用者向けの対応

 利用者向けの対応については、旧来の固定電話(メタル電話)から光IP電話への移行の間に、メタルIP電話を想定。現在と同等水準の信頼性やエリア、料金水準の確保が求められている。

 IP網への移行の表明に合わせて、NTTからはいくつかのサービスの終了が表明されている。答申案で特に言及されているのは、ISDNの「INSネット ディジタル通信モード」で、NTTからは代替案や補完策がすでに提案されている。

 一方、ディジタル通信モードは現在も256万回線が利用されており、POSシステム、銀行ATM、EDI(電子商取引)、ラジオ放送、警備など幅広く利用されており、先行して実施されたヒアリングでも多くの利用団体・企業から意見が寄せられてたとして、利用者保護の確保が課題であるとしている。具体的な取り組み方も示されており、NTTに進捗の報告を求めるのが適当とする。

 また、他の事業者から代替サービスが提供されていないタイプのサービスを終了させる場合、利用者の予見可能性を高める必要があるとし、利用者保護を確保するルールが検討されることが適当であるともしている。

事業者向けの対応

 NTT東西が発展させてきた通信ネットワーク(NGN、次世代ネットワーク)については、固定回線がIP網に移行する中で、NGNへの他事業者の依存性は強まり、「基幹的な通信網としての性格を強めることになると考えられる」と指摘、競争事業者がさまざまなサービスを遅滞なく展開できるよう環境を整備することが公正競争・利用者利便の向上の観点でも重要としている。

 答申案ではNGNの接続約款の見直し、接続協議の円滑化、情報開示の充実、接続ルールの検討の必要性などが示されている。

番号ポータビリティ、携帯電話宛の通話料

 限定的な利用になっている固定電話の番号ポータビリティの扱いについては、本来的には双方向で行われるものとし、IP網への移行で「双方向番号ポータビリティ」を早期に導入することが必要としている。

 固定電話から携帯電話へ電話をかけた際の料金については、基本的に事業者間の協議・合意で決定されるとする一方、同審議会が見直しを提言した2011年からほとんど変わらず、一般的には、NTT東西からドコモ宛は3分60円、KDDI宛は3分90円、ソフトバンク宛は3分120円などとなっており、NTT東西など中継事業者が設定する料金よりも、携帯電話事業者が設定する料金が高額になる傾向があると指摘。高額であることを認識しているエンドユーザーは少ないのではないかと疑問を呈し、また通話先の相手が分からないという点で、利用者保護の観点では課題があるとしている。

 その上で、事業者間の合意で決定する原則を示しながら、事業者間協議が不調の場合には、総務大臣が裁定する制度の活用も改めて提示。発信側事業者が料金設定権を持つべきという議論を提起している。当面は、携帯電話事業者に対しては、(固定電話からの発信者が払う)料金設定を分かりやすく周知すべきとし、「総務省は携帯電話事業者へ注意喚起を行うべき」と提案している。

 このほか答申案では、アクセス回線におけるサービスの競争環境の整備なども示されている。