【Mobile World Congress 2018】

ファーウェイ呉波氏「P20はSIMフリー市場で国内販売」

 25日にバルセロナで「MateBook X Pro」「MediaPad M5」といった新製品を発表したファーウェイ。3月27日には「HUAWEI P20」が発表されることも明らかにされた。それらのデバイスは日本でも発売されるのか。ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏に伺った。

ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏

――今回バルセロナでは「MateBook X Pro」を発表されましたが、日本でのPCの販売の状況はいかがでしょうか。

呉波氏
 これまで2年にわたり日本でPC事業を展開していますが、我々の製品はメインストリームからは少し外れており、主に2in1タイプの製品を提供しています。この2年間は、PC製品を扱う業者さん、販売チャネル、代理店、PCのB2Bの協会などとの関係づくりに力を入れてきました。今回、MateBook X Proを発表し、初めてメインストリームに入ることになります。ぜひともこの製品から日本市場での我々の立ち位置を確立していきたいと考えています。

――日本での発売時期はいつ頃になりそうでしょうか。

呉波氏
 日本は中国以外ではファーストグループに入っており、第2四半期に発売します。発売の前には日本で発表会も行います。具体的な時期については、まだ社内で検討しているところです。

――auでnova2が発売されました。こちらの動向はいかがでしょうか。

呉波氏
 今の販売動向は、我々ファーウェイとauさんの期待を上回っています。具体的にはSIMフリーモデルよりも数が出ています。ただ、iPhoneを超えているかどうかはデータが無いのでお伝えできません(笑)。BCNとかGfKのデータが出てiPhoneと比べてどうだったかと言えるようになると思います。

――P10 liteも好評でしたが、初速はそれを上回るということでしょうか。

呉波氏
 おかげさまでP10 liteは発売から8カ月間経っていますが、通常であれば新しい機種が発売されて6カ月後にはどうしても販売台数が落ちてくるものですが、しかし、P10 liteは8カ月後の今でも増え続けているんです。さらに勢いが増している感じなんです。2018年に入ってから2桁の伸び率になっています。ですから、我々のパートナー企業も今後もP10 liteは継続して売れていくという風に自信を持っています。nova2に関してはauショップのみで販売されていますが、今のところSIMフリーよりも好調なんです。P10 liteよりも好調です。

――nova lite 2についてはいかがでしょう。

呉波氏
 nova lite 2は主にMVNOに取り扱っていただいていますが、振り出しからヒットを飛ばしているような製品になっています。MVNO各社にもnova lite 2に対してご支援をいただいています。nova lite 2は急速に数を伸ばしているというイメージです。

――nova 2、nova lite 2、Mate 10 liteなど、性能的には似通っていますが、うまく売り分けられているのでしょうか。

呉波氏
 お客様のニーズも異なりますし、それに対して異なる製品をもってお応えしているという感じです。価格で見ると、liteシリーズもちょっと違います。nova lite 2は2万円台、P10 liteは3万円台、Mate 10 liteは4万円台と日本のSIMフリー市場で最も売れている価格帯をカバーしています。これまでのGfKとBCNの数字を見ますと、SIMフリー市場で一番売れているのは2万5000円~3万5000円の価格帯です。しかし、2018年には少し変化が生じます。ヒットする価格帯がが2万5000円~4万5000円ぐらいに上がるとみています。なぜかというと、今年のスマートフォンの一番主流となる特徴がフルスクリーンになります。18:9のアスペクト比が主流になるということです。このスペックをもってお客様のニーズを満たすとなると、今年の最も売れる価格帯が2万5000円~4万5000円になると私はみています。ですから、今年からMate 10 lite、nova lite 2、P10 liteでこの価格帯をカバーしようとしています。今言っている価格帯は全体の50%ほどがこれに当たるという主流となる価格帯になります。

――スマートフォンのブランドは認知されてきましたが、PCのブランディングはどうされるのでしょうか。

呉波氏
 スマートフォンとPCは、どちらも電子消費財ではあるのですが、販売チャネルもお客様も大きく異なります。また、日本のPC市場というのは海外と比べてもかなりユニークで大きく2つのことで違います。2つの60%の数字をあげると、日本ではB2BのPCが全体の60%を占めています。そして15インチ以上のものが全体の60%以上を占めています。これはデスクトップを含まずにラップトップと2in1のPCを指しています。日本のPC市場の独特さを説明するために、いつもこの2つの60%の数字を使って社内で説明しています。本社の方から今回14インチの製品を出したのですが、実は我々の願いを聞き入れて、さらにグローバル市場の事情も考えて、そのバランスをとった結果なんです。というのも、海外は全体の60%が15インチ以下のPCになるからです。

――秋葉原にショップ・イン・ショップをオープンされました。これからはスマートフォンもPCもタブレットも、という形で訴求していくのでしょうか。

呉波氏
 おっしゃる通りで、どこかのカテゴリーの製品だけに偏重するということではありません。ただ偏重することはありませんが、スマートフォンとPCだけではありません。ほかにはもちろんタブレットもありますし、OTTボックスもそうですし、今年の下期には日本市場でスマートホームというサービスを展開する予定です。こういったさまざまなカテゴリーがあるのですが、全部総合してブランディング活動を行っていきます。我々が消費者に対して伝えたいのは、ファーウェイは安心できる、さらに革新的で信頼できる製品・サービスをお届けします、というメッセージです。

――そのスマートホームというサービスは、これまでおっしゃってこられたクラウドベースのサービスということでしょうか。

呉波氏
 はい、その通りです。日本市場においても、クラウドサービスを展開する予定があります。

――いわゆるHUAWEI Payを下期に実現するということでしょうか。

呉波氏
 そうですね。これも全部、HUAWEI Payを始めるための準備だと考えていただいて問題ありません。

――今までカスタマーサービスセンターはありましたが、このタイミングで販売ショップを作られた意図は?

