石野純也の「スマホとお金」

「POCO F7 Ultra」/Pro」発表、シャオミスマホの新機種ラッシュで違いとコスパを考える

 シャオミが、矢継ぎ早にスマホの新機種を投入しています。2月には、サブブランドとして展開しているオンライン専用モデルのPOCOから、「POCO X7 Pro」が登場。3月には、フラッグシップモデルの「Xiaomi 15 Ultra」の販売が始まっています。同時に発表された「Xiaomi 15」も、4月に発売される予定。ミッドレンジモデルでは、「Redmi Note 14 Pro 5G」も3月に発売されました。

3月27日に、POCO F7シリーズを2機種発表したシャオミ。日本でも発売される

 ここまで挙げただけですでに4機種になりますが、3月27日には、さらに2機種がPOCOブランドで追加されました。それが、「POCO F7 Ultra」と「POCO F7 Pro」の2機種です。

 ここまで加えると、4月までに計6機種。1か月に1機種以上のペースでスマホを発売していることが分かります。では、同社はどのようにそれぞれを差別化しているのでしょうか。カギになるのが、カメラの仕様と販路とそして価格です。

最上位モデルの“Ultra”を追加し、パフォーマンスに階層を設けたPOCO F7シリーズ

 まずは、発表直後のPOCOから見ていきましょう。

 「POCO F7 Ultra」はPOCOとして初のUltraがつく最上位モデル。チップセットにはSnapdragon 8 Eliteを搭載していながら、価格は12GB(メモリ)、256GB(ストレージ)を内蔵した最小構成モデルが9万9980円と10万円をわずかながら下回っています。 この処理能力を持つスマホとしては、国内最安 。よりメモリとストレージを積んだ16GB/512GB版でも10万9800円です。

Xiaomi 15や15 Ultraと同じSnapdragon 8 Eliteを搭載する「POCO F7 Ultra」

 Ultraより1つ下のグレードになる「POCO F7 Pro」は、さらに価格が抑えられています。こちらのチップセットはSnapdragon 8 Gen 3と昨年発売されたフラッグシップモデル相当の処理能力ですが、12GB/256GBの最小構成が6万9980円で販売されます。上位構成の12GB/512GBに関しては7万9980円。型落ちのチップセットではありますが、 昨年発売されたフラッグシップモデルよりも大幅に安い価格 が設定されています。

チップセットは型落ちのSnapdragon 8 Gen 3を採用した「POCO F7 Pro」。Ultraより処理能力は落ちるが、昨年のハイエンドモデル並みには高性能だ

 2月に発売されたPOCO X7 Proは、POCOの中でのミッドレンジモデル。こちらは、チップセットにメディアテックの「Dimensity 8400-Ultra」を搭載しており、最小構成の8GB/256GBモデルは4万9980円と5万円を下回る価格が設定されています。上位構成の12GB/512GBモデルでも5万9980円です。

2月に発売されたミドルレンジモデルのPOCO X7 Pro

 価格を並べてみると分かりやすいかもしれませんが、もっとも安いPOCO X7 Proの4万9980円から、もっとも高い「POCO F7 Ultra」の10万9800円まで、きれいなグラデーションがかかっています。予算とにらめっこしながら、必要な処理能力やストレージ容量を選択していけばいいので、選びやすいラインナップと言えるかもしれません。シャオミは25年からPOCOの本格展開を表明しており、ラインナップが一気に拡充した格好です。

POCOは、XiaomiやRedmiとは別軸のサブブランドで、ハイエンドモデルからエントリーモデルまで幅広く展開している
25年に発売されたPOCOの価格。POCO X7 Proの最小構成から、スペックに応じて段階的に値段が上がっているのが分かる

フラッグシップモデルも出そろった25年のシャオミ、POCOとの住み分けは?

 一方で、シャオミが展開しているのはPOCOだけではありません。

 2025年は、フラッグシップモデルの「Xiaomi 15」やその上位モデルにあたる「Xiaomi 15 Ultra」もオープンマーケットモデルとして展開します。2機種は、いずれもSnapdragon 8 Eliteを搭載したハイエンドモデル。2機種の差別化はカメラで図られており、「Xiaomi 15 Ultra」はまるでデジカメのような見た目や、グリップ、シャッタキーを備えたPhotography Kitを装着できるのも特徴です。

 これに対し、「Xiaomi 15」は処理能力は高めなものの、サイズ感はディスプレイが6.36インチ、横幅が71.2mmと比較的コンパクト。ただし、カメラについてはメインの広角カメラのセンサーが「Light Fusion 900」となっており、1インチセンサーを搭載した「Xiaomi 15 Ultra」より性能は抑えられています。Light Fusion 900は昨年発売された「Xiaomi 14T Pro」にも搭載されていたイメージセンサー。その意味では、処理能力の底上げを中心にした機種と言えるかもしれません。

よりデジカメ的な見た目になったXiaomi 15 Ultra(手前)と、コンパクトなハイエンドモデルとして展開されるXiaomi 15(奥)

 価格は、「Xiaomi 15」の12GB/256GBが12万3000円。上位構成となる12GB/512GBが13万8000円と、同じくSnapdragon 8 Eliteを搭載する「POCO F7 Ultra」よりもやや高めに設定されています。

