インタビュー

mineoのオプテージ福留氏に聞く「速度で決まる『マイそく』誕生の背景」と市場動向

 オプテージは、MVNOサービス「mineo(マイネオ)」に、「通信容量」ではなく「通信速度」に応じた料金プラン「マイそく」を2022年3月に提供を開始した。

 8月下旬からは、最大300kbpsのライトコース(月額660円)もラインアップされ、あわせて3つの速度で提供される。

 新しい料金プラン「マイそく」が誕生した背景はどのようなものがあるのか。オプテージ モバイル事業戦略部長の福留 康和氏とチームマネージャーの田村 慎吾氏に、「マイそく」の現状や戦略を聞いた。

オプテージ モバイル事業戦略部長の福留 康和氏

ライトコースとキャンペーン

 「マイそく」は、通信量ではなく通信速度を軸として提供される料金プラン。

 平日のランチタイム以外、プレミアムコース(月額2200円)なら最大3Mbps、スタンダードコース(月額990円)なら最大1.5Mbpsの通信速度で通信容量の制限なく利用できる。ただし、直近3日間に10GB以上利用したユーザーへの速度制限(最大32kbps)と通信の最適化が実施される。

マイそく

 今回発表されたライトコースでは、平日のランチタイム以外最大300kbpsの速度で通信でき、テキストのやりとりや音楽ストリーミング、ラジオ視聴などライトユースが中心のユーザーに焦点が当てられている。

マイそく「ライトコース」

 また、ライトコースは音声通話がメインのユーザーにも利用しやすいコースで、10分かけ放題(月額550円)を合わせても月額1210円で利用できる。

 一方で、提供が8月下旬となるため、その間も「マイそく」のサービスを体験してもらえるよう、プレミアム/スタンダードコースの月額料金を割り引くキャンペーン「ホーダイホーダイ割」(8月31日まで)を実施する。

ホーダイホーダイ割

 キャンペーンでは、6カ月間月額料金を330円割引するもので、スタンダードコースの場合、新設するライトコースと同じ月額660円で利用できる。

 キャンペーンでは、このほか10分かけ放題が「10分かけ放題割引キャンペーン」との併用で最大6カ月間無料で利用できる。

「マイそく」誕生の背景

福留氏

 通信速度でプランを選ぶという主流の料金プランとやや離れた特性をもった「マイそく」だが、どのようにして決まったのか。福留氏に聞いた。

福留氏
 (お客様の)使い方はさまざまで、「動画を視聴したい」とがっつり使いたい方もおられれば、ライトユースしたいというお客様もいらっしゃります。一方で、お客様の声を聞いていると、一貫して「料金を気にせず安心して使いたい」という声が聞かれ、安心して利用できる料金プランとして「ほぼすべてのアプリを問題なく使える」というスタンダードコース(1.5Mbps)と、安心して使えるプレミアムコース(3Mbps)を出しました。

 今回は「もっとライトに使いたい」というお客様向けに、新たに「ライトコース」を出させていただきました。

――3月に「マイそく」が始まってから3カ月足らずで「ライトコース」が発表されましたが、事前に用意されていたものなのでしょうか?

田村氏
 3月に「マイそく」を開始し、お客様の反応などをふまえて、今回のライトコースを出させていただきましたが、「もっと低速で私は十分なので、もっとお得なプランがほしい」という声は実際いただいておりましたので、今回のリリースに踏み切りました。

 ライトコースの構想自体は2月の「マイそく」発表時にありましたが、これまでの「データ容量」ではなく「通信速度」で選んでいただくシステムです。これが、どこまでお客様に受け入れていただけるのかがわからなかったので、プレミアム/スタンダードコースというわかりやすいコースから始めることにしました。

 発表後から、市場のお客様の反応などを踏まえ「ライトコースも受け入れられるだろう」ということで、今回リリースに踏み切りました。

福留氏
 プレミアム/スタンダードコースについて、年間の最終目標を4万件と置いていましたが、わずか2カ月で2万件を超える反響をいただいていることもあり、ライトコースをリリースすることになりました。

――スタンダードコースとプレミアムコースだとどちらの方がユーザー数は多いですか?

