【Mobile World Congress 2014】

クアルコム、Wi-Fiの周波数帯をLTEに応用した通信技術

 クアルコムのブースには、SnapdragonやGobiをはじめとする、同社のチップセット、モデムのほか、Mobile World Congressというイベントの性質に合わせ、最新の通信技術も多数展示されていた。ここでは、その中から注目しておきたい技術を紹介していく。

 通常、キャリアの提供する通信サービスは、国から認可を受けた帯域を活用している。電波は有限で、どこがどの帯域を利用するかは、管理しなければならないからだ。一方で、Wi-Fiのように、許認可なしで個人が設置できる帯域もある。「LTE in Unlisenced Band」は、そのWi-Fiの周波数帯をLTEに応用したもの。クアルコムのブースでは5GHz帯にLTEを使い、パブリックな場所で他のWi-Fiに干渉しないように利用するデモが行われていた。

ライセンス不要の周波数帯域を使ってLTEのサービスを行う技術が展示されていた

 小型の基地局を設置し、バックホールをキャリアの設備につなぐことで、通常のマイクロセルと同じように振る舞えるのが特徴。Wi-Fiとは異なり、キャリアが1つのネットワークとして扱え、無線部分の容量を増やすことが可能だ。こうした技術をクアルコムは、LTEのRelease13で標準化するために活動していく。キャリアにとっては、ネットワークの運用がしやすいというメリットがあるという。

 LTE関連では、「LTE Direct」という技術も紹介されていた。LTE Directは、端末同士が基地局を介さず、P2Pで直接通信を行う仕組みのこと。500メートル程度離れた端末同士が通信できる。展示では、お店に近づいたユーザーに、嗜好に合わせたクーポンを配信するといった具体例が公開されていた。こちらについては、年末を目処に、Release12で標準化される見込みだという。クアルコムはドイツキャリアのT-Mobileと共同で、フィールドテストを進めフィードバックを受けていく方針だ。

LTEで端末同士が直接通信を行う「LTE Direct」。似た発想の「Wi-Fi Direct」より、多数の端末同士で通信を行える

 離れた2つの帯域のLTEを組み合わせ、通信の速度や容量を上げる「キャリアアグリゲーション」に関するデモも行われていた。クアルコムの「Gobi 9x35」を使い、20MHzを2波、合計40MHzにしており、デモ環境では下り300Mbpsが出ていた。

「Gobi 9x35」でキャリアアグリゲーションを行い、最大300Mbpsを実現

端末のベースを作り、メーカーの手間を省く「QRD」

 新興国に向けた取り組みとして展示されていたのが、クアルコム・リファレンス・デザイン(QRD)。これは、クアルコムが同社のチップを採用した端末のベースを作り、メーカーがカスタマイズして(またはほぼそのままの形で)出荷するという仕組みのこと。OSにはAndroidが採用されているが、Mobile World Congressでは、Windows Phone版も登場することがマイクロソフトによって明らかにされた。このQRDに対し、クアルコムは世界の主要なキャリアの情報をあらかじめ書き込み、開発の手間をさらに下げたという。

キャリアごとのパラメーターをあらかじめ書き込んでおくことで、メーカーの手間をさらに削減した

QNXを活用した、車載機器向け「Snapdragon 602A」

 ほかにも、Snapdragonの活用事例として、車載機器向けの「Snapdragon 602A」などが展示されていた。会場では、車に取り付けたカメラから入力された情報をSnpadragonで解析し、リアルタイムで方向を指示するデモが行われていた。また、BlackBerry社傘下のOS「QNX」を活用した、車載システムも同社ブースに展示。スピードメーターなどがデジタル化されていることに加え、ナビやエンターテインメント用のシステムもQNXで作られていた。クアルコムによると、この展示、Snapdragon上でQNXを活用し、車載システムを開発できることを示したものだという。

道路を解析し、リアルタイムで左のディスプレイに曲がり道などの情報を表示。右のディスプレイも同じSnapdragon上で動いているが、こちらは後部座席に設置するエンターテインメント用となる
SnapdragonとQNXを活用して開発した、車載システム
音楽再生などが行えるほか、スマートフォンとも連携

石野 純也