【ワイヤレスジャパン2012】
ZTE大和氏、イノベーションに支えられた同社のビジネスを説明
ZTEジャパンの大和敏彦氏 |
東京ビッグサイトで開催されている無線通信機器の総合展示会「ワイヤレスジャパン2012」の基調講演セッション「アジアワイヤレスサミット2012」で、ZTEジャパンの副社長 CTOの大和敏彦氏は、「ZTEのモバイルブロードバンド戦略」と題した講演を行なった。
まず大和氏は、ZTEの概要を説明する。ZTEは1985年に設立された中国の会社だ。ZTEジャパンは2008年に設立され、日本でのビジネス拡大に合わせて体制強化が続いているという。ZTE全体でいうと、世界中に拠点を持ち、7万人の従業員がいる。現在急成長中の企業でも有り、ここ数年は30%を超える成長率を維持。ネットワークインフラ側の機器の製造・販売を手がけているが、携帯端末も製造・販売を行なっていて、こちらは45.8%の成長をして、売り上げの23.7%を占めるようになっている。
スマートフォンに限っていうと、2011年の出荷台数シェアは世界4位となっている。とくに「ZTE Blade 880」は「1000元スマホ」(1000元は約1万2000円)とも呼ばれて各国で好評で、昨年だけで800万台を売り上げているという。日本での携帯端末ビジネスは、ソフトバンクモバイルを中心に展開しており、すでに累積100万台を超えているという。
ZTEのグローバルでの状況 | 急成長を続ける |
スマートフォンでも躍進 |
イノベーションへの投資 |
こうした成長を遂げているZTEだが、その基本戦略は「イノベーション」にあるという。大和氏は、「R&Dにはかなり力を入れていて、収入の10%をR&Dに投資している」と語る。R&Dセンターは中国国内に11カ所、海外に7カ所があり、社員7万人中、2万8000人がR&Dのスタッフだという。
特許戦略にも力を入れており、2011年には国際特許の申請数で世界一となっている。大和氏は、この特許戦略は「3つのステップで進めてきた」とし、「ステップ1は研究開発により特許を取得することで、知的財産権を防衛する。ステップ2は、特許を守るためだけでなく、攻めるためにも使う。特許を競合他社との交渉にも使う。そしてステップ3はさらにその先で、標準化に貢献しようともしている」と説明する。
モバイルブロードバンド環境 |
大和氏は、具体的にどのような製品でビジネスを展開しているかについても説明する。モバイルブロードバンド化により、アクセス回線の高速化、オールIP化、固定回線とモバイルの融合(FMC)、そしてアプリケーションの高度化が進んでいる。そのような状況下で、ZTEが何を貢献できるか、顧客(通信事業者)の問題点をどう解決するか、ということについて、大和氏は4つの課題を説明する。
大和氏は、「1つめはイノベーション。先進のテクノロジを開発し、製品を含めて提供し続けること。2つめは収入増加。ここではとくに周波数を有効活用することと、有効活用することで収入増に結びつけること。3つめはOPEX(運用費)やCAPEX(設備投資費)を削減すること。4つめは、通信事業者がただの土管にならず、スマートパイプになる手助けをすること」と説明する。
ZTEではこれらの課題に対して、ZTEが持つ製品のプラットフォームをベースに、「カスタマイゼーション」によって対応するという。
3つのプラットフォーム |
具体的には、ソフトウェア無線技術のプラットフォーム(Software Defined Radio=SDR)、モバイルと固定を統合するプラットフォーム(Universal Packet Platform=UPP)、ネットワーク上でサービスを提供するためのプラットフォーム(Universal Storage and Computing Platform=USCP)の3層のプラットフォームを組み合わせ、顧客に応じてカスタマイズして提供している。
たとえば無線アクセス系の部分については、現在、3GからLTEへの転換が進んでいる。ここにZTEのソフトウェア無線のプラットフォームを使った「UNI RANソリューション」を導入すれば、容易に新しい通信方式へと移行できるだけでなく、一度投資した設備の流用ができるため、コストを抑えることが可能になる。さらに基地局のセル構成を容易にする「C-RANアーキテクチャ」といった技術も準備しているという。
モバイルと固定回線を統合するソリューションも、ZTEは独自開発のものを持っており、ここでもOPEXを軽減できる。さらにZTEではクラウド分野でもR&Dに投資をしており、クラウドセンターを自前で持ち、通信事業者がサービスを提供するときのインフラ構築のサポートが可能になっている。
こうした技術はすでに納入実績もあり、たとえばオーストリアのHutchison 3Gでは、ソフトウェア無線技術を導入することで、UMTS(W-CDMA)からLTEへスムーズに移行できているという。スウェーデンのHi3Gは、FDDとTDDのデュアルモードサービスを商用化しており、香港のCSLは4種類あったネットワークをソフトウェア無線技術で1つのソリューションに統合、CAPEXとOPEXの削減に貢献したという。
まとめ |
最後に大和氏は、日本でのビジネスについて、「日本での展開にはパートナーが必要なので、パートナーを作り、幅広いソリューションを作りたい。そういったところをめざし、体制やいろいろな仕組みを作っている。ZTEの先進テクノロジーや製品を提供することで、お客さまのビジネスが成功するよう、収入やコストに貢献していきたい」と語り講演をしめくくった。
(白根 雅彦)
2012/5/31 09:28