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「第4のキャリアとして頑張っていく」スマホキャリアに生まれ変わるUQ

 UQコミュニケーションズは、au網を利用するMVNO「UQ mobile」で2016年の冬以降に提供するスマートフォンや新料金プランを発表した。24日には都内で記者向けに発表会が開催され、代表取締役社長の野坂章雄氏が登壇、サービスの紹介や戦略を語った。

UQコミュニケーションズ 代表取締役社長の野坂章雄氏

大手キャリアと格安スマホの課題を解決する

 24日に発表された内容は、すでに別のニュース記事で発表の概要などについて掲載している。本稿では野坂社長のプレゼンテーションと囲み取材の内容をお伝えする。

 野坂氏は、KDDIバリューイネイブラーと合併し、au網を使うMVNO「UQ mobile」をUQコミュニケーションズが手がけるようになってから1年が経過したことを紹介し、合併から今まで定期的に料金、端末とサービスを拡充してきた様子を振り返る。

 通信速度については、速度について賞を受賞するなど評価も高いとし、サービス全体でも自社調査ながらユーザーの満足度が高い様子を示した。これらを総合して、「使ったら、非常に使い勝手がいいUQ mobile。ただ、まだまだ一般の方には知られていない点が問題」と、現在の課題を示した。

 「UQがどんなことを考えているか。モバイル網のプロである我々があえてスマホを手がける意義は何か」と自問する野坂氏は、「まだまだ大手3キャリアのスマホは高い。格安スマホは、やっぱりまだ不安。それを同時に解決するのが我々のミッション」と自らを位置づける。この日に発表する内容を踏まえ「安心、快適、高品質なスマホをみんなのものに」とコピーを掲げ、シニア層も含めてサービスを拡充していく方針を示した。

 「WiMAXはビジネスマンや若い男子学生に愛好されファンを増やしてきたのが本当のところ。スマホを手がけることでシニア、ジュニア、主婦、スポーツなどもターゲットになる。WiMAXは限られたターゲット層がメインだったが、(UQ mobileで)全方位にリーチしていく」(野坂氏)。

幅広い中から選べるラインナップに

 新たなサービスの拡充は、「端末ラインナップの強化」「サービスの充実」「タッチポイントの拡大」の3つで解説された。

 端末ラインナップについてはすでに別記事でも新機種についてニュース記事を掲載している。(※AQUOS LHUAWEI P9 lite PREMIUM

 野坂氏は2016年冬のラインナップとして、発表済みのモデルを含めて8メーカー12機種が揃ったことを紹介し、ユーザーが選ぶ方法についてもWebサイトや店頭で提示・提案していく方針。自らも新モデルの特徴について「AQUOS L」はどちらかというと女性向け、「HUAWEI P9 lite PREMIUM」は220Mbps対応で若い男性向け、などと解説した。

 VRゴーグルが同梱されハイレゾ対応やフロントスピーカー搭載の「IDOL 4」は「ガジェッター向け」、「SHINE LITE」はジェスチャー操作のカメラシャッターや指紋センサー連携機能で「どちらかというと女性向け」と、野坂氏は分かりやすいターゲット設定を語る。

 またこれらの端末はau網のVoLTEに対応するのも特徴で、ドコモ網を使うMVNOの端末と比較して弱点になっていた部分を補強してきた形。

 野坂氏は端末ラインナップの紹介の最後に、独自のデータ通信サービス「WiMAX 2+」に対応するモバイルWi-Fiルーター「WX03」についても触れ、440Mbpsのサービスは12月から1都2府14県でサービスを開始することを明らかにした。

5分かけ放題「おしゃべりプラン」、「APlay」も

 2017年2月から提供される「おしゃべりプラン」は、これまで無料通話として提供してきた通話を、5分かけ放題に変更し、最大2GBのデータ通信量をセットにしたもの。月間容量を使い切ったり、ターボ機能をOFFにしたりしても300kbpsで通信ができる。提供までに時間があることから、既存プランで無料通話分を拡大するキャンペーンも紹介した。

