「HONEY BEE 5」関係者インタビュー
モデルチェンジしたミツバチ、LINEを見据えた通話アイテム
京セラ製のPHS端末「HONEY BEE」シリーズの新モデル「HONEY BEE 5」が発売された。稼ぎ頭として低迷期のウィルコムを牽引した同シリーズも、今回で第5弾。プラットフォームを刷新し、新機能が盛り込まれるなど新たなチャレンジへと歩を進めている。
ミツバチを意味する「HONEY BEE」の名を冠したウィルコムの人気シリーズは、折りたたみ型の「HONEY BEE BOX」を含めると、「HONEY BEE 5」でシリーズ6台目となる。10代の若い世代をメインターゲットに据え、カラフルでかわいらしい雑貨のような端末に、通話やメール、写真といった基本的なコミュニケーション機能が盛り込まれている。
ウィルコムがソフトバンク傘下になってからは、「HONEY BEE 101K」というAndroidスマートフォンが登場し、バリエーションが他キャリアにも広がった。2013年には「HONEY BEE 201K」も投入される予定だ。
■新しいPHSを目指したモデルチェンジ
横田氏 |
商品企画を担当した横田 希氏(京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 国内第2マーケティング部 商品企画課 PM2係 係責任者)は、「HONEY BEE 5」について、「これまでのモデルをより進化させ、新しいPHSを目指しました。今回はデザインを大幅に変更させただけなく、機能もパワーアップさせました」と語る。
「HONEY BEE 5」のデザインコンセプトは、「in her pouch」だ。女性のバッグから出てきても違和感のない、例えば口紅のようなツートンカラーを大胆に採用したモデルとなる。
8種類のボディカラーも、従来の携帯電話やPHSには見られなかった大胆な配色パターンを採用する。Francfrancや輸入生活雑貨の「PLAZA」にあるような配色と言えば想像しやすいかもしれない。実は、端末のキーロック部分やキーロック周りのパーツとUSBキャップの色もボディカラー毎に異なるというバリエーションに富んだモデルとなっている。
デザインを変更すべきか商品企画チームは、かなり議論を重ねたという。横田氏は「変えないという意見もありました。HONEY BEEシリーズは、これまでのウィルコムのラインアップの中でも特に好評をいただいているモデルで、持ちやすい形状や機能面、デザインなど、テイストを継承してきたモデルです。しかし、誰とでも定額といった新しいサービスがウィルコムから登場し、市場環境も変化してきたので、この機会に我々も新しいチャレンジをしようと考えました。変えるからにはたくさんの調査を行い、その結果、これなら行けるとモデルチェンジに踏み切りました」という。
「HONEY BEE 5」では、HONEY BEEシリーズ共通のミツバチのキャラクターが控えめに登場する。ちょっとした場面でふいにひょっこり現れるような演出だ。女子中高生や大学生など、頻繁なコミュニケーションを求める若い世代だけでなく、より幅広い層に受け入れられやすい仕掛けといえるかもしれない。
■デザインを実現するための技術
門馬氏 |
ツートンカラーの上下は異なるパネルを採用しており、表面と裏面のパネルと、上下のパネルで合計4枚のパーツを貼り合わせたような構造になっている。複数のパネルを採用しているが、端末は防水モデルで印象的なハードウェアキーもそれぞれが独立したキーを採用する。
技術担当の門馬 将基氏(京セラ国内通信機器統括事業部 国内第3技術部 第3技術部 第2設計課1係責任者)は、「ボディが上下で異なり、R(曲面)をつけた側面部で合わせています。幅をキープしたまま防水性を確保するのは、技術的にチャレンジでした」と話す。一般的に防水にすれば端末は大きくなり、加えて曲面の多い丸みのあるデザインであればあるほど曲面の多い丸みのあるデザインであればあるほど、防水性を確保するのが難しくなり課題が増えて困難を強いられる。
しかし「HONEY BEE 5」は、防水ながら幅42mmと「HONEY BEE 4」と同サイズを実現している。長さは5.5mm、厚みは0.1mmのサイズアップとなる。