福留氏
 スタンダードコースのほうが多いです。

 スタンダードコースの通信速度(最大1.5Mbps)があれば、ほぼすべてのアプリを問題なく利用いただけるということに加えて、mineoをご利用のお客様は、節約志向のお客様が多いので、まずはスタンダードコースをご利用されるのかなと想定しております。

 まだ始まったばかりなので、引き続きお客様のニーズに即したサービスを心がけて行きたいと考えています。

――ライトコースについて、発表されたばかりですが、ユーザーの反応はいかがでしたか?

田村氏
 お客様の声をみてみると、我々がターゲットにしているお客様に好意的な印象を持ってもらえているかと。

 具体的には、文字のメッセンジャーアプリの利用が中心のお客様やネットラジオをご利用のお客様を中心に、好意的なコメントを多数いただいております。

福留氏
 300Kbpsで物足りないという声も当然ありますが、「自分にぴったり」というお客様も多数おられます。電話が中心でデータ通信をあまりされない方もやはり多いと思います。お客様が自分の両親にすすめたいという方もいらっしゃいまして、ライトユースのお客様も相当おられると、手応えを感じています。

――8月下旬のリリースということですが、この時期となったのはなぜでしょうか?

福留氏
 当初の計画からかなり前倒しで進めています。スタンダードコースとプレミアムコースの状況を見て、(マイそくのサービスを)ご理解いただけていると思っております。相当な数のお申し込みをいただいておりましたので、できるだけ早い時期にサービスを開始することにしました。

田村氏
 元々の構想では、今年度下旬のリリースを想定していましたが、最速時期の8月に前倒しで開始します。

――ライトコースも、それなりの申込数が期待できると……

福留氏
 「1年後に4万契約」を、ライトコースだけの数字として獲得目標においています。

――では、マイそくの3コースで10万契約ぐらいは達成できそうですね。

福留氏
 スタンダードコースとプレミアムコースの年間目標(4万件)はおそらく上回ってくるかなと。それも踏まえライトコースだけで4万は達成できるかなと思います。

「データ使い放題」通信品質には影響しない?

福留氏

――データ使い放題の「マイそく」ですが、マイそくユーザーの増加に従って、mineo全体のネットワークには影響しないのでしょうか?

福留氏
 「マイそく」は、ピークの時間帯(平日の12時~13時)は通信速度を制限させていただいた上で、空き帯域を有効活用するというサービスになっていますので、通信には特に影響はなく、仕様どおりの品質を提供できるものと考えています。

田村氏
 ただ、昼使われないお客様が夕方や夜に利用されると思いますが、実際にどの時間帯でどのくらい通信を使うかというものについては、しっかり追っていかなければいけないと思っています。

――ライトコースで最大300kbpsという速度ではありますが、ユーザー数が増えるとその分帯域幅が圧迫されたり、別の部分が圧迫されたりしないのでしょうか?

福留氏
 混雑するお昼の通信量を制限した上で、空き帯域を活用するサービスなので、基本的に帯域の増強は不要となっています。

 ただし、おっしゃるとおり今後マイそくの契約数が増加していくことで、お昼以外の時間帯で混雑する可能性は当然あると考えています。たとえば、夕方の17時~19時あたりにお昼以上のピークとなる可能性は当然あると思っています。

 そういった場合には、通信品質を維持するために、帯域の増強やマイピタとマイそくを区別して管理する仕組みの構築など必要な措置を講じていきます。引き続き最適な帯域設定になるように検討を進めていきます。

 ちなみに、マイそくでは夜に利用のピークが立っている傾向があると感じており、マイピタとうまく平準化されている印象です。もっとも、サービス開始から2カ月程度なので、状況は見極める必要があると思っています。

――「マイそく」には3種類のコースがラインアップされていますが、たとえばライトやスタンダードコースのユーザーに上位のコースに移行してもらいやすくするための施策などは考えていらっしゃるのでしょうか?