 また、同社のスマホの最上位モデルとなる「Xiaomi 15 Ultra」は、16GB/512GBモデルが17万9800円、16GB/1TBモデルが19万9800円と、「Xiaomi 15」よりもさらに上の価格に設定されています。

 同じSnapdragon 8 Eliteを搭載するハイエンドモデル3機種ですが、Xiaomi 15シリーズ内ではカメラやディスプレイ、メモリー&ストレージ容量で差別化が図られています。「Xiaomi 15 Ultra」は、「Xiaomi 15」の上位構成よりも4万1800円高くなる一方で、カメラの画質が優れていたり、メモリーが多かったりすることでその価値を出しているというわけです。4月15日までの期間限定特典として1万9980円のPhotography Kitがついている点も、お得感があります。

Xiaomi 15シリーズの価格設定は、POCOより一段高くなっていることが分かる

 また、「Xiaomi 15」とそれより一段価格が低い「POCO F7 Ultra」も、主にカメラで差別化が図られています。

 「POCO F7 Ultra」はメインの広角カメラは5000万画素で、センサーにはLight Fusion 800を採用しています。センサーサイズは「Xiaomi 15」のLight Fusion 900に比べるとやや小さく、超広角カメラも3200万画素。3つのカメラを5000万画素でそろえ、かつライカと絵作りを共同で行っている「Xiaomi 15」と比べると、やや劣る面があります。

Xiaomi 15は、センサーサイズが「POCO F7 Ultra」より大きく、ライカとの共同開発も行われている。こうした点が、価格に反映されている格好だ

オンライン特化でコストを削減したPOCO、ミドルレンジでもRedmiと差別化

 さらに、POCOは冒頭で述べたように、 オンライン専用モデルに位置づけられており、家電量販店などの実店舗では入手できません

 日本では、埼玉県のイオンモール浦和美園にオープンしたXiaomi StoreでPOCOシリーズのスマホも販売しているものの、現時点では1店舗のみ。積極的な広告宣伝もしていないため、知る人ぞ知る存在になっています。

イオンモール浦和美園にオープンしたXiaomi Storeでは、POCOも販売されていた。実店舗に置かれるのは、かなりレアケースだという

 こうして流通コストを削減し、価格に反映しているのもPOCOの特徴。Snapdragon 8 Eliteを搭載しつつ、10万円を下回る価格を打ち出せているのは、そのためです。 ザックリ言えば、Xiaomi 15からカメラのグレードをやや落としながら、オンラインに特化することでコストパフォーマンスを高めている と言えるでしょう。ライカ画質を求めず、実機を見ずに買える勇気があれば、そのぶんだけ安くなると言えるかもしれません。

 ミッドレンジモデルも同様です、先に挙げた「POCO X7 Pro」はチップセットがDimensity 8400-Ultraでしたが、3月に発売された「Redmi Note 14 Pro 5G」はそれよりも処理能力で劣る「Dimensity 7300-Ultra」を搭載し、価格は4万5980円からとなっています。

 「POCO X7 Pro」が4万9980円からだったことを踏まえると、わずか5000円差でチップセットの能力が上がることになります。また、「POCO X7 Pro」のメモリとストレージは「LPDDR5X」と「UFS 4.0」で、より高速になっています。

パフォーマンスではPOCOに及ばないRedmi Note 14 Pro 5Gだが、カメラで差別化が図られているほか、価格も5000円安い13.jpg

 では、「Redmi Note 14 Pro 5G」に価値がないかいうと、必ずしもそうではありません。こちらは、メインの広角カメラが2億画素になっておえり、センサーサイズも1/1.4インチと比較的大き目。この価格帯のミッドレンジモデルとしては、かなり高性能なカメラを搭載していると言えるでしょう。16の画素を1つに束ねるピクセルビニングをすることで、ピクセルピッチも2.24μmまで大きくなり、画質に期待できます。

 また、「Xiaomi 15」や「Xiaomi 15 Pro」と同様、「Redmi Note 14 Pro 5G」もXiaomi Storeだけでなく、家電量販店などの一般的な店舗で販売されています。その意味では、POCOより入手しやすいと言えるでしょう。店舗での販売があれば、事前に試すこともできる点にも軍配が上がります。ミッドレンジモデルでも、やはりPOCOは上級者向け。そのぶんだけ、価格が抑えられているのは魅力と言えます。

 怒涛の勢いで新モデルを投入しているシャオミですが、2025年に発売された新機種はいずれもオープンマーケット向けとなり、おサイフケータイなどの国内向けカスタマイズは施されていません。

 こうした機能を求めるユーザーは、昨年発売された「Xiaomi 14T」シリーズまでさかのぼる必要があります。2025年に入り、バリエーションを大幅に増やしているシャオミですが、逆にキャリアモデルは品数を絞っている印象も受けます。

おサイフケータイ対応モデルは、Xiaomi 14TやXiaomi 14T Proが最後。25年に投入した新機種は、いずれもグローバル仕様だった

 同社によると、キャリアモデルの投入を断念したわけではないようですが、発売および発表された6機種がいずれもオープンマーケットモデルで、グローバル仕様に近いのも事実。1機種でボリュームを稼ぐよりも、グローバルと共通モデルを多数投入して全体で売上げを高める方向に戦略をシフトしつつあることは間違いなさそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya

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