インタビュー
シャオミのブランド「POCO」が日本上陸、Xiaomiと何が違う? スティーブン・ワン氏から聞いた
2022年6月23日 19:00
シャオミ(Xiaomi)は6月23日、グローバル展開しているブランド「POCO」を日本で展開することを正式に発表した。あわせて、ハイエンドモデルのスマートフォン「POCO F4 GT」を発表、発売した。
これまでのXiaomiブランドとPOCOブランドは何が違うのか? シャオミ 東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏によると「ターゲット」や「マーケティング方針」などが違うという。
POCOブランドで何を目指す?
「POCO」ブランドは、Xiaomiとは独立したブランド展開を図るというスティーブン氏。
POCOブランドでは、「念のために搭載しているが不要な機能」のような余計なものを省き、必要な性能にフォーカスをあて、性能を向上させ最高のコストパフォーマンスを誇る製品を提供することを使命にしている。
ターゲットとするユーザー層は「テクノロジー愛好家」に据え、アグレッシブなデザインや機能を搭載したハイパフォーマンスの製品を提供するという。
POCOブランド誕生の背景についてスティーブン氏は「Xiaomiは10数年の歴史がある中で『主流のユーザー』に注目してしまっている」と説明。つまり、Xiaomiという大きなブランドでは、万人受けするものを目指してしまうという。
このため、POCOブランドでは「シャオミの経験や知見を生かし、柔軟性やイノベーションを持った新しいビジネスモデル」を構築していくとしている。
POCOブランドが日本に上陸した背景
グローバルで展開しているPOCOブランドを今回日本でも展開する理由について、スティーブン氏は「これまでのPOCO製品購入ユーザー」や「SNSの活発度」「政府の施策」などを挙げた。
越境購入者の10%は日本ユーザー
グローバルで展開しているPOCO製品について、越境ECサイトでの購入者のうちおよそ10%が日本のユーザーだったという。また、POCOのこれまでのオンライン発表会でも、Twitterでは日本ユーザーの視聴が多く、日本のユーザー同士でのやりとりも活発であることから、スティーブン氏は「コアな日本のファンがいる」と分析している。
また、前述の通りPOCOでは新しいビジネスモデルを構築する部分に触れ、「日本で新しいビジネスモデルを行うことは重要度が高い」(スティーブン氏)とも説明している。
政府の政策に変化
スティーブン氏は加えて「日本政府の政策」を日本展開の理由に挙げている。
政府の働きかけでNTTドコモとKDDI、ソフトバンクからそれぞれオンライン専用プラン(ahamo、povo、LINEMO)が登場した。こうした料金面での変化は、ユーザーがより価格に敏感になるという影響をもたらす可能性がある。
また、為替などの影響もありスマートフォンが全体的に値上がりしていると指摘。
特にフラッグシップモデルの価格上昇が顕著だとスティーブン氏は説明し、フラッグシップモデルに比肩する能力を備えつつも、コストパフォーマンスが優れた製品であれば、日本でも支持されるとスティーブン氏は見ているようだ。
オンライン販売のみ、クチコミでの拡大を目指す
日本での運営方針としてスティーブン氏は「Xiaomiとは独立したブランドとして体制を敷く」ことを明言した。どんな製品を提供するのか、シャオミからは独立したプロダクトで展開することになる。
その一方で、供給網のような、シャオミが日本で築いてきたノウハウや資産など、共有できるものは利用するという。
また、効率的な運営モデルとして、端末提供は「オンライン販売のみ」、市場マーケティング活動についても「広告は打たずにクチコミ評価で知名度拡大」を図るという。スティーブン氏はこれにより「価格を極限まで下げられる」とコメントしている。
さらに、年に1機種フラッグシップモデルを投入することも明らかにした。最もスペックが高く最高のパフォーマンスをもった製品を競合他社の半値で提供することを目指したモデルで、スティーブン氏はこれを「フラッグシップキラーモデル」と呼び、「10万円以下で買えるフラッグシップモデル」という新しい選択肢を提供したいと想いを述べた。
7万円で買えるハイエンドスマホ「POCO F4 GT」
POCOの日本展開第1弾となる「POCO F4 GT」は、パフォーマンスにフォーカスをあてたPOCOのFシリーズのスマートフォン。
Fシリーズは総出荷台数が420万台以上を記録しているといい、プロダクトプランニング部本部長の安達 晃彦氏は「単なるハードコアなフラッグシップモデルというだけではなく、ゲーム機能を備えた製品」とアピールしている。
チップセットは「Qualcomm Snapdragon 8 Gen 1」を搭載しているほか、独自の冷却技術で本体の温度上昇を抑え常に最高のパフォーマンスを引き出せられるよう図られている。
バッテリーは2350mAhのバッテリーを2つそなえ(合計4700mAh)、最大120Wの急速充電に対応し、17分で満充電できる。本体には、120W急速充電対応の充電器と、充電しながらのゲームプレイや動画鑑賞を妨げないL型コネクタを採用したUSB Type-Cケーブルが同梱される。
ディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応した6.67インチのAMOLEDディスプレイで1920Hzの高周波PWM調光でちらつきが抑えられている。また、Corning Gorilla Glass Victusをフロントガラスに採用し、落下強度やひっかき強度の向上が図られている。
このほか、本体を横持ちした際に利用しやすいポップアップトリガーや3つの本体マイク、ウーファーとツイーターを2つずつ備えたステレオスピーカー、ゲームプレイ時でも手で覆われにくいよう配置された無線アンテナなどを備えている。
アウトカメラは64MPのメインカメラ(ソニーIMX686センサー、F値1.9)と8MPの超広角カメラ(120度、F値2.2)、2MPのマクロカメラの3眼構成。またフリッカーセンサーが搭載されており、画面をキャプチャーする際のちらつきを抑制する。インカメラは20MPでソニーのIMX596センサーを搭載する。
「POCO F4 GT」には、メモリーとストレージの組み合わせが「8GB+128GB」と「12GB+256GB」モデルが用意されており、それぞれ販路と価格が異なっている。
「8GB+128GB」モデルは、楽天市場の「Xiaomi公式楽天市場店」とシャオミのECサイト「Mi.com」で販売される。価格は7万4800円、6月26日23時59分までは1万円割引の6万4800円で購入できる。
「12GB+256GB」モデルは、Amazon.co.jpで販売される。価格は8万4800円、6月26日23時59分までは5000円割引の7万9800円で購入できる。
主な質疑
ここからは、会見中の主な質疑応答をご紹介する。回答者は、東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏とプロダクトプランニング部本部長の安達 晃彦氏。
――今回POCOを日本で投入する背景を知りたい。なぜこのタイミングなのか?
