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総務省のフォローアップ会合にIIJ、mineoが登場、「SIMロック/中古」にも熱い議論

 17日、総務省で「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の第2回会合が開催された。前週13日の第1回会合では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクから意見を聞いたが、今回はMVNOを代表する形でIIJとケイ・オプティコム(mineo)が出席し、それぞれの立場から課題を挙げた。

左から、あかま二郎総務副大臣、高市早苗総務大臣、金子めぐみ総務大臣政務官。高市大臣はIIJ、ケイ・オプティコムのプレゼン後に退席した

IIJ、「接続料の算定」で要望

 IIJ 取締役CTOの島上純一氏による、10分という限られたプレゼンテーションの時間のなかで、後半、説明を費やしたのが接続料。MVNOからすれば、NTTドコモのような大手キャリアの通信ネットワークを利用するために支払う代金のひとつであり、「ユーザーの利用料へストレートに反映される」(島上氏)、MVNOの料金設定に影響を与える要素のひとつだ。

IIJの島上氏(右から2人目)

 接続料はいったん仮払いの金額を決めておき、1年経ってから正しい料金を算出、差分があれば返金したりさらに支払ったりする形。島上氏は「事業コストの予見が難しい。事業会計でも、3カ月の終わりにコストが動くとやりづらい」と率直なコメント。MNOと呼ばれる大手キャリアにとって難しい面はあるものの、MVNOの発展による競争促進という観点から、問題を提起した。

mineoは中古端末、MNOのサブブランドに物言い

 39万会員を抱える「mineo」を運営するケイ・オプティコム。同社取締役常務執行役員の久保忠敏氏は、「SIMロック解除」や固定回線とのセット販売における割引、ワイモバイルやUQ mobileといった大手のサブブランドに対する課題を指摘する。

ケイ・オプティコムの久保氏(左から2人目)

 サブブランドについては、KDDIグループのUQや、ソフトバンク内のブランドのひとつであるワイモバイルは、一般的なMVNOにはなし得ない料金やサービスを展開していると指摘。久保氏は「大手携帯会社の基盤を武器にされると、MVNOは事業が立ち行かなくなる」「同じ会社のサブブランドが解約の受け皿としている。MVNOにとっては大きな影響がある」と警鐘を鳴らす。


【お詫びと訂正 2016/10/17 19:58】
 記事初出時、「160万会員を抱える『mineo』」としておりましたが、この会員数はFTTH事業のものです。本文はモバイル事業の会員数に訂正いたしました。お詫びいたします。

SIMロック解除と中古の関係

 論点のひとつであるSIMロック解除については、ケイ・オプティコムが、auで販売された端末をmineoで利用しようとすると、同じau回線であってもSIMロックの解除手続きが必要と指摘。またドコモやソフトバンクは解約から3カ月経過した中古端末でSIMロックが解除できないことを挙げ、MVNOにとっては不利になり、ユーザーにも混乱を招くと説明する。

NTTドコモKDDIソフトバンク
解除制限期間購入から6カ月
※購入前の機種でSIMロックを解除していれば、その時点から6カ月経過時点で即解除できる
端末購入から180日端末購入から180日
解約後の端末と中古端末解約から3カ月経過後は解除に応じていない
中古端末は解除に応じていない
店頭で解除可能解約から90日経過後は解除に応じていない
中古端末は解除に応じていない

 有識者からは、「(中古端末のSIMロック解除期間について)KDDIは他社と横並びにならず、店頭での中古端末のSIMロック解除を続けて欲しい」(全国地域婦人団体連絡協議会の長田三紀氏)、「割賦未払いの対象端末(いわゆる赤ロム端末)はネットワーク利用が制限され、Webで確認できる」(野村総研の北俊一氏)といった声が挙がり、SIMロック解除で中古端末の不正利用を抑止する、というドコモやソフトバンクに改善を促す格好となった。