 同氏は折に触れて、SNSは300kbpsで楽しめるとアピールし、月間容量を消費しない「データ消費ゼロ」として提案。音声エージェント機能をスマートフォンのアプリとBluetoothヘッドセットで提供する「APlay」を取り扱うことを発表し、これでもSNSなら300kbpsで利用でき、データ消費がゼロとした。また「APlay」は音声認識で操作できることなどから、シニアをサポートしていく手段であるとも位置づけた。

 野坂氏からは、端末ラインナップや料金プランに加えて、「安心・安全への取り組み」として「UQあんしんサポート」などのオプションサービスも紹介された。

リアルタッチポイントの拡大に傾注

 「今の格安スマホの問題は、全国のケータイショップのようなものがないこと。故障したときにどうする、と不安が残る。量販店や併売店、UQスポットなどの店舗をあわせ、リアルのタッチポイントを1000店増加し、2000店舗にしていきたい」と野坂氏は語り、現在420店舗というUQ mobileを取り扱う併売店などのチャネルを1000店舗にまで拡大する方針を示す。また主要都市に展開する予定で、直営店のような体裁になっているUQ専門店「UQスポット」は、今後47都道府県に展開予定であるとした。

 「UQスポット」では11月から端末のサポートとして代替機の提供、端末の修理受付を実施する。Webサイトでは、修理サービスの一環で新品の交換お届けサービスも2017年1月から提供する。

 さらに、24日にオープンしたというコミュニティサイト「UQ PLANET」を発表。「誰でも気軽に楽しめる、全員参加型のコミュニティサイト」と位置づけており、不安や疑問の解消にも利用できるとした。

プロモーションも本気

 こうした一連の取り組みを紹介した野坂氏は、「UQ mobileは本気だぞ、と。これを言いたいために長々と紹介してきた。また、もっと知ってもらうためには、本気のプロモーションを展開しなければならない」と語り、新CMで深田恭子、多部未華子、永野芽郁を3姉妹として起用することなどを紹介した。

 新CMと発表については別記事で掲載している。

質疑応答、メーカーにau網の対応を働きかけ

 「5分かけ放題」について、差別化ポイントを聞かれると、野坂氏は「他社でも同様のサービスがある。我々のサービスでも、回数を無制限にしたいというニーズがたくさんあることから、提供することにした。MVNOとして限界があるので、(回数、時間ともに)完全無制限ということは考えていない」「(内容は)バランスを考えたもので、30分や1時間の無料通話分より使い勝手はいいだろうという判断」などと回答している。

 格安スマホにおけるシェアの目標を聞かれると、「1年前から始めて、ようやく拡充してスタートできる段階。とはいえ1年前と比較するとUQ mobileは5倍に増えた。意欲としては、新規の3分の1ぐらいはとっていきたい」とした。

 海外でラインナップされている、ZenFone 3 DeluxeのRAMが6GBのモデルの導入の可否については、UQコミュニケーションズ 企画部門 事業開発部長の前島勲氏が「ASUSと協議はしている。今回は4GBだが、ユーザーの声を聞きながらASUSと協議をしていきたい」と回答した。

 端末ラインナップが拡充され、同時にauのVoLTEに対応した端末が増えている背景について聞かれると、野坂氏は「指摘の通りで、au網のMVNOに対応する端末が少ないのは非常に大きな悩みだった。一生懸命メーカーに働きかけてきた。結果的に7月のiPhone 5sや、中国のいくつかのメーカーにより、端末が揃った」と、積極的にau網への対応を働きかけてきた様子を語った。

「第4のキャリアとして頑張っていく」

 囲み取材で「コミュニティサイトの重要性が上がっているのか?」と聞かれると、野坂氏は「『マイネ王』のことだと思うが(笑)、我々がやるにあたっては、ギーク層をターゲットにするより少し変えてみようと考えた。nanoSIM、APNってなあに、と引っかかる人もいる。原点回帰していきたいというのが『UQ PLANET』の考え方」とした。

