【ワイヤレスジャパン2012】
アジア4カ国のキャリア担当者がパネルディスカッション


アジア4カ国のキャリア担当者によるパネルディスカッションが行われた

 東京ビッグサイトで開催されている無線通信機器の総合展示会「ワイヤレスジャパン2012」では、「アジアの移動通信サービス、現状と将来像」と題し、アジア4カ国のキャリア担当者によるパネルディスカッションが行われた。NTTドコモの辻村清行氏が出席したほか、韓国・KTのキム・ソクジュン氏、インドからはタタ・サービシズの大野弘司氏、ベトナムのVNPT(ベトナム郵政)グループのトラン・ビン・フック氏が出席し、国際電気通信連合(ITU)の無線通信規則委員会(RRB)委員の伊藤泰彦氏がモデレーターを務めた。

 冒頭、モデレーターの伊藤氏が、移動通信の最近の話題として、アジア市場の驚異的な伸びとスマートフォンの普及、データ・トラフィックの爆発、UI・アプリケーションの変化、クラウドの積極的利用という5つを挙げた。それを受けて各国キャリアの担当者が、それぞれの国内市場の現状を解説した。

 タタ・サービシズの大野氏は、インドの携帯電話加入者数が約9億人となり、全人口の70~75%となっていることを紹介。ただし、インドの携帯電話はプリペイド方式であるほか、SIMを複数持っていることも珍しくないため、実際のアクティブユーザーがどのくらいになのかは不明だとした。今後もユーザー数は、3~4億人は伸びていくだろうとしながらも、ユーザー1人あたりの月間通信収入であるARPUが、わずか1.8ドルと低いことなどが課題だと述べた。

 KTのキム氏は、韓国では現在、携帯電話加入者の半分がスマートフォンを使っており、今年末には、全体の4分の3以上がスマートフォンユーザーになるだろうと述べた。その結果、データ通信量が予想をはるかに超える勢いで急増しており、キャリアにはキャパシティーを確保するためのネットワーク戦略が求められていると解説。Wi-Fi、WiMAX、LTEによりオフロードを行っていることを紹介した。

 VNPTグループのトラン氏は、ベトナムには6社のキャリアがあり、上位3社が全体の95%以上を占めていることを紹介。2009年末に3Gが導入されたが、昨年末の時点で加入者は全体の3%程度にとどまっていると述べた。しかし、加入者の伸びはわずかながらも、データ通信量は約1.8倍~2倍に増大しているとした。トラン氏は、データ通信量の増大をWi-Fiのオフロードで解決するとともに、安い端末の導入によりスマートフォンを普及させたいと述べた。

 NTTドコモの辻村氏は、「スマートフォンがLTEを刺激し、LTEがスマートフォンを刺激するという相乗効果が生まれている」と指摘。世界中でLTEが使われるようになるだろうと述べた。また、クラウドを活用するにはLTEが必要だが、増大するデータ通信量はLTEだけではさばききれないため、Wi-Fiによるオフロードなども併用してインテリジェントなネットワークを構築する必要があるとした。

 各担当者からオフロードに関する話が多く出たため、モデレーターの伊藤氏は、各国の周波数不足の状況について質問した。大野氏はインドの状況について、周波数の割り当てが政府高官の意向によりキャンセルされることもあり、「対策のしようがない」ところでもあると述べた。また、韓国・KTのキム氏は、キャパシティーを確保するために、基地局を集中させるなどの対策も行っているが、LTEでは周波数がより必要になるとし、各国のキャリアは新たな周波数を求めていくことになるだろうと述べた。一方、辻村氏は、周波数が足りないと言われてはいるが、需要があれば新しい技術が生まれるようになっているため、過度に反応するものではなく、むしろキャリアはサービスを磨いていくべきだろう、と語った。


モデレーターを務めた国際電気通信連合(ITU)RRB委員 伊藤泰彦氏伊藤氏が挙げた、移動通信における最近の話題
インドのタタ・サービシズ 大野弘司氏インドの携帯電話加入者やARPUなどの推移
韓国の携帯キャリア、KTのキム・ソクジュン氏韓国におけるスマートフォンとデータ通信量の伸び
ベトナムのVNPTグループ トラン・ビン・フック氏ベトナムにおけるデータ通信量の推移と予測
NTTドコモ 辻村清行氏ドコモのLTEサービス「Xi」の展開イメージ

 




(鈴木友博)

2012/5/30 17:57