 なお、前回会合で端末購入からSIMロック解除まで180日という期間を短縮する方針を示したソフトバンク側は、「120日程度のイメージで議論中。ただ、解約後3カ月経つと解除できないといった指摘も課題と認識している」とあらためて説明した。

NRI北氏、「端末割引関連の規制緩和、必要なし」

 有識者として参画する野村総研(NRI)の北俊一氏は、端末割引に関するガイドラインについて「穴があれば全て埋めていくのが基本方針だと思う」と意見を示す。現状は、型落ちの機種や、3G→LTEへの切り替え(マイグレーション)といった場合のみ、実質数百円程度で販売されているが、これは総務省がソフトランディングで政策を進めているため、との見解を示し、今後、適切な割引額や端末価格がどの程度であるべきか、総務省として目標を示すべきでは、と提言する。

 その上で、前回会合でソフトバンクから挙がった型落ち、廉価機種への規制緩和は必要ないとバッサリ。「型落ち端末をいくらで売っていいよ、ということになれば、全体の価格を(適正な水準に)上がらなくさせてしまう」と説明し、過剰な値引きは徹底的に避けて健全化をはかるべきと目標を掲げる。

 ただし、フィーチャーフォンだけは、キャリアを乗り換える形での大幅な割引は「フィーチャーフォンからの乗り換えだと担保されるのであれば、ぎりぎり0円まではOKにしていいのでは」とした。

中古市場が今後の課題?

 前回、そして今回のケイ・オプティコムの主張で触れられた中古端末とそのSIMロック解除については、大臣補佐官である太田直樹氏があらためて触れ、政策的に重視する姿勢を示唆する。

太田氏
「自動車業界を見ると、中古車市場の健全化と、自動車販売店が故障や保険、サービスで儲けるようになってきたのは、軌を一にしている。中古端末市場がどういう状況にあるのか。民間だと300万台と言われるが、実態はよくわからない。ただし、販売代理店には10万人の雇用がある。(奨励金で)固定費をまかなっているなら、(早急に奨励金撤廃の動きを進めると)食べていけなくなる」

 フォローアップ会合の主査を務める新美育文 明治大学教授は、中古端末に関して、大手キャリアの下取りの目的や国内の流通などを問いかけると、ドコモ、KDDI、ソフトバンクのいずれも、機種変更時にそれまで使っていた端末を買い取る下取りサービスを実施しているものの、その目的として「中古端末市場の形成は目的にしていない」と明言。

主査の新美教授(左)と主査補佐の平野晋中央大学教授

 ユーザーから買い取った端末は、補償サービスの代替機としたり、海外で展開しているとしつつ、国内で流通しないような制限はかけていないと釈明する。これに新美教授は「自動車であれば、中古車価格のデータがあり、マーケットプライスがわかるが、携帯電話端末はどうもそうしたデータが見られない」と指摘し、中古市場が未成熟との見解を示す。ただし、中古市場については、「中古車販売でも『新品同様』とうたいつつ、実際はそうではない不当表示などの問題があった」(舟田正之 立教大学名誉教授)と整理すべき点はある。

 会合後、あらためて新美教授へ、第1回、第2回を踏まえ、今後重点的に考える部分について尋ねたところ「やはりSIMロック解除を徹底的にすること。SIMロックで中古端末市場もおかしくなっており、囲い込みにもなっている。しがらみをどこまで捕捉できるのか。ただ、太田補佐官の指摘どおり(販売代理店)業界がつぶれてはどうしようもない。急ハンドルではなく徐々に切っていける方向がいい」とコメント。

 その上で、今後数年にわたる課題については、今回のフォローアップ会合を通じて洗い出しが進んだとも語り、新美教授の個人的な見解では、その中でも最初のターゲットがSIMロック解除ではないか、と語った。

 次回は明らかにされていないが、11月7日にもとりまとめに向けた会合が開催される見通し。「端末割引」「SIMロック解除」「MVNOの普及促進」といった点で、これまでのガイドラインをどう修正していくのか、11月中にも新たな方向が示されることになりそうだ。