 端末ラインナップが幅広く拡大している点が指摘されると、「店頭でもSIMロックフリー端末は拡大しているが、UQ mobileで使えるのは1つ、2つということになると、気持ちが閉まってしまう。ようやく周回遅れで端末が揃ってきたところ」(野坂氏)。

 新CMに関連して、「新CMはY!mobileをかなり意識している印象。Y!mobileに勝てそうか?」と聞かれた野坂氏は、「イー・モバイルと競争していた頃の感覚からすると、Y!mobileはものすごく有名になって、気持ち的には絶壁という感じ(笑)。ただ気持ちで負けてはいけないので、周回遅れではあるけれど、思いをきちんと伝えていく。賛同者を増やして、もう一回日本のスマホの原点を考えてみたい。おこがましいかもしれないが、今の日本のスマホは混乱した議論になっている。mineoさんも良き先輩であり、良い争いをしていく。有名なY!mobileに対してもそれ以上のものを出していくという気持ち」。

キャリアの大容量プラン「注視している」

 3キャリアが大容量プランを新設・拡充したことで、モバイルWi-Fiルーターの優位性が薄れるのでは? と問われると、野坂氏は「注視している」と警戒感を隠さない。「影響がないわけではない。20GB~30GB使うので、ルーターとスマホを2台持ちしていた人がたくさんいた。キャリアの大容量プランでいいや、と流れることもあると思う。しかし、やっぱり(WiMAXの)ギガ放題はパワフル。どのくらい影響があるのか心配をしながら、どう対応していくか。スマホを含めて合せ技でやっていけたらいい」。

 「UQ mobile」で(大容量の)ギガ放題プランはどうか? と続けて聞かれると「MVNOという立場を考えると、ちょっと辛い。2台持ちはけっこうアリな気がしていて、バッテリーの持ちを考えても、スマホ1台でガンガン使っていくかというと(疑問を感じる)。個人的に、ルーターに思い入れもある」とコメントしている。

auのサブブランド? 「第4のキャリア」

 「mineo」を提供するケイ・オプティコムが、総務省開催のフォローアップ会合(※関連記事)で、UQ mobileなどを“大手キャリアのサブブランド”と指摘し、問題を提起した点について、反論はあるかと聞かれた野坂氏は、以下のようにコメントした。

 「反論する気はないが、UQのミッションは何かと考えたとき、10万円近い端末をタダにしていた大手キャリアは問題で、その中でどうやって“格安”の業界を育てるのかとう問題がある。大手キャリアは(プランも)高い、でも“一般のMVNO”は不安だという意見があるとすると、“第三極”が必要ではないか。競争は右か左かという(二極の)単純なものではなくて、もうちょっと真ん中の手段が必要。反論する気はなく、我々は、我々の思いで、できることをきちっとやっていく」

 囲んだ記者からさらに「ソフトバンクの中にY!mobileがあるとして、“auの中のUQ mobile”という立ち位置を狙っていくのか」と問われると、「auの中のUQという感覚はない。逆で、我々は明らかに違う会社だと思っている。もちろん資本の関係はあるが、我々はWiMAXをここまで自分たちでやってきた。その顧客の基盤とスマホをあわせて、“第4のキャリア”として頑張りたい。今はそういう立ち位置ではないか。世の中的には(auの)サブブランドという指摘もあるが、志としては少し違う」と答え、ドコモ、au、ソフトバンクに続く第4のキャリアとして自らを位置づけている。

 これらの議論に関連し、「UQスポット」の看板にauのロゴが大きく出ている点については、「UQ mobileだけにすることも早晩必要になるだろう。ただ契約もあるので、現実的な選択をしていく」としたほか、「当面必要なものは出揃った。今後は知っていただく、使っていただくといったことが重要になる」と、UQ mobileのカラーを強めていく方針も明らかにしている。