インタビュー

「オールスマートライフ戦略で、お客さまに価値をお届けしたい」――HUAWEI ビジネスコンシューマグループCEO Richard Yu氏インタビュー

 MWC 2020の開催が中止となった中、スペイン・バルセロナで発表イベントを開催したファーウェイ。発表イベントのプレゼンテーションはビデオ中継で登壇した同社ビジネスコンシューマーグループCEOのRichard Yu(リチャード・ユー)氏は、イベント終了後、日本のメディアに対し、グループインタビューという形で取材に応じた。インタビューの冒頭、同氏は新型コロナウイルスの影響が懸念される中、早々に中国を離れ、2月4日から欧州で実務やイベントの準備を進めてきたことを明らかにして、メディア関係者を驚かせた。

右がRichard Yu氏

――今回発表したMate XsではAndroidプラットフォームにHUAWEI Mobile Service(HMS)を搭載していますが、昨年、発表されたHarmony OSを搭載する計画はなかったのでしょうか?

Richard Yu氏
 Harmony OSのスマートフォンへの展開は現状、延期しています。Harmony OSはスマートフォンというより、スマートTVやIoT製品に搭載する方向で準備を進めています。ただ、将来的にスマートフォンに搭載するかどうかはまだ検討中です。少なくとも今年の第3四半期の終わりまでは様子を見つつ、当面はIoT製品へ積極的に展開していくことになるでしょう。スマートフォンについてはこれまでと同じように、Androidプラットフォームのエコシステムをサポートしていきます。

――新型コロナウイルスは御社製品の生産や展開に影響が出ているのでしょうか?

Richard Yu氏
 ファーウェイだけでなく、ほとんどすべての会社、なかでもサプライチェーンへの影響はかなりあるでしょう。ファーウェイとしては、こうした影響が最小限になるように、社を上げて、取り組んでいます。

――これまでのインタビューでも同じ質問をしてきましたが、現状、ファーウェイは第2位のシェアを持つ一方、市場はかなり逆風が吹いています。以前から「No.1になる」と明言されてきましたが、それを実現するために、どのように取り組んでいくのでしょうか?

Richard Yu氏
 確かに、現在は非常にタフな環境にありますが、元々、昨年、米国の件(米商務省のエンティティリスト掲載による取引の影響)がなければ、シェア第1位を獲得できる状況でした。現状、市場での反応は急速に回復しており、自分たちの強みである最新技術を活かした製品を数多く市場に送り出すことで、いずれNo.1になれると思っています。特に、重要なのは日本と韓国のサプライチェーンと連携し、両国の各社と「Win-Win」の関係を構築できるように頑張っていきたいと思います。

――「No.1になる」というお話がありましたが、いつ頃、それを実現できるでしょうか? また、これまでNo.1を獲得しながら、かつてのNokiaのように、衰退した企業もあります。こうした企業の先例から、どんなことを学ばれているのでしょうか?

Richard Yu氏
 いつ頃、No.1になるのかを明確に答えるのは難しいですね。ただ、遅かれ、早かれ、達成できると考えています。重要なことは今日の発表でも触れた「オールスマートライフ戦略」に基づき、お客さまにとって、より価値をもたらすことだと思います。特に、オープンなエコシステムを通じて、お客さまに価値を伝えていくことも大事です。過去に成功した企業から学ぶべきこととしては、やはり、イノベーション(技術革新)を継続するということでしょう。低姿勢を保ち、お客さまのニーズを満たす価値を提供し続けていくことが大切だと考えています。ファーウェイは「Make it Possible」というスローガンを掲げていますが、これからも不可能なことを可能にできるようにという気持ちを持ち、社内的にも官僚主義的な体制にならないように、気をつけていくことが重要なポイントだと思います。

――今日は5G対応製品が数多く登場しました。これから世界各国で5Gサービスがスタートする中、まだ多くの国では4Gサービスが継続し、混在します。今後、5G対応端末をどのようにラインアップしていくのかをお聞かせください。

Richard Yu氏
 5Gの展開は国と地域によって異なるため、地域により個別に考える必要があります。たとえば、中国と韓国はすでに5Gの商用サービスがスタートし、急速に展開されています。逆に、欧州はまだ中国や韓国ほど、5Gサービスが増えていません。日本はこれから5Gサービスがスタートしますが、その中間的な位置にあると見ています。2020年は5Gサービスが世界中でキックオフする年と言われていて、今後、IoTや産業機器など、さまざまな分野に展開していくことが期待されています。現在、5Gサービスが急速に普及している中国と韓国では、今後、2~3年程度で、5Gの契約者数が4Gの契約者数を上回る可能性があります。全体としては、今後、お客さまがARやVR、HDビデオ、ライブストリーミングなどを使うようになり、より帯域が求められるようになれば、5Gの普及にも弾みが付くでしょう。

――今回、AppGalleryの拡充が発表されました。今後、開発者やアプリの本数をどのように増やしていくのでしょうか?

Richard Yu氏
 HUAWEI Mobile Serviceのコアを強化して、そこに連携するトップアプリを増やしていくことがお客さまを惹きつける要素になっていくと考えています。もちろん、日本でもトップアプリの開発者の方々に対し、HMSコアと連携する働きかけを行なっています。ただし、気をつけていただきたいのは、昨年の米国の件が発動する前に発売された端末については、Google Mobile Serviceを継続して、ご利用いただけますし、サポートを続けていきます。

――今日はありがとうございました

Richard Yu氏
 今日は来てくれて、ありがとうございました。いつもファーウェイの製品を応援してくれて、感謝しています。次回はぜひ3月のパリでお会いしましょう。