スティーブン氏
いずれは日本に進出することを検討していたが、今が一番良いタイミングだと判断しました。
社内では(日本展開の)準備ができており、そのための下積みもあったので、日本市場に製品を展開できると思いました。グローバルの価格+消費税10%がそのまま日本での販売価格になります、非常に合理的な価格かつ良質な製品を提供できる保証ができたので、今回正式に展開しました。
POCOの製品については、「広くたくさんのユーザーに買われていく」とは考えていませんが、一部のこういうニーズを持つユーザーに受けるのではないかと考えています。
あわせて、独立したブランドは新しいビジネスモデルを見つけるのに非常に役に立ちます。柔軟性を持っていろいろな変化に対応できるので、ビジネスの観点から見ても非常に意味があると思います。
ユーザーから見てもビジネスから見ても、新しい価値を創出できるという風に信じ、今回日本に展開する決断をしました。
――日本市場向けにカスタマイズされた機能などはあるのか?
安達氏
グローバルで展開しているものと基本的な仕様は変えずに日本で提供します。お客様に期待されているようなFeliCaや防水防塵レベル(「POCO F4 GT」はIP5X、IPX3相当をサポート)を向上したものを投入するものではありません。
ただ、日本でご利用いただくための周波数の対応や技適など認証はしっかりと取得し、コンセントプラグも日本国内で利用できるものを最初から同梱しております。
――対応周波数もグローバルモデルと変更はないか?
安達氏
変更はありません。5G Sub-6のn79には非対応となっています。
また、国内4キャリアへの対応確認については、我々の経験値でネットワークの確認などを実施しています。
――POCOには幅広い価格帯の製品ラインアップがあるが、今回ハイエンドモデルを展開するのはなぜ? そのほかのモデルも日本展開するか?
スティーブン氏
フラッグシップモデルのFシリーズは、最もPOCOブランドを表すことができる製品だからです。
POCOはテクノロジー愛好家のために立ち上げたブランドです。よりハイエンドの機種に興味を持つターゲット層であることに加え、非常に競争力が高い値段設定となっています。
また、市場を見てほぼすべての商品が値上がりしています。そのなかで、シャオミから非常に合理的かつお手頃な値段で良い製品をさせるのであれば、皆さんのためにもいいのではないかと思いました。
今後ユーザーの反応を見ながら、今後のPOCOのロードマップを決めていきたいと考えています。
――ゲームプレイで便利な機能を教えてほしい。
安達氏
わかりやすい機能としてはポップアップトリガーです。
ほかにも、ゲームプレイ中でも電波強度を維持するWi-Fi機能(アンテナの配置などが最適化されている)だったり、マイクも閉じないように(ユーザーの手で塞がれないように)なっていたり、ケーブルをL型にすることで操作の邪魔をしないようになっていたり、細かいところもゲームプレイに適した機能かなと思います。
ゲームプレイに特化した端末として強調はせず、フラッグシップデバイスとして最高のパフォーマンスができるという位置づけでコミュニケーションしていきたいと考えています。
ハイエンド端末のユースケースとしては、やはりグラフィックパフォーマンスを使うゲームに慣れ親しんでいる方が多いと思いますので、ゲーム機能でよりハイパフォーマンス性能を体験いただければ幸いです。
――今回モデルによって販路が分かれている理由は?
スティーブン氏
POCOでは、ほかにないビジネスモデルを模索しています。アグレッシブな価格を設定し、最もコスパのよい製品を提供するため、販路を分けて提供することになりました。
今回の販売方法は、Amazon.co.jpや楽天市場とのビジネス交渉の結果として決まったものになるので、詳細の公表は控えさせていただきます。
――似たようなスペック(同じチップセットを採用しているなど)の製品をブランドを分けて販売するのはなぜ?
スティーブン氏
製品の位置づけが違うため、ブランドを分けています。
POCOは、完全にパフォーマンスにフォーカスを当てた製品です。
贅沢すぎる機能をそぎ落として、最適なコストパフォーマンスを持った製品を投入するためのブランドとなります。