インタビュー

「Optimus G Pro」開発者インタビュー

「Optimus G Pro」開発者インタビュー

新しい特徴を追加、「本物の良さがわかる人に」

LGエレクトロニクス モバイルコミュニケーション 統括部長の首藤 晃氏

 先日NTTドコモ発表会で披露されたLGエレクトロニクス製の「Optimus G Pro L-04E」(発売は4月)。同機は、昨年10月に発売され、米「コンシューマ・リポート」誌(発行元はコンシューマーズ・ユニオン)のスマートフォン製品評価で1位を獲得するなど高い評価を得た「Optimus G」の後継機種である。

 新しく発表された「Optimus G Pro」は、どこが改善され、どんな魅力を持つのか? 日本法人の販売部門責任者である首藤 晃 モバイルコミュニケーション 統括部長を取材した。

スマートフォンユーザーが本当に求める電池持ちを追求

――まず商品の概要と、想定購買層を教えて下さい。

 「Optimus G Pro」は、好評だった「Optimus G」の魅力をさらにブラッシュアップさせたフラッグシップモデルです。主なターゲットは、20~30歳代を中心としたスマートフォンへのリテラシーが高い人で、基本的には男性中心になると思います。

――カラーリングは、白と黒の2色展開です。

 繰り返しになりますが、リテラシーの高い方に本物のスマートフォンを使っていただきたいと考えています。そこでカラーはモノトーンで2パターン。ただしインディゴブラックはシャイン、プラチナホワイトはマットと仕上げを変えることで、質の高さを感じていただきたいと思っています。

――「Optimus G Pro」からは、どの部分が改善されたのでしょう?

 ポイントは、バッテリー関連とディスプレイの改善、そしてUI関連のユーザー体験の部分に大別できます。

 まずバッテリーですが、私たちが調査をしたり、販売店やメディアの方々とのコミュニケーションをして、最も要望が高いのが電池持ちなんです。「Optimus G Pro」では、このリクエストに何とか応えようと最善の努力をしました。

――それは防水仕様を外したことを指していますね。

 はい。我々は2006年に「SIMPURE L」で日本市場に参入し、iモードケータイ、データ通信用アダプタ、スマートフォンなどを扱い、日本のお客様が求める製品の開発をしてきました。よって防水仕様の要望が高いことも熟知していますが、その一方で、スマートフォンの電池持ちがなんとかならないかといった声も多い。では電池持ちを改善するためにはどうするかというと、バッテリー容量を大きくし、部品の消費電力を抑え、OSやアプリの改良するといった全体のパワーマネージメントをしていくしかないんです。その中でもバッテリー容量を大きくするのは効果が最も出やすい。そこで「Optimus G Pro」では、容積が許す限り大きなバッテリーを搭載したんです。

――防水仕様などの使い勝手の面よりも、電池持ちという基本性能を重視するため、「リテラシーが高い方を狙っている」ということなんですね。

 言い訳のようになってしまいますが、ケータイ Watchの読者のように、モノのことがしっかりわかる方々なら納得していただけると思ったのです。もちろんそれに甘えて防水仕様に取り組まないということではありませんが。

――では、もう少し詳しくバッテリーについて教えて下さい。

 「Optimus G Pro」は、3000mAhの大容量バッテリーを搭載したんですが、これはNTTドコモの2013年春モデルの中ではずば抜けています。単に容量が大きいだけではなく、これまでと同等サイズというのがポイントなので、他社とサイズを比較していただければ、いかに高度に大容量化されているかがお分かりいただけると思います。

 今回はLGケミカル社が製造する高電圧・高密度技術を採用した次世代リチウムポリマー電池を採用しています。このバッテリーは薄型・軽量化できるところが特徴で、同等サイズで大容量化ができた理由はここにあります。

 この次世代リチウムポリマー電池は、バッテリーの消耗度、つまり繰り返し利用できる回数が多いのも特徴です、通常のリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池は約500回充放電を行うと、バッテリー容量が半減してしまいます。

 一方、「Optimus G Pro」に採用している次世代リチウムポリマー電池は、約800回までご利用いただけます。1日1回の充電で800日、つまり1カ月を30日とすると単純計算ですが2年2カ月以上も使えることになる。人によって買い替えサイクルは異なりますが、いわゆる2年縛りのうちは、1日1回充電しても大丈夫なスペックを実現しているんです。

