【COMPUTEX TAIPEI 2014】

クアルコムが語る「Snapdragon」のロードマップ、4Kタブレット試作機も

 クアルコムは、6月3日に開幕した「COMPUTEX TAIPEI 2014」に合わせ、4日にイベントを開催。同社のチップセットであるSnapdragonシリーズや、QRD(クアルコム・リファレンス・デザイン)の最新動向を解説した。

クアルコムのマーク・シェッド氏とデビット・トクナガ氏
Snapdragonは、スマートフォンやタブレットを中心に、幅広い端末に採用されている
Snapdragonのロードマップ
「Snapdragon 805」のスペック

 Snapdragonシリーズは現在、ハイエンド機種で「Snapdragon 801」が採用されている。日本では、2014年夏モデルの多くでこれが搭載されている。このハイエンド向けチップの後継として控えているのが、「Snapdragon 805」だ。CPUのパワーを上げ、クアッドコア、2.7GHzの「Krait 450」を採用。「メモリを刷新した」(クアルコム マーケティング ディレクター マーク・シェッド氏)というように、帯域幅を大幅に増やし、25.6GB/sの転送レートを実現した。

 GPUには、「Adreno 420」を採用。「4Kのディスプレイを搭載した端末が動作するのはもちろん、HDMIを介して4Kのテレビに同時に映像を出力することもできる」(同)という高い性能を誇る。

「Snapdragon 808/810」の特徴

 その先には、「Snapdragon 810」や「Snapdragon 808」の投入を計画している。Snapdragon 810はシェッド氏が「新しいコンフィギュレーション」と述べているように、CPUを刷新。64bitに対応し、「big.LITTLE」技術を取り入れている。big.LITTLEとは、省電力なCPUと、パフォーマンスに優れたCPUを組み合わせて利用する仕組みのことで、この世代から大きくSnapdragonが変わることになる。

 Snadpragon 808は、Snapdragon 810に特徴は似ているが、「810が4Kのスクリーンをサポートするのに対し、808は2.5Kのディスプレをサポートする」と、ややパフォーマンスが落とされている。

 一方で、CPUの64bit化については、エントリーモデルの「Snapdragon 410」が先行する。ミッドレンジの「Snapdragon 610/615」も、64bit化に対応する。このチップセットのCPUは「クアッドコア、オクタコアの両方をサポートする」(同)といい、後者は中国市場を意識して採用されたという。中国ではオクタコアがトレンドになっているが、シェッド氏によると性能に大きな差はないようだ。同氏は「マーケティングのため」と述べ、コア数によって端末が選ばれる市場動向に対応したことを明かした。

クアルコム初の64bit CPUを搭載する「Snapdragon 410」
「Snapdragon 610/615」は、オクタコアCPUを搭載することも可能となる

 ハイエンドの「Snapdragon 800シリーズ」からではなく、「Snapdragon 410」や「Snapdragon 610/615」から64bit化が行われるのは、「アップルがiPhone 5sを64bitでローンチし、マーケットが急速にそちらの方向に変わったため」(同)だという。こうしたトレンドを踏まえるために、先行してミッドレンジのモデルから64bit化に切り替えたようだ。

QRDを活用すると、開発だけでなく、各国の認証やキャリアの互換性テストなどもクリアした状態となり、出荷をスムーズに行える。ただし、当然メーカーごとの差別化要素は少なくなるため、価格が最重要視される新興国向けのソリューションだ

 こうしたチップセットを使って、クアルコムは「QRD」と呼ばれるリファレンスモデルを開発している。外観やソフトウェアを簡単にカスタマイズして、OEMが迅速に市場に出荷することを目的としており、主に新興国に安価なスマホを投入するために利用されている。QRDについては、「Snapdragon 200/400/600のプロダクトがある」(プロダクトマネージメント シニアディレクター デビッド・トクナガ氏)といい、中国市場でメジャーなデュアルSIM、マルチSIMにも対応している。

デュアルSIMや、トリプルSIMといった、マルチSIMにも対応する。国境を越えることの多い陸続きの国で人気のある機能
各国、各キャリアの設定をワンタッチで適用する「Global Pass」という機能も提供する
Androidと同じハードウェアで、Windows Phoneも開発できるようになった

 QRDは、もともとAndroid向けとして開発されたが、2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress」でのマイクロソフトの発表を受け、Windows Phoneにも拡大。「同じハードウェアでAndroidとWindowsの両方が動くため、同じ値段でどちらかを選んで出荷できるようになった」と状況が変わっているようだ。

4Kディスプレイのタブレット試作機

 クアルコムのイベントでは、「Snapdragon 805」を使った、グラフィックスやカメラ機能のデモも行われていた。ここには、ジャパンディスプレイの4Kディスプレイを搭載したタブレットの試作機も展示されており、同チップセットで滑らかな映像が出力され、それをスムーズに動かせることを確認できた。

「Snpadragon 805」のグラフィックスやカメラの性能を示すデモが行われていた
4Kのディスプレイを搭載した試作機。接写しても、ドットがほとんど見えない

 このほか、IoT(インターネット・オブ・シングス=モノのインターネット)に関する取り組みとして、「AllJoyn」を出展。これは、スマートフォンや家電などがP2Pで通信して、互いに情報を通知しあう技術のことで、Linux Foundationが「AllSeenアライアンス」という団体を設立している。クアルコムのイベント会場では、冷蔵庫のドアが開きっぱなしになっているときにタブレットに通知されるデモが行われていた。また、電源プラグに挿したデバイスを経由してスマートフォンで扇風機の電源を制御することもできた。

家電がネットワークで相互に通信して連携する「AllJoyn」のデモ

石野 純也