インタビュー

ソフトバンク榛葉氏に聞く、「半額サポート+」が狙う新たな選択肢とメリット

 2019年10月、改正電気通信事業法が適用される。いわゆる完全分離プランの義務化や、端末代金の割引を2万円までにすること、そして2年縛りなど契約期間の途中で解約する際の“違約金”を1000円までにすることなど、劇的な変化をもたらす内容だ。

 携帯電話大手3社のうち、ソフトバンクは9月6日に「2年縛りなし/違約金0円」とういう新プランを発表。翌週の9日、48回払いで契約しつつも条件を満たせば最大24回分の割賦残債を免除する「半額サポート+(プラス)」も発表した。

 環境の変化にあわせる形ながら、ソフトバンクはどういった狙いで、新たな施策を作り上げたのか。ソフトバンク代表取締役副社長の榛葉淳氏へ発表会直後にインタビューしたところ、ハイエンドモデルを買いやすくするという選択肢を広げるメリットと、もうひとつの狙いが見えてきた。

選択肢を増やす

――48回払いで最大24回分の残債を免除する「半額サポート+」が発表されました。今後はローエンド、ミドルレンジの機種の販売が増えるのか? と捉えていたところもあったのですが、通信事業者としてハイエンドモデルはやはり重要ということになるのでしょうか。

榛葉氏
 実際はどうなるかわかりませんが、例年通りですと9月中旬にiPhoneの新機種が登場します。そうしたときに、その価格が4万円、5万円になるか……(それはむずかしい)と思うんですね。また韓国や米国の5G対応スマートフォンを見ていると、今後、さまざまな機種は登場するでしょうが、(高額な)あのくらいの価格帯です。

 「大容量でスマートフォンをもっと使いたい」といういわゆるオピニオンリーダー、最先端の方々はそういう(ハイエンドで高額な)機種を選ばざるを得ない。それなのに、「割引上限が2万円」だけ、というのはあるべきではない。

 ハイエンドだけが大事というわけではなく、そういう機種やヘビーユーザー向けのソリューションを提供したかったのがひとつです。

 プレスリリースには含んだものの、今回の発表会ではきちんとご紹介できなかった点として、端末代金もいくつか値下げします。ワイモバイルでは「Android One S5」などがそうですし、ソフトバンクでもタブレットや一部のスマートフォン、フィーチャーフォンが対象です。今後の機種もそういった面でも魅力的なものをやっていきます。

榛葉氏

――なるほど、ハイエンドは買いやすくする、端末価格が下がるような取り組みもする、という形ですね。ただ、個人的には、各携帯電話会社ではローエンド、ミドルレンジの機種の販売が増えると見越しているのかな、と予測していましたが、今回の施策でハイエンドは引き続きそれなりに利用される、と見ていることになるのでしょうか。

榛葉氏
 はい、そうです。(ハイエンドとローミッドに)二極化すると思います。だからこそ、1つの企業として、ソフトバンクブランド、ワイモバイルブランドでポートフォリオを整えることがひとつの答えなのかなと。

他社ユーザーにもアピールする機会

――「半額サポート+」は他キャリアのユーザーでも利用できるとのことですが、そうなると他社ユーザーに対して「ソフトバンク回線にしたら、さらに2万円割り引きますよ」といった売り込みもできそうですよね。

榛葉氏
 どうでしょう。本音で言うと……(と榛葉氏が口元をほころばせる)

横に座る担当者
 そういうパターンが多いと思います。

榛葉氏
 今のソフトバンクユーザーさんにとっては、これまでのままですと、次のハイエンド機種は2万円引きまでになります。割賦でも一括でも、18万円の機種なら16万円はかかってしまう。しかし「半額サポート+」であれば、実質半額にできます。

 一方、他社ユーザーの方には少しでも面白いねと思っていただければよいかなと思っています。一般的に、他キャリアのショップにはなかなか訪れる機会はありませんよね。でもこの転換期とも言える状況の中で、お客さまが新しい機種を選ぶことになるなら、「面白そうだね。ちょっと話を聞いてみるか」ということに言っていただけるだけでも、すごく(新顧客獲得の)ポテンシャルに繋がる。他社ユーザーの方々にとっても選択肢になれば良いと思っています。

