インタビュー
モトローラのダニー社長に聞く、「g8 plus」の手応えと5G時代への意気込み――折りたたみスマホ「razr」のコメントも
2020年2月25日 11:00
25日、モトローラ・モビリティ・ジャパンは、SIMフリーのAndroidスマートフォン「g8 plus」を発表した。
1年前に登場した「g7」シリーズの後継機種は、どのような狙いで登場することになったのか。また迫り来る5G時代にどのような戦略で挑むのか。ダニー・アダモポウロス社長とモバイルデバイス事業のプロダクト・マネージャーの島田日登美氏に聞いた。
g8 plus、登場の背景
――2019年6月発売の「g7」シリーズから1年弱で、今回、「g8 plus」が発売されることになりました。
島田氏
g8 plusは、先代の「g7 plus」と同じ価格(3万8800円、税込)を維持しながら、トリプルカメラを搭載し、170度の超広角撮影や、光学手ブレ補正のアクションカメラ動画撮影などを楽しめます。g7 plusで採用した赤のボディカラーも、今回踏襲しています。
ダニー氏
2019年6月に発売した「g7」シリーズはとても好調でした。1カ月分と予測していた在庫が1週間で売れましたし、その後、4半期分が1カ月で売れました。その好評だったg7シリーズの自然な進化という位置づけですので、日本でも提供させていただくことにしたのです。
海外では10月に発表されたモデルでしたが、クリスマスシーズンや春節といった季節要因や、通信事業者とのIOT(相互接続試験)などもあって、この時期の登場となったのです。
島田氏
g7シリーズ以前から、当社のスマートフォンを利用し続けてくださっているお客さまがいらっしゃいます。そうした方々に向けて、引き続き利用していただけるよう提供することになりました。
法改正、どんな影響?
――「g7」の前から支持を得ていたのがgシリーズというわけですね。日本市場では、電気通信事業法が改正され、大手携帯電話会社には割引額が上限2万円までといった規制が課せられるようになりました。2019年6月にインタビューした際には、価格とスペックという“素の実力が評価される”との予測でしたね。
ダニー氏
はい、10月~12月という前四半期のデータを見ると、やはり携帯電話端末市場に法改正の影響が出ています。わかりやすく言うと、ハイエンドモデルの勢いは減速しました。一方で、(ミドルクラスを提供する)モトローラの売上は伸びています。3万~4万円の端末市場がとても伸びてきているんです。
――これからの日本市場はどうなるのでしょうか。モトローラで日本以外の市場も管轄するダニーさんから見て、参考になる他国の市場はありますか?
ダニー氏
今後の日本市場を占う際、参考になるマーケットのひとつは数年前の韓国市場、もうひとつは昨年の豪州市場でしょう。
たとえば2019年の豪州市場では、中国メーカーのブランド力がアップしました。突然売れるようになったんです。
――なるほど、日本市場でも中国メーカーの存在感は増しています。モトローラはどのように戦っていきますか?
ダニー氏
これまでも機会を見いだしたり、チャレンジしたり戦ってきたのですが、そうした環境の変化へ対応する準備はできています。たとえば日本独自のフィーチャーを追加する、日本市場向けのデバイスを投入したりするといったものです。
――なんと、日本向けですか。
ダニー氏
近い将来、何か追加で発表できるよう頑張ります。乞うご期待です。
島田氏
話を戻すと、日本市場でのSIMロックフリースマートフォンは2015年後半から盛り上がってきたと思っています。多くのメーカーさんが参入され、今やスマートフォンは生活必需品で、誰もが持つものになりました。使いやすさ、壊れにくさといったあたりが大切なのかなと思っています。
初めてのスマートフォンがiPhone、というお子さんは、これから徐々に徐々に少なくなっていくでしょう。SIMフリースマホを販売するショップの方とお話すると、gシリーズが大好きという方もいて、モトローラとして継続して新機種を出し続けていくこと自体にも意味があるのかなと思っています。
日本向けモデルについては(モトローラ社内の)グローバルでも「日本ガンバレよ!」と言ってもらっているんです。
縦折りスマホ「razr」はどうなる?
――グローバルと言えば、先般、海外で折りたたみタイプの「razr」が発表されましたよね。ただお値段は日本円にして約15万円程度とのことですが……。
ダニー氏
その価格は税抜きで、gシリーズとは異なるセグメントの商品になります。もちろんハイエンド市場自体に、機会はあると思っています。プレミアムで、フラッグシップの製品を求める方々は絶えずいらっしゃいます。ただ、日本では携帯電話会社の割引に上限が設定されました。
「razr」については、たしかに販売数量で見るとgシリーズほどの規模にはならないでしょう。でも製品自体の強さ、メリットが今後、マーケットで評価されると思っています。
――日本でも販売される可能性はあるのでしょうか?
ダニー氏
先日発表された「razr」については、日本での販売はありません。eSIMですからね。
――確かにドコモやau、ソフトバンクは、スマートフォン向けのeSIMは手がけていませんね。IIJや楽天モバイルはその仕組みがありますが……。
ダニー氏
razrという製品が、日本で現在eSIMに対応する事業者さんのマーケットにマッチするかどうか、という視点もありますね。ただ、そこまで簡単なものではないのですよ……。
――いつか後継機種などが登場することを期待しています。
5Gスマホへの取り組み
――日本ではまもなく5Gサービスが始まります。
ダニー氏
とてもワクワクしているんですよ。モトローラは、世界で初めて5G対応のスマートフォンを出したメーカーですからね。米国ではベライゾンと協力してローンチしました。
ただ、日本ではまだ5Gが始まっていませんし、来年まで待たないといけないのではないでしょうか。5Gのネットワークがありませんからね。
MVNOさんによるサービスの状況次第だと思ってます。使えるようになってからですね。
5Gではミリ波とサブ6(Sub-6)と呼ばれる電波を用いますよね。これまでと比べて繋がりにくいとされています。特にミリ波は。でもモトローラはそこを解決します。MWCでは5Gスマートフォンも発表しました。5Gの経験もあります。深く理解もしている。
日本でもいつか、5G向けスマートフォンを提供します。でも、まだ時期は申し上げられません。もう少しお待ちください。
――楽しみにしています。ありがとうございました。