福留氏
 mineoについては「必要なものを必要な分だけ自由に選べる」ということを大切な価値としておいているので、お客様がぴったりのサービスを選んでもらえてればと思っています。

 そういう意味では、今回スタンダードとプレミアムに対しライトというコースを追加し、よりお客様のライフスタイルにあった最適なプランをお選びいただけるようになったのではと考えています。

 我々としては、お客様ご自身にあったプランをお選びいただければと思っております。

新サービスの近況

――今春に「マイそく」意外にもいくつかサービスが発表されました。新サービスの近況を教えて下さい。

福留氏
 かけ放題の新プランや「パスケット」などをリリースしてきました。

かけ放題の新プラン
パスケット

 かけ放題では「10分かけ放題」と「時間無制限かけ放題」の2つを出しておりますが、14万件の目標に対しわずか3カ月で4万程度(うち10分かけ放題が約3万)契約を頂き、大変ご好評を頂いております。

 パスケットについては、10万件の目標に対して3カ月で8000件程度ということで、こちらは若干目標には足りていません。貯める楽しさ、増える楽しさといった新たな体験ができる付加価値を今後追加していきますので、引き続きお客様の声を踏まえながら、よりよいサービスにしていきたいと考えております。

 お客様の反応という観点では、「専用アプリなしでこの料金は魅力的」という声や「トリプルキャリアでの完全かけ放題はすごいね」と、他社はドコモさんのみが多かったということで、トリプルキャリア対応の完全かけ放題はすごいといった声をたくさんいただいておりまして、大きな手応えを感じているところです。

 パスケットについても、マイネオのコミュニティサイトなどを通じて多数の声が寄せられています。「mineoらしい楽しいサービス」や「(データ容量が)余る月が多いので、こういったサービスを待っていた」、「地味だけどもしもの時に役立ちそうなサービスだ」など、こちらも数え切れない声を頂戴しておりまして、大きな手応えを感じております。

 「マイそく」にも「自分にドンピシャのプラン」ですとか「容量ではなく通信速度で選べるプランを求めていた」という声がありました。

 もちろん、平日お昼の時間は使いにくくなるので既存の使い放題系サービス「パケット放題プラス」のほうが合っているという声も当然ありますが、総じて「マイそく」には選択肢が広がったと言うことで、歓迎の声が増えている印象です。

楽天モバイルの料金プラン改定の影響

――楽天モバイルが5月に料金プラン改定を発表しました。0円で利用できる部分が7月からなくなるものです。この影響はありましたか?

福留氏
 他社のサービスに対しての言及は控えますが、mineoとしての獲得数推移を申し上げると、今春発表した3つの新サービスを発表しましたが、回線獲得数は堅調に推移しております。

 加えて、例年ゴールデンウィークが明けると、季節トレンドで回線獲得数が落ち込むんですね。毎年そこで大体落ち着くところですが、今年度に関しては、ゴールデンウィーク以降も回線獲得数はこれまでを上回る勢いで増加しており、市場の流動性は従来よりも高まってきているという認識をしております。

 前年同月比で2割~3割くらい、回線獲得数は増加していますし、サイトの流入数も増えてきています。

mineo担当者
 サイトの流入数は大体2倍くらい増えている形になります。

――市場の流動性が高まってきているということでしたが、他社から乗り換えようというユーザーをうまくキャッチする施策は何かあるのでしょうか?

福留氏
 市場の流動性が高まってきている要因は、MNOさんやそのサブブランド、MVNO各社さんからさまざまなキャンペーンや新サービスが出てきていることかなと認識として持っております。

 そして、どうやって獲得するの? ということですが、やはり(mineoを)選択肢の一つとしてご検討いただけるように、まずは使っていただくことなんだろうなと思っています。そのために、「ホーダイホーダイ割」のようなキャンペーンを今回出させていただきまして、できるだけたくさんの人にまずは試しに使っていただいて、よければ長く使っていただければというふうに考えています。

 マイそくのライトコースについては、3月時点で構想としてありましたので、楽天さんの0円廃止が出たから作ったわけではなく、広く受け入れていただける「300kbpsでも十分という方に」受け入れていただけるサービスとして我々としてはリリースしますが、一定数は今回の流動の中で獲得の向上につながるのかなという風には考えています。

――流動性が高まっている中、今後mineoはどのようなサービス展開をしていくのでしょうか?

福留氏
 引き続き我々としては、独自の価値を追求していくということだと思っています。

 当然、安定した通信品質であったり、お手頃な料金というのは、必要十分を備えた上で、他社にはない「使い勝手のいい独自サービス」を、ファンとの共創を通じて作り上げていくものと思っております。

 このようにしてオンリーワンのポジションを目指していくと言うことかなと。MNOさんとMVNOとの間で境界線がなくなりつつあると認識しておりますし、加えてサービスの同質化も進んでいると認識しております。

 そういった現況にあっては、独自のサービスを提供することがより重要になってくるのではないかと思っています。

――本日は、ありがとうございました。