【WIRELESS JAPAN 2010】
UQ野坂社長「事実上の4G」、WiMAXの魅力をアピール


UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏

 WIRELESS JAPAN 2010で14日、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏による基調講演「成長するWiMAX -モバイルWiMAXサービスが創る豊かな社会-」が行われた。サービス開始1周年を迎えたUQ WiMAXの概要、米国ではWiMAXが「事実上の4G」として認知されている実情などについて解説した。

トラフィックをオフロードさせる必要性高まる

 野坂氏はまず「日本のワイヤレスデータ通信は転換期を迎えている」と現状を分析する。iPadなど新種のデバイスが登場したことにより、携帯電話やPC中心のこれまでと比較してコンテンツのリッチ化が着々と進行。総務省の情報通信審議会では、2017年のトラフィックが2007年と比較して約200倍に達すると予測した。またシスコシステムズでは、2014年の日本における1カ月あたりのトラフィックが342PB(ペタバイト)におよぶと推測しているという。

 これに利用者自体の増加という要因も加わり、3G網のリソース不足がいよいよ本格化しつつあると野坂氏は指摘。トラフィックをWi-Fi経由でいかにFTTHなどの有線サービスへオフロードさせるか、フェムトセルをどう活用するかが課題だと説明する。

 近年、トラフィック急増の大きな要因となっているのがスマートフォンだ。従来の携帯電話と比較して10倍近いトラフィックを生み出しているという統計もあり、回線側の占有率も高くなっている。加えて、動画のHD化、高画素デジタルカメラの普及によって、コンテンツそのものの大容量化も進展した。

 一方、総務省ではブロードバンドを社会発展に役立てようと、“光の道構想”が5月に策定された。FTTH、CATVなどの有線ブロードバンド網を国内全戸へ配備する方向性を示すものだが、最終的にはWiMAXをはじめとした無線系のBWA(Broadband Wireless Access)の普及、それに伴う周波数帯の増強も盛り込まれたという。


急激なトラフィック増加が予測されるスマートフォンやタブレット端末など、新種デバイスの登場もその要因

米国では“WiMAX=4G”の認識が進む

 高速な無線網の整備は、米国でも進みつつある。今年3月に米国連邦議会に提出されたブロードバンド整備計画「Connecting America」では、2015年までに300MHz幅、2020年までに500MHz幅をワイヤレスブロードバンド向けに確保すべきと提言されている。野坂氏は「日本の割り当て議論は30MHz幅とか50MHz幅といった単位なので、その約10倍」「実際の割り当ても3月以降、2度、合計115MHz幅分すでに行われている。米国が世界でもっとも先進的なワイヤレスブロードバンドの実現に向けて動き出していることがわかる」と解説する。

 また、米国でもすでに利用可能なサービスとしては、Clearwire社がWiMAXを全米44都市で提供している。全米第3位の携帯電話事業者であるSprintはこれをMVNOとして提供中で、5月には3GとWiMAXのデュアルモード端末をリリースした。

 Sprintは、この端末によるサービスを“4G”と位置づけている。本来4Gとは、3G(IMT2000)の次世代技術として策定が進む4G、つまりIMT-Advancedのことだが、米国ではWiMAXが単に4Gと認識されているという。

 野坂氏は、WiMAXが事実上の4Gサービスとして受け入れられている最も端的な例だと強調。その将来性の高さは国際的なものだとアピールした。


米国でも大規模なワイヤレスブロードバンド整備計画が進められている米国ではWiMAXが「事実上の4G」として認知されているという

“WiMAX 2”は2011年末以降に登場か

 UQコミュニケーションズが手がけるサービスとしての「UQ WiMAX」は、国際標準であるIEEE 802.16eをベースにしたもの。規格化されている2.3、2.5、3.5GHzいずれの周波数帯もサポートしており、UQ WiMAX対応機器を世界各国で利用できるという利便性は、3Gの携帯電話にないものだと野坂氏は主張する。

 また、MVNO事業者が広く参入しているだけでなく、非PC系機器からのダイレクトなWiMAX接続も想定した「オープンプラットフォーム」を志向。国内携帯電話事業者で一般的な垂直統合型モデルではなく、さまざまな業者の参入を広く呼びかける水平分業型モデルを標榜するのも特徴だ。

 野坂氏は「高速・大容量化は我々UQの生命線。現在も回線効率のチューンアップを着々と進めている」と明かす。具体的には2009年のサービス開始当初、実効スループットは下り15Mbpsだったが、今年3月には20Mbpsに増速。8月には30Mbps化も達成される見込みで、上り通信速度は7.5Mbpsを視野に入れる。通信エリアについても順次拡張、首都圏の主要通勤路線沿線のさらなる充実を事例として挙げている。

 また、通信規格そのものの刷新も計画。IEEE 802.16mの「WiMAX 2」を導入し、最大通信速度下り330Mbps、上り112Mbpsでのサービス提供を目指す。10月開催のデジタル機器展示会「CEATEC」では実証デモを披露する予定で、さらに1年半後の2011年末~2012年初頭をメドにサービス化したいとしている。

 野坂氏は「日本ではWiMAXとLTEどちらが勝つかといった話題になるが、現実にはそういった局面ではない。無線帯域を確保するために、いかに有線へオフロードさせるか、固定とモバイル双方のブロードバンドをどう実現するかが課題。おそらくはLTEとWiMAXをミックスさせたサービスも必要になってくる」と解説。トラフィック急増問題は、LTEとWiMAXのどちらか1つだけでは対処しきれないと展望している。


現在のシステムでも、チューニングを重ねることで速度向上を図っているWiMAX 2の概要


(森田 秀一)

2010/7/15/ 06:00