【Mobile World Congress 2013】

Mobile World Congressで、NFC Experienceを体験した

 「Mobile World Congress 2013」では、「NFC Experience」と題した取り組みが行われていた。会場のフィラ・デ・バルセロナには各所にコーナーが設けられ、スマートフォンを“かざす”行為を体験できるようになっていた。たとえば、会場入り口にあるゲートもNFCに対応。登録時にアプリを有効にしておけば、スマートフォンをかざして入場することが可能となっている。

会場入り口のゲートはNFCに対応していた
アプリを開いたままリーダーライターにかざすと、画面をタッチするように促される。これは、Android Beamの仕組みを利用しているためだ
会場にはNFC対応のパネルもあり、タッチすると情報が掲載されたサイトが自動で開く
来場者の一部に配布されたXperia T。日本では、おサイフケータイなどに対応しドコモから「Xperia GX」として発売された

 NFC Experienceは会場だけにとどまらず、バルセロナ市内が地域ぐるみで協力したイベントだ。入場用のパスなどは手持ちの端末がNFCに対応していれば利用できるが、ほかにも来場者の一部にソニーモバイル製の「Xperia T」が配布された。

 Xperia Tには会場入場用のアプリに加え、海外版おサイフケータイともいえるモバイルウォレットアプリがインストールされており、会場内や市内の対応店舗で支払いに利用することができる。一部のタクシーも、この方式での決済が可能だ。また、Xperia Tにはクーポンアプリもインストールされていて、店舗でタッチすれば、割引やギフトなどの特典を受けられる仕組みになっている。

会場内のカフェテリアも、NFCでの支払いに対応していた。実際にコーラを買ってみた
Xperia Tにはクーポンがセットになったアプリもインストールされていた

 筆者も自ら持ち込んだNexus 4や、このXperia TでNFCを試してみたが、実際に使ってみると問題点も見えてきた。入場ゲートに関しては、操作が煩雑だ。アプリを立ち上げ、係員に画面を見せたあとタッチしなければならず、NFCが読み取られたあとにもうワンタップしなければならない。これはAndroid Beamの仕組みを利用しているためで、スムーズな入場を可能にするにはアプリの作り込みが必要だと感じた。

 決済についても同様で、日本のおサイフケータイに慣れていると、面倒な操作が多いように思える。Xperia Tにインストールされていたモバイルウォレットアプリは、NFCのカードエミュレーションで動作していない。カードエミュレーションとは、その名のとおり、プラスチックカードのようにNFCが振舞うモードのことだ。そのため、支払いの際には、アプリを起動してから決済モードをオンにする必要が生じる。この方式だと通常のカードの方が手軽で、わざわざスマートフォンで決済をしようとは思えない。

ウォレットアプリは、利用時にタッチする仕組み。この画面を支払いのたびに表示するのは、少々面倒
カードエミュレーションではないため、端末側でNFCのリーダ・ライター機能をオフにしていても、利用ができなくなる
「PayPass」対応のiDは、端末をかざすだけで決済が完了する

 もちろん、文化の違いもあり、海外ではこちらの方が安心感があるのかもしれないが、今あるカードより複雑では、利用したいという動機もなかなか生まれない。

 一方で、この問題はアプリの作り方次第で解決することもできる。ドコモのブースには、「PayPass」に対応したiDアプリが展示されていたが、こちらは「カードエミュレーションモードで動いているため、利用の際にアプリを立ち上げる必要はない」(ドコモの解説員)。日本のiDと同様、スマートフォンをかざすだけだ。NFCの普及に関しては、日本で培ったおサイフケータイのノウハウを生かせる余地がまだまだあるのではないか。NFC Experienceを体験してみて、このような印象を強く受けた。

石野 純也