 さらに、ドコモから発売されている急速充電器「AC04」にも対応しているため、従来の3分の1の時間で満充電になります。

――そこは他社のモデルにはない特徴ですね。

 LGグループでは、LGケミカルの2次電池、LGディスプレイのディスプレイ、LGイノテックの半導体製品など、スマートフォンのキーデバイスとなるものを作る関連会社があり、いずれの会社でもグローバル市場で高い評価を得ているものを製造しています。こうしたキーデバイスを積極的に採用したのが「Optimus G Pro」の特徴のひとつで、グローバル市場で評価されている価値を、日本の消費者の方々にお届けすることが私たちの使命だと思っています。

 例えばTrue Full HD IPSディスプレイは、ウェブページの背景やメールのテキスト部分でよく使われる白色を表示する際に消費電力を抑えます。これにより、電池持続時間の改善に成功しています。

――このほかソフトウェア面では、どんな工夫がありますか?

 電池残量が30%以下のときには、自動同期、Wi-Fi、画面の明るさ、ホームボタンのLEDの設定をセーブできる「パワーセーブ」があります。こうした機能は各社とも力をいれているところですが、「Optimus G Pro」ではメリハリをつけた設定ができると思います。機種によっては、過剰に消費電力を抑えるあまりに、普段の操作性が損なわれてしまうといった声も聞かれます。まずは十分な電池容量を確保して、アクティブに使っていただける。そのうえで電池が減った時にはまとめて簡単に消費電力を抑えることもできます。

 韓国で発売された「Optimus G」との比較ですが、同じ「Snapdragon S4 Pro」ながら、約40%の省電力化が可能なクアッドコア制御も可能です。これはクアルコムとの緊密なパートナーシップにより実現しているもので、彼らとは良好な関係を築けていると認識しています。余談ですが、ご存じのとおり世界で最初に「Snapdragon S4 Pro」を搭載したのは、「Optimus G」でした。弊社以外でも「Snapdragon S4 Pro」は搭載されていますが、「Optimus G Pro」はクロック周波数が1.7GHzとハイスペックになっています。その一方で、ご案内のとおり省電力化も実現しているのです。

新しいスマートフォン体験を提案するディスプレイやUI

――今回は、ディスプレイもLGディスプレイ製とのことです。その特徴を教えて下さい。

 スマートフォンに採用されているディスプレイユニットは、液晶、タッチパネル、ガラス面の3層構造になっているのが一般的です。この構造の場合、それぞれの部品と部品の間に空気層ができてしまい厚くなってしまいます。またディスプレイ表面を指で操作する際、誤差が生じてしまい、直感的な操作を損なってしまうことがあります。「Optimus G Pro」の「True Full HD IPS ディスプレイ」では、ガラス面にタッチセンサーの配線を直接プリントし、空気層をなくしました。これにより、吸い付くのような感覚のタッチ操作が可能になりました。アイコンや画像に直接触れるような感覚で操作ができる感覚は、ぜひお試しいただきたいですね。

 これに加え、ガラス面と液晶が近くなったため、表示内容が浮き出るような雰囲気の表現が可能になりました。とくに映像やゲームでは、(ガラス越しではない)映像そのものを見ているような没入感を味わえるので、ご満足いただけると思っています。

――Full HDの高精細ディスプレイであることも特徴ですよね。

 はい。フルハイビジョンテレビと同等の1920×1080(1080p)の解像度の映像が、いつでも、どこでもお楽しみいただけます。100Mbpsの高速通信が可能なXi対応端末ですので、高精細な映像をダウンロードしながら美しく映すことが可能です。このほかウェブページなどの文字をきれいに表示できるので、効率良く情報が見られます。

――LGエレクトロニクスらしいUIにも力を入れていますが、そのあたりについても教えて下さい。

 UIはLGエレクトロニクスの開発陣がとても力を入れている部分です。今回は、従来の「Qスライド」(ビデオやワンセグの映像を再生中に別の機能を起動させ、両方同時に表示する機能)を改善し、「ブラウザ」「カレンダー」「動画」「電卓」のうち2つの画面を表示でき、同時に最大3つの機能を別々に使えるようにしました。