■新プラットフォーム採用
長谷川氏 |
「HONEY BEE 5から端末のプラットフォームを変更しました。昨年から時間をかけてテストしてきた新開発のものです」と、語るのは技術担当の長谷川 理氏(京セラ国内通信機器統括事業部 国内第3技術部 第6技術部 第7設計課 2係責任者)。
この新開発のプラットフォームは、新しいCPUを採用しており、パフォーマンスが従来より向上しているという。また、メモリ(データフォルダ容量)についても「HONEY BEE 4」の70MBから、100MBまで拡張された。京セラは今後、この新世代のプラットフォームをベースに端末開発を行っていくものと見られる。
女性をターゲットにしたHONEY BEEシリーズらしい配慮としては、着信通知などのLEDもその1つだろう。ストレート型の端末はその形状故に、着信時にはディスプレイに送信相手などが表示されることになる。人がいる場所で机の上に端末を置いていれば、着信相手がわかってしまう。
「HONEY BEE 5」では、ディスプレイ側に通知ランプを用意するだけでなく、カメラなどがある背面部にもLEDを配した。ディスプレイを伏せていても、着信があったことを判断できる。
■Bluetooth対応
このほか、「HONEY BEE 5」ではBluetoothをサポートするという大きな変化もあった。メインターゲットである若年層女子の利用がどこまで広がるかは不透明だが、スマートフォンと連携できる利便性から、幅広い層の興味を引くことも考えられる。
「Bluetoothを介してスマートフォンの親機や子機になるケータイは初めてかもしれません。メインターゲット層である若年層の女子がPHSをBluetoothの親機として使うことは想像しにくいですが、スマートフォンとPHSの2台持ちをされている方が多い中、PHSを親機として使いたいと要望する声はサポート部門からかなり寄せられていました。今回、ユーザーの満足度を上げるものとしてPHSの『HONEY BEE 5』を親機として使えるようにしています。Androidとの連携を深める機能としては、Gmailなどの着信通知をHONEY BEEで受けるアプリなども用意しました」(横田氏)
なお、Bluetooth 2.1+EDRに準拠し、プロファイルはHSPやHFP、PBAP、SPPに対応している。仮に解約した場合もBluetoothの子機などとして使うこともできる。今後の需要次第ではあるが、さらなるプロファイルのサポートなどにも期待されるところだ。
■打倒LINE
京セラでは、端末開発に当たって、メインターゲットとなる10代女子にさまざまな調査を行ったという。その中で、LINEやSkypeなどウィルコムの“誰とでも定額”の競合とも言えるアプリ型のVoIPサービスについても調べた。
「実際、LINEなどを使っている人の多くはチャット機能をメインで使っており、あまり通話を目的として使っているわけではないようです」と横田氏は話す。彼女たちに“話すための道具”として、HONEY BEEを認識してもらいたいという。
横田氏は「彼女たちは口コミで情報が広がっていくという特長があるので、友達の使っているものをよく使います。だから今、LINEもSkypeも若年層であっても誰でも知って、使っています。ウイルコムは、今は“誰とでも定額”を前面に出してアピールされていますが、実は、PHSによる安定した通話が24時間定額という優位性があります。この優位性の認知度を高めていくためにも、彼氏や女友達と話すためのアイテムとして、HONEY BEEを押し出していくのが1つのポイントだと思っています」と話した。
最後に横田氏は、「HONEY BEE 5の魅力はやはりデザインです。もちろん機能の進化もありますが、コミュニケーションの楽しさ、それを体現するのがデザインではないでしょうか」とアピールした。店頭では購入者特典として、HONEY BEEのキャラクターが付いたストラップを提供し、8種類のカラーに合わせて、こちらも8種類のミツバチが用意されている。
2012/11/27 14:31