【ワイヤレスジャパン2014/WTP2014】

動くバスの中が1つのエリア、ドコモは5Gの通信技術を紹介

 2020年以降の実用化を目指して、第5世代(5G)の通信技術の開発が進められている。NTTドコモのブースでは、シミュレーションでのエリア展開イメージを紹介したほか、“ムービングノード”という新たな仕組みを紹介する。

5Gは

 これからの技術である5Gでは「大容量」「LTEの10~100倍の高速通信」「遅延を現状の5msから1msにする」など、さらなる進化が図られる。ムービングノードはそうした要素を実現するための仕組みの1つで、シミュレーション上では動作したとのこと。これはたとえばバスのような公共交通の車両に1つの通信設備を搭載。その設備と街中にある基地局は、64本のアンテナを使って(64×64 MIMO)高速通信を実現し、車内の乗客はバス内のアンテナを通じて通信することになる。走るバスへ的確に電波を向けつつ、バス車内でも局所的なトラフィックをさばいて、高速な通信環境を実現しようというコンセプトだ。

 あわせて披露された、リアルタイムシミュレーターは、新宿の街並みをコンピューター上で再現しつつ、5Gのための小型基地局、ムービングノード対応の装置などを配置して、高速な通信がどの程度実現できるか、わかりやすく紹介する。このシミュレーション上で、現在、商用サービスで提供されているLTEを再現すると、通信速度(スループット)は10Mbps程度。それが5Gになると、1Gbps~10Gbpsと、現在の光ファイバーよりも高速になるという。

LTEをシミュレート。青色は10Mbps程度のスループットを表わす。
こちらは5Gをシミュレート。赤色は1Gbps以上の速度

TwitterやGPSで混雑するスポットをチェック

 ブースの一画で案内されていた「Geographical TimeLine」は、地図とソーシャルメディアのTwitter上のつぶやきを組み合わせたもの。商用化の目処は立っていないが、新たな価値を提供するための取り組みとして、開発中のものが紹介されている。

桜前線をツイートと地図で
イベントの人気具合、混雑具合の視覚化も

 地図とTwitterを組み合わせることで、人気スポットの混雑具合などをわかりやすく示そう、と試みているこの「Geographical TimeLine」の活用例の1つが、“桜前線の視覚化”今年の場合、1月下旬に沖縄で桜のツイートがあり、そこから2カ月後に九州、そして本州と、だんだん桜前線が北上していくさまが、ツイートを通してわかるようになっている。見栄えはまだまだこれから、とのことで、担当者によればツイートのテキストに含まれる地名や位置情報をもとに地図上へプロットしているとのこと。別の見せ方では、ドコモユーザーのオートGPS情報も活用できるようにした。

 一般公開はされておらず、技術開発の方向の一端として今回出展された「Geographical TimeLine」だが、課題の1つは個人情報の取り扱い。ユーザー数が多いTwitterでは、地名に言及するツイートは数%、さらにジオタグ(位置情報)入りとなるともう一桁、少ない割合のツイートになるとのことだが、たとえばコンサートやライブイベントに参加するユーザーの場合は、そうした情報を明示してツイートすることが多いとのことで、プライバシーを保護しつつ、混雑しそうなスポットのリアルタイムな情報をいかに集約していくか、といった点も含めて、今後、改善が進められる見込み。

不得手な人でも展開できる、NTTの「移動式ICTユニット」

 大規模な災害に見舞われたエリアでも、できるだけスピーディに通信環境を復旧させる、という取り組みは、国内の各キャリアでここ数年、特に注力された分野だ。

 そうした取り組みの1つとして、NTTでは「MDRU」(Movable&Deployable ICT Resource Unit、移動式ICTユニット)を開発中だ。これは、Wi-Fiのアクセスポイントやバッテリー、IP-PBXのサーバーなどから構成される車載装置。一部の機能だけ切り出して、アタッシェケースで運ぶこともできる。

 車載基地局そのものは、携帯各社でも展開しているが、NTTの取り組みは、たとえばWi-Fiアクセスポイントだけを構築する場合は、量販店で販売されているような汎用のアクセスポイントを使うなど、低コストで提供できることが特徴の1つ。IP-PBX自体は小型のパソコンで動作し、最大100の通話を同時に処理できる能力があるものの、Wi-Fiアクセスポイントを簡易的なものにすれば、同時に利用できる人数が20人~30人程度になりつつも、低コストで運用できる。車載装置にするとその規模をさらに拡大でき、Wi-Fiアクセスポイントを複数設置して、エリアの調整もユニット側で自動的に行うことも可能で、自治体などに導入されれば、極端な場合、自治体の職員だけでも運用をスタートできる、ということも特徴の1つ。

 低コストかつ手軽に扱えるということから、2013年11月に大型台風で被災したフィリピンからの引き合いがあり、今後、実証実験が行われる予定。

関口 聖