呉波氏
 実は日本でこういった店舗を開設するにあたって、唯一考慮すべき事情がROIになります。もし見込まれる販売数量で店舗の採算が取れないのであれば、開設するという意思決定に至ることはありません。例えば、ほかのメーカーさんですと、中国や東南アジアの各国で一気に1万店を開設して、次の年には半分の5000店を閉めてしまいます。そうなると、店員も半分ぐらいがリストラされてしまうということが横行しているので、我々がもし日本で同じようなことをしてしまったら、それは死ぬことに相当します。とくにこれといった理由というのはないのですが、カップルがそろそろ結婚しようかというような、すごく自然な流れでそうなったというような感じです。確かに恋愛期間は長かったと思います(笑)。去年の半ば頃からこの話をし始めました。

――こういった形の店舗は増やしていかれるのでしょうか。

呉波氏
 やはり開設するかどうかはROIで決まるので、一旦店を作ったなら、ずっと継続していきたいと考えています。2~3年後に撤去するというようなことはしません。いつまでに何店舗を開設するというタイムテーブルはとくにありません。

――日本でシェアを伸ばしてきたとはいえ、海外とは異なり、iPhoneが強いなど、攻略しづらい市場だと思いますが、この市場をどう見ているのでしょうか。

呉波氏
 実は弊社の創設者である任(正非)CEOが言った言葉なのですが、もし我々の製品が日本市場のニーズを満たすことができなければ、それは世界のどこに持って行っても通用しない、と。

 私個人の経験から言っても、これまで50以上の国で勤務したことがありますが、日本市場はその中で最も品質、サービス、イノベーションに対して厳しく要求する国なんだという風に思います。我々の目標は日本市場で生き残ることです。まずやることは、日本の消費者のニーズを満たすことであり、これを目標にしています。

 また、日本には技術を持ったたくさん部品のサプライヤーさんがいるので、弊社もこうした日本企業と広く協力関係を結んでいます。弊社のプラットフォームを通して弊社の製品に統合することで世界各国に届けていきます。

――3月27日にHUAWEI P20が発表されるということが明らかにされました。日本市場ではどうなりそうですか?

呉波氏
 日本市場に関してはP10の後継機種として引き続きSIMフリー市場で出していきます。P20は日本の消費者のために非常に革新的な体験をもたらしてくれる製品であると信じています。

――日本ではキャリア向けにはミドルレンジの製品を供給していくということになるのでしょうか。

呉波氏
 そうですね。願わくばそれができるといいと思います。今回、auさんからnova 2が販売されていますが、それを継続していきたいと考えています。

――リチャード・ユーさんは1~2年で世界2位になると言っていました。日本市場はどう伸ばしていかれるのでしょうか。

呉波氏
 日本以外の市場に関しては自分の管轄外なので何とも言えませんが、日本市場についてはお話しできます。日本市場でアップルが特に優れているのは消費者の目線に立って、消費者のニーズをすぐに製品に反映するところです。弊社が2011年にODMからOEMにシフトして、その時から消費者のニーズを第一に、消費者を中心に考えるということが企業文化になっています。日本のSIMフリー市場に参入してから、毎日部下たちが集めたVoC(Voice of Customer)を必ず読むようにしています。

 例えば、一昨日、PC、タブレットを発表しましたが、すでに日本のインターネット上で「ここが良かった」「ここはこうしてほしかった」という声があがっています。ちょうどそれをまとめて本社にフィードバックしたところです。ある消費者が言うには「M5は非常に良いんだけど、イヤホンジャックが無いのが残念だ」と。こういった意見を私の方で一度整理して、本社の関係部署に送っています。こういう声を聞き入れて次の製品に反映させていきたいと考えています。

 特に日本市場に関しては、他社を追い抜くということではなく、よく見られるケースとして、自分に打ち負かされてしまうケースが多かったのだと思います。日本市場に関して言うと、生き残るという目標も今後ゆらぐことなくずっと持っていくことになります。一番早く消費者の声に応えて、ちゃんと消費者のニーズを満足させるということ心がけていきます。

――MediaPad M5は日本でも販売の予定はありますか?

呉波氏
 発売します。時期は今年の第2四半期になると思います。技適の認証を取らなければいけないので、その頃になります。

――MediaPad M5 Proも出るのでしょうか? MateBook X Proも認証が必要だと思いますが、それでもファーストグループとして間に合うのでしょうか? 日本語キーボードも出されるのでしょうか?

呉波氏
 まず日本語のキーボードに関してですが、前から何とかしようと思って日本の企業と話をしているところです。今回のMediaPad M5 Proに関しては、日本の企業に権利を与えて、キーボードのケースを作ってもらう、そういった可能性もあります。お客様のニーズを満たすことは大事ですが、すべてのことをファーウェイがやる必要はありません。日本のいろんなパートナー企業と力を合わせて解決することもできます。MediaPad M5 Proはキーボードもペンもついていますので、日本の量販店の販路で販売する予定があります。日本語のキーボードに関しては何とかしないといけないと思っていますので、今、解決策を探っているところです。

 MateBook X Proのキーボードについては、今この場でお答えできません。

――ありがとうございました。