 例えばメールを見ながら(「Gmail」アプリなど。カッコ内はアプリ名)予定を確認しつつ(「カレンダー」)、訪問先の経路をウェブページで検索する(「ブラウザ」)ことが、それぞれの画面を開いたままでできるんです。仮に電話の着信があったときには、それぞれのアプリの動作が一時的に中断され、終話と同時に元の画面に戻る。こうしたマルチウィンドウによる使い勝手の向上は、大画面化が著しい韓国市場で盛んなんですが、「Optimus G Pro」は5インチのFull HDディスプレイ、大容量バッテリーの搭載、高性能クアッドコアチップ、2GBのRAMの採用などで、トップクラスの使い勝手を実現しています。

 細かい部分ですが、アイコンの画像やサイズを変更するカスタマイズもご好評いただいています。いまOptimusシリーズ向けにアイコンを公開し、ユーザー同士で交換するといった楽しみ方も広がっていると聞いています。またよく使う機能などを大きなアイコンにすることで画面にメリハリをつけて個性を出すなど、ユーザー自身が楽しめるような工夫も用意しています。

ユニークなカメラ機能がさらにパワーアップ

――「チーズ」「LG(エルジー)」と言うと、シャッターが切れる機能や、連写機能など、カメラもユニークな印象です。

「デュアルレコーディング」の様子

 今回は、処理速度の向上や動作が安定してきたため、動画撮影を中心に機能を強化しています。ひとつは、1320万画素のアウトカメラで撮影中に、240万画素のインカメラを同時に起動し、自分の顔などを映しながら被写体を撮影できる「デュアルレコーディング」が可能になりました。

 例えばお子さんのいるご夫婦が動画を撮るとき、赤ちゃんを抱いているお母さんは映るのですが、撮影者のお父さんは、声だけは参加できるものの、姿が映らず仲間はずれになってしまいます。そんな場面でこの機能を使うと、インカメラ用のモニター画面でお父さんも映ることができます。しかも撮った映像は、モニター画面に映っていた状態で再生ができるので、工夫次第では面白い作品ができます。最初にメインカメラで自分を大写しにして撮影する映像を説明し、カメラを切り替えればメインとなる被写体を録画できるので、例えばプライベートなグルメレポートや観光地の紹介などのビデオを作り、SNSなどに投稿して楽しんでもらえるでしょう。

 もうひとつは、録画中に映像をズームすると、音声もズームできる「オーディオズーム」という機能も備えました。例えばパーティー会場で遠くにいる人の様子を映すとき、これまでは映像の拡大はできましたが、何をしゃべっているのかを記録することは困難でした。「Optimus G Pro」では、2つのマイクと独自の音声処理技術により、映像も音声もズームも可能にしました。

 ケータイにカメラが備わり、写真が日常的な場面を被写体にするようになったように、これからはビデオが似たような使われ方をするのではないかと考えています。ビデオは、写真では表現できなかった動く映像や、音でものごとを伝えられるので、コミュニケーションが豊かになるはずです。「Optimus G Pro」は、そうしたコミュニケーションの楽しさを快適にするような提案を盛り込んでいます。

――コミュニケーションという点では、リアルな場面で活用できる「LG Tag+」もありますね。

同梱の「LG Tag+」

 「LG Tag+」は、NFCを活用した機能です。「Optimus G Pro」をご購入いただくと、もれなく2枚の「LG Tag+」が同梱されています。ここの記憶領域に、専用アプリを使って情報を書き込めます。アプリには「車の中」「オフィス」といった場面が用意されていて、例えば「車の中」ではGPS、Wi-Fi、Bluetoothなどのオン・オフが一発で設定できるほか、Google マップやドコモ地図ナビなど任意のアプリを自動的に起動させる設定を、「LG Tag+」に書き込んでおけます。そしてNFC対応のスマートフォンなら、どの機種でも一発で任意の設定にできます。例えば飲み会などでは集まった仲間との会話を楽しむために、タグを読み取ってもらい、強制的にマナーモードやデータ通信をオフにしてもらう、といったリアルなお付き合い(≒コミュニケーション)に活用していただけます。

 「Optimus G Pro」というネーミングからは、前モデルの改良版といった印象を受けるかもしれませんが、私自身は、新しい特徴を盛り込んだ別モノという印象もあります。スマートフォンをよく知る人、本物の良さがわかる人にこそ注目していただきたいのが「Optimus G Pro」です。4月の発売を楽しみにしていて下さい。

編集部