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2.5km先の島へ「セルラードローン」が飛ぶ、ドコモが福岡で実験

 NTTドコモとMIKAWAYA21、エンルートは、福岡市においてセルラードローンを使った日本初という買い物代行サービスの実証実験を行った。

 実証実験は福岡市にある離島・能古島より依頼された買い物を、福岡市ヨットハーバーに設置されたオペレーションセンターで受注。MIKAWAYA21が商品の調達を行い、ヨットハーバー内にある駐車場からドローンを飛ばし、2.5Km離れた能古島の中継基地まで届けるというものだ。

 ドローンは、エンルート製のFH940を採用。GPSなどを搭載しており、あらかじめルートを設定して、自動操縦で能古島まで往復できるようになっている。ここにさらに、NTTドコモのスマートフォンを搭載。ドローン内に設置されたカメラの映像をセルラーネットワークで送信して、遠隔地で荷物を届ける際の安全確認や遠隔操作などを行える。ちなみに、離陸時は完全を確保するため、専用のコントローラーを使い2.4GHz帯の電波で操作している。

 今年7月までは、上空で携帯電話を使うことが電波法により規制されていた。しかし、ドローンに携帯電話を載せたいという要望が高まる中、総務省では7月にドローンに搭載した携帯電話を実用化試験局として確認できる、という制度を導入した。これにより、セルラードローンの実用化に一歩近づいたという。

 今回の実証実験では、能古島に住むシニアや子育て世代が必要とする日用品を運搬するという設定で検証が行われた。福岡市ヨットハーバーから能古島までは2.5Kmの距離だが、ドローンであれば10分程度で往復できる。

 まず、福岡市ヨットハーバーで荷物を載せたドローンは、上空80mまで一気に上昇。能古島まで飛び、島内にある中継地点上空16mまで降下し、ロープを下ろして、荷物を下に届ける。ロープを使うのは、ドローン本体が着陸してしまうと、衝撃によって荷物が壊れる危険性があるためという。

 デモンストレーションでは、能古島側の風が強く、荷物を降ろすことができないといったトラブルがあった。ドローンは強風や降雨時に飛ばすことができないなどの課題があるため、このあたりは今後の検討材料となりそうだ。

 今回の実験にあたり、NTTドコモ・高木一裕九州支社長は「セルラードローンということで、ドコモのアセットを最大限利用できる。成功すればドローンの使い方が広がる。ドコモとしては技術的な検証をするのが主眼」という。ドローンを飛ばすにあたり、NTTドコモでは、既存の基地局ネットワークには特に手を入れていないとのことだ。

 実際、ドローンが上空に上がれば上がるほど、電波の品質は悪くなる。また、地上のいるユーザーへの影響も考えられる。ドコモは、実用化に向けて、これらの影響を充分に検証していきたいとしている。

 ドローンを提供するエンルートの伊豆智幸社長は「ドローンにセルラーネットワークを組み合わせることで、遠隔で操作できるだけでなく、飛行時の位置や傾きなどの情報を把握できるようになる。実用化に向けて、安全性を高めていきたい」と語る。

 MIKAWAYA21の青木慶哉社長は「弊社は全国の新聞販売店などに協力してもらい、全国400カ所で高齢者向けの支援サポートを行っている。特に要望が多いのが買い物代行であり、近い将来、ドローンを活用できるのが現実味を帯びてきた」と期待を込める。

 ちなみに、メディアへの公開した前日には、夜間飛行の実験にも成功したとのこと。実証実験は12月にも行い、サービスの実用有効性や他の地域での提供が可能かどうかの検証を行っていく計画だ。