――他社もその気になれば追随できそうな仕組みでもあります。

榛葉氏
 他社さんが実際にどうされるかはコメントする立場にはございません。ただ、私どもは「半額サポート+」の基本的な構造を、2年前から提供し、運用してきました。でも他社さんはそういう形態を採ってこられなかった。

 NTTドコモさんが今年6月に導入された方式では36回払いのうち12回の免除とのことですが、ソフトバンクは48回払いのうち最大24回の残債免除になります。

総務省からは指摘なし

――「半額サポート+」は回線契約とは分けた形で、改正電気通信事業法の趣旨にも反しないとのことでしたが、事前に総務省からの指摘は何もなかったのでしょうか?

榛葉氏
 はい、それはもう「適合です」ということでした。

違約金ゼロ、期間拘束なし

――6日には、違約金と期間拘束をなくしたプランを発表しました。

榛葉氏
 はい、障壁が減りますよね。

――発表時には、流出するかもしれないが、加入してもらえる機会にも、というコメントがありました。そんなにうまくいくでしょうか?

榛葉氏
 入りやすいというか、「検討しやすい」ということのメリットがとても大きいと思います。一般の方にとって、2年間の縛りなどいろいろ条件を考える中で、ソフトバンクは違約金なしで一本化する。これって検討の順位を上げていただきやすいと思うのです。

 それと、最大1000円の違約金の有無を感じる前に、ソフトバンクがもたらす価値をユーザーの皆様へ感じていただけるように努力することが、ソフトバンクブランド、ワイモバイルブランドどちらにとっても責務だと思っています。

法改正でも工夫を凝らす

――電気通信事業法が改正され、10月1日から施行されます。端末割引の上限が2万円となり、違約金1000円という話も含まれることになりました。ソフトバンクとしても議論の場やパブリックコメントで見解を示していますが、榛葉さんはどう受け止めましたか。

榛葉氏
 優等生のようですが、キャリアとしては認可事業ですから、その決まった範囲の中で、どうお客さまに寄り添っていくか、ということになります。今日のプレゼンテーションでも使った言葉ですが、「ストレスフリー」という考え方を、私自身はすごく大事だと思っています。

 法令やガイドラインの中で、キャリアとしてどう努力して、知恵をしぼり、ストレスを解消していくか。決まったことにどうこうよりも、その中でどう実行していくか、常に改善していくことが大事ではないかと思います。

――あらためてなのですが、携帯電話会社が端末を販売する意義とは何でしょうか。

榛葉氏
 直接的な回答ではないかもしれませんが……当社の宮内(謙社長)も述べていますが、ソフトバンクは「Beyond Carrier」(ビヨンド・キャリア)という目標を掲げています。

 これまで通り、素晴らしい端末や魅力的な料金は責務として継続しますし、サポート体制は引き続き提供していきます。「キャリア」と呼ばれるように音声とデータをしっかりお届けしてきましたが、しかし僕はそれ以外の領域の使命も重要ではないかと考えています。これからの5G時代では、スマートフォンを使ってライフスタイルの中で、便利さ、楽しさ、オトクさをトータルで提供する。それがBeyond Carrierではないか。

 以前から当社ユーザーであれば、Yahoo!ショッピングでポイント10倍ですとか、Yahoo!プレミアムが実質無料になるといった取り組みを実施し、とても効果があったことは過去、ご報告した通りです。そういった物事をソフトバンクグループの中で提供すること、ライフスタイルサービスを活用する範囲まで考えて、提案していくべきじゃないかなと。

 今日のプレゼンテーションでは、最後にサポート体制についてご紹介しました。当社のスマホアドバイザーは、まもなく1200人に達しますが、受注活動とはまったく別で、ユーザーからスマートフォンに関する質問に応対します。機種変更したらLINEはどうすれば、ですとか、Googleアカウントの設定は……といった質問はあるじゃないですか。詳しい方はひとりで解決できることでしょうが、1億総スマホ時代の今、100%といかなくともできるだけサポートしたい。それが携帯電話会社の方向性ではないかと強く思っています。

 すいません、ちょっと異なる形の回答になっちゃいましたが、質問から関連して大事なことだなと思って、つい語ってしまいました。

――いえ、確かにそうした役割の重要性はよくわかります。本日はありがとうございました。