【Mobile World Congress 2013】
Mobile World Congressで、NFC Experienceを体験した
(2013/3/1 12:28)
「Mobile World Congress 2013」では、「NFC Experience」と題した取り組みが行われていた。会場のフィラ・デ・バルセロナには各所にコーナーが設けられ、スマートフォンを“かざす”行為を体験できるようになっていた。たとえば、会場入り口にあるゲートもNFCに対応。登録時にアプリを有効にしておけば、スマートフォンをかざして入場することが可能となっている。
NFC Experienceは会場だけにとどまらず、バルセロナ市内が地域ぐるみで協力したイベントだ。入場用のパスなどは手持ちの端末がNFCに対応していれば利用できるが、ほかにも来場者の一部にソニーモバイル製の「Xperia T」が配布された。
Xperia Tには会場入場用のアプリに加え、海外版おサイフケータイともいえるモバイルウォレットアプリがインストールされており、会場内や市内の対応店舗で支払いに利用することができる。一部のタクシーも、この方式での決済が可能だ。また、Xperia Tにはクーポンアプリもインストールされていて、店舗でタッチすれば、割引やギフトなどの特典を受けられる仕組みになっている。
筆者も自ら持ち込んだNexus 4や、このXperia TでNFCを試してみたが、実際に使ってみると問題点も見えてきた。入場ゲートに関しては、操作が煩雑だ。アプリを立ち上げ、係員に画面を見せたあとタッチしなければならず、NFCが読み取られたあとにもうワンタップしなければならない。これはAndroid Beamの仕組みを利用しているためで、スムーズな入場を可能にするにはアプリの作り込みが必要だと感じた。
決済についても同様で、日本のおサイフケータイに慣れていると、面倒な操作が多いように思える。Xperia Tにインストールされていたモバイルウォレットアプリは、NFCのカードエミュレーションで動作していない。カードエミュレーションとは、その名のとおり、プラスチックカードのようにNFCが振舞うモードのことだ。そのため、支払いの際には、アプリを起動してから決済モードをオンにする必要が生じる。この方式だと通常のカードの方が手軽で、わざわざスマートフォンで決済をしようとは思えない。
もちろん、文化の違いもあり、海外ではこちらの方が安心感があるのかもしれないが、今あるカードより複雑では、利用したいという動機もなかなか生まれない。
一方で、この問題はアプリの作り方次第で解決することもできる。ドコモのブースには、「PayPass」に対応したiDアプリが展示されていたが、こちらは「カードエミュレーションモードで動いているため、利用の際にアプリを立ち上げる必要はない」(ドコモの解説員)。日本のiDと同様、スマートフォンをかざすだけだ。NFCの普及に関しては、日本で培ったおサイフケータイのノウハウを生かせる余地がまだまだあるのではないか。NFC Experienceを体験してみて、このような印象を強く受けた。