インタビュー

間違いから学んだスマートプラグ利用の注意点と、スマート家電を取り巻く現状

 1月27日に掲載された「みんなのケータイ」で、筆者が紹介したスマートプラグの使い方に重大な過誤があり、多くのご指摘をいただいた。

 記事では、Alexa対応のスマートプラグ「Amazon Smart Plug」にこたつを接続し、遠隔でオン、オフする様子を紹介した。しかし、これは火災などの事故につながる危険性があることから、電気用品安全法によって禁止されている行為。

 このことはAmazonの商品ページをはじめ、製品パッケージに封入されている「重要な情報」および説明書にも明記されている。記事にはすでに注意喚起が追記されているが、筆者の確認および認識不足によって誤った情報が伝わってしまったこと、ご心配をおかけしたことをあらためてお詫びしたい。

 メーカーのAmazonにも、あらためてスマートプラグの正しい使い方について取材を依頼し、Amazon デバイス事業本部 Echo・スマートホームデバイス事業部 事業部長の橘宏至氏より文書で回答をいただいた。

Amazon担当者の回答は

 「Amazon Smart Plug」は、音声アシスタントのAmazon Alexaに対応し、 Amazon EchoシリーズなどのAlexa搭載デバイスから、つないだ家電製品の電源オン/オフを音声で操作できる製品だ。Amazon純正だけにAlexaアプリで簡単に設定でき、別途アプリのインストールが不要など、手軽に導入できるのが特徴と言える。

 利用する際に留意すべき点について聞いたところ、使用可能な製品の確認方法や、電気用品安全法で接続や遠隔操作が禁止されている製品について、以下のように詳しく回答をいただいた。

 Amazon Smart Plugでは、物理的なスイッチがある家電の電源のオン/オフを、Alexaで切り替えることができます。電子制御スイッチ付き家電(たとえばコンセントに接続したあとにリモコンで電源を入れる必要がある家電など)の、電源の操作には対応していません。

 お手持ちの家電が対応しているかどうか確認いただくには、家電がオンになっている状態でコンセントを抜き、コンセントを差したときに再びオンになるものが対応しています。なお、コンセントを差しなおす際は、安全のため10秒間待ってから行ってください。

 電気用品安全法により、特定の電気用品は本製品に接続し、音声などで遠隔操作することが禁じられていますので、ご留意ください。たとえば、電気ストーブやヒーター、こたつ、電気毛布のような暖房器具や電気コンロなどの電熱器、コーヒーメーカー、電気ケトル、ヘアアイロン・カーラー、布団乾燥機などに接続してお使いいただくことはできません。

 電気用品安全法は、電気用品の製造、販売などを規制するとともに、電気用品の安全性確保について事業者の活動を促進することで、電気用品による危険および障害の発生を防止することを目的に定められた法律だ。

電気用品安全法について

 今回、多くの反響をいただいたなかには、スマートプラグに限らず、“つながる”スマート家電について、「何がOKで何がNGなのかわからない」という声も少なからずあった。電気用品安全法は事業者に向けた法律だが、いちユーザーとしても、スマート家電の現状について知っておいて損はないはず。

 そう考えて行き着いたのが、経済産業省が2021年4月28日に公表した 「電気用品、ガス用品等製品のIoT化等による安全確保の在り方に関するガイドライン」 だ。

 このガイドラインは、「家電製品等がインターネット環境で使われることで想定されるリスクについて、誤操作のみならず、通信遮断やサイバー攻撃を含めた場合であっても、安全が確実に確保されるよう対策を取る」ために、必要なことを検討してまとめられたもの。

 「遠隔操作を許容する機器/遠隔操作に不向きな機器」の分類と、その考え方についてもまとめられている。

経産省の中の人に聞いてみた

 経済産業省 商務情報政策局 産業保安グループ 製品安全課の神沢吉洋氏によれば、ガイドラインは2018年から約3年をかけ、外部有識者による検討会や業界団体などによるワーキンググループを設置するなどして、検討を重ねた内容をまとめたもの。

 さまざまな製品について、“つながる”ことでどのようなリスクが生じる可能性があるのか、リスクを低減するためにどのような要件が求められるかが議論されたという。

 たとえば「遠隔操作に不向きな機器」を分類する際の考え方については、以下のようにまとめられている。

 「操作する者が自ら手を触れ機器を動作させることで、その機器の機能、役割を果たす」、「機器の表面に触れると火傷する、可動部に触れると傷害を受けるなど可動時に危険な部分が露出する」、「遠隔操作することで危険のリスクが著しく増す」機器については、設置される位置、使用用途、使用時間、機器周辺への影響等を考慮すると、遠隔操作に不向きであり、また、近くにいる人や周辺に危害を及ぼすリスクがある。人の注意が行き届く状態で動作する機器」については、基本的に遠隔操作を行わない機器として整理する。

(中略)

 たとえば、電気用品では、アイロン、ミシン、ヘアケア用機器、ほとんどの調理用機器などが「遠隔操作に不向きな機器」に含まれる。

電気用品、ガス用品等製品のIoT化等による安全確保の在り方に関するガイドライン(筆者が要約)

画像出典(以下同):令和2年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(電気用品等製品のIoT化等による安全確保の在り方に関する動向調査)調査報告書(PDF形式)

 「人の注意が行き届く状態で動作する(ように作られている)機器」は、何かあったときにも人が対処することが前提なので、基本的に遠隔操作には不向きという考え方だ。

掃除機とロボット掃除機も違う?

 ガイドラインとあわせて公表された「令和2年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(電気用品等製品のIoT化等による安全確保の在り方に関する動向調査)調査報告書」には、さらに詳しく個々の製品の分類例も紹介されている。

 たとえば 一般的な掃除機は「人の注意が行き届く状態で動作する機器」なので遠隔操作には不向き な機器に分類されるが、 ロボット掃除機は「人の注意が行き届かない状態で動作する機器」なので、遠隔操作を許容 する機器に分類されるといった具合だ。

 ただ手放しで許容するのではなく、さらにロボット掃除機が電気ストーブのコードを巻き込むといった、遠隔操作時のリスクシナリオについても検討されている。意図せず動く可能性を考慮して、主電源スイッチや通信を切り離せるスイッチを用意することや、障害物回避などの予防安全機能の設計、説明書などでの注意喚起によってリスクを低減することなどもまとめられている。

 「家電製品やガス製品がつながって便利になる一方で、遠隔操作による誤動作や通信遮断、サイバー攻撃などがあった場合も、消費者の安全が確実に確保されることが重要です。そのために事業者にはさまざまなリスクを想定して製品を作っていただくのはもちろん、注意喚起もしていただきたいですし、また消費者にも説明書にしっかり目を通したうえで使っていただきたいということです。ただ誤解していただきたくないのは、このガイドラインはIoT化の進化を阻むものではないということ。今は遠隔操作に不向きと分類されている製品も、技術の進化や消費者の意識の高まりによって、今後変わっていく可能性があると考えています」(神沢氏)

 ガイドラインやルールは、製品そのもののイノベーションや利用シーンの変化などによって、今後変わっていく可能性がある。

 しかし、安全のためには、“つながる”メリットやデメリットをユーザー自身が理解し、正しい使い方をしなければならないということ。説明書にきちんと目を通さなかったことを、あらためて反省した。