石野純也の「スマホとお金」
ワイモバイルが料金プラン「シンプル2 M」を再改定、その経緯と内容を紐解く
2025年1月16日 00:00
24年10月にドコモのahamoがデータ容量を30GBに増量し、大手キャリアがこれに追随。サブブランドやオンライン専用ブランドを中心に、中容量プランの“30GB化”が進みました。一方で、少々中途半端な対抗策しか打ち出せず、短期間で料金プランを再改定することを余儀なくされたキャリアもあります。ソフトバンクのワイモバイルです。
同社は、当初、データ増量オプションのデータ容量を拡大することで「シンプル2 M」を30GB化していましたが、12月にこの内容を改めることを発表。1月からは、料金プランに紐づくデータ容量そのものが30GBに増量されています。また、2月からは、「PayPayカード ゴールド」との連携も強化されます。その経緯と中身を見ていきましょう。
2カ月で廃止になったデータ増量オプションの増量
まずは、経緯を振り返っていきましょう。ワイモバイルは、24年11月1日に「データ増量オプション」の仕様を改め、シンプル2 Mとの組み合わせで30GBのデータ容量を実現していました。裏を返すと、シンプル2 Mのデータ容量そのものは、20GBのままだったというわけです。データ増量オプションは、550円で5GBを増やすオプションでしたが、これを10GBにすることで合計のデータ容量を30GBにした格好です。
金額はそのまま。シンプル2 Mの料金は4015円、データ増量オプションは550円なので、合計すると4565円になり、ahamoの2970円を大きく上回ってしまいます。これは、ワイモバイルのシンプル2が、家族割引や光回線とのセット割を前提にした料金プランになっているためです。シンプル2 Mは、「家族割引サービス」で1100円、「おうち割 光セット(A)」で1650円の割引を受けることができ、どちらか一方が適用される仕組み。
さらに、支払いをPayPayカードにしている場合、「PayPayカード割」で187円が割り引かれます。この割引を最大まで適用した場合の料金は2728円。2970円のahamoより安い金額で30GB利用できるようになっていました。また、データ増量オプションは7か月目まで料金がかからないため、期間限定ながら、料金は2178円まで下がっていました。
ただし、ahamoとの比較だと音声通話の料金に差があります。ahamoは2970円に5分間の音声通話定額が含まれているのに対し、ワイモバイルのシンプル2は通話料が従量制。通話委定額を利用するには、月額880円の「だれとでも定額+」に入る必要があります。ahamoより無料で通話できる分数は長いものの、料金も各種割引適用後で3608円まで上がってしまいました。
また、データ増量オプションが10GBになるのは、このオプションを初めて利用したユーザーに限定されていました。さらに、増量されていたデータ容量のうち、5GBは容量超過時にデータ容量を追加する手続きが必要など、仕組みとして手間もかかっていました。ahamoへの対抗措置ではあるものの、十分対抗できていたかには疑問符もつきます。
料金値下げに慎重だったソフトバンク、1月にはついにデータ容量を改定
背景には、ソフトバンクが料金値下げに慎重だったことがあります。同社の宮川潤一社長は、24年11月の決算説明会で「行き過ぎた値下げは中長期の目線でみると、本当にいいのかなとちょっと疑問を感じている。少し抵抗してみたいと思ったが、1社でも動きがあると対抗せざるを得ない」と語っています。データ増量オプションでの対抗は、そんな気持ちの表れだったと言えるかもしれません。料金プランにソフトバンクの“迷い”が出ていたことがうかがえます。
こうした事情もあり、24年12月には、この仕組みを再度改定することが発表されます。データ増量オプションではなく、料金プランそのものを30GBにするというのがそれで、1月からは先行キャンペーンという形でシンプル2 Mとシンプル2 Lのデータ容量が増量されています。正式な料金プランの改定は、今春になる見込みです。
これに伴い、シンプル2 Mやシンプル2 Lで10GBになっていたデータ増量オプションは5GBに戻されています。12月まで、シンプル2 Mを“30GB化”するためにデータ増量オプションを契約していたユーザーは、注意が必要。そのままだと35GBになり、よりデータ通信を多く使うことはできますが、8カ月目以降、料金が550円上がってしまいます。30GBで十分という人は、解約の手続きを忘れないようにしておきましょう。
料金プランに紐づくデータ容量を30GBにしたことで、シンプル2 Mの競争力は強化されました。データ増量オプションぶんの料金が不要になったにも関わらず、データ容量が30GBに増量されたからです。先に挙げたとおり、シンプル2 Mの料金は各種割引適用後で2178円。30GBの中容量プランとしては、破格の安さと言える料金です。ここに、10分までの通話が無料になる国内通話10分かけ放題を足しても料金は3058円で、ahamoよりは高めですが、金額差は小さくなります。
間接的なメリットとして、店頭などのPOPで30GBプランとうたいやすくなったこともありそうです。料金が据え置きのままデータ容量が上がっているため、基本的にはユーザーにデメリットのない料金改定で評価することができます。
また、1つの上のシンプル2 Lはデータ容量が35GBで、だれとでも定額+もセットになりました。容量が上がり、通話定額が含まれたにも関わらず、料金は各種割引適用後で3278円のまま。シンプル2 Mとだれとでも定額+を合わせたときより、220円高いだけで、データ容量が5GB増える形になります。シンプル2 MとLの2つで他社に対抗する構えを取っていると言えるでしょう。
ただし、1つだけ落とし穴もあります。上記のように、1月時点ではまだこのデータ容量増量が先行キャンペーンという位置づけだからです。そのため、現状ではあくまでユーザー自身で10GBを追加する手続きが必要になります。20GBを超えると、いったんは通信速度に制限がかかってしまう点には注意が必要と言えるでしょう。
正式なプラン改定までは落とし穴も、固定回線なしには少々厳しい
料金プラン発表時の注釈を見ると、シンプル2 Mは、20GBを超えた場合、30GBまで1Mbpsに速度が制限されると記載されています。30GB超過時は2段階目の通信速度制限がかかり、128Kbpsまで速度が低下。この仕組み自体は、元々のシンプル2 Mから変わっていません。先行キャンペーンとして後付けでデータ容量を増やしているだけのため、現状では、この制限がそのまま適用されてしまいます。
つまり、料金プラン改定までは、通信速度制限を解除するために追加の10GBが付与される形になるというわけです。料金プランの表記は30GBになっていますが、現状ではあくまで20GB+10GBに分かれていると言えるでしょう。また、30GBを超えるといきなり128Kbpsの制限がかかってしまう点も、少々使い勝手が悪い部分です。こうしたデメリットが解消されるのは、今春予定されている料金プランの正式改定を待たなければなりません。
また、2178円で30GBという料金は、そもそも各種割引適用後の料金。この割引には、先に挙げたおうち割 光セット(A)も含まれています。自宅に固定回線やSoftBank Airなどの固定代替サービスが必要なため、世帯で支払う隠れた料金があるのは見逃せないポイント。割引なしで30GB、2970円のahamoや、3278円のUQ mobileと比べると、条件によっては割高になることもあります。
他社の固定回線を使っていたり、マンションで一括契約しているためほかの固定回線を入れられなかったり、そもそも固定回線を必要としていないケースなどでは、料金が割高になってしまうおそれもあるということです。このようなときには、家族で契約することをお勧めします。先に挙げたようにワイモバイルは、家族割引サービスでも割引を受けることが可能。割引額はおうち割 光セット(A)より550円安い1100円に下がってしまいますが、それでも十分な割引額と言えるでしょう。
こちらとPayPayカード割を適用した場合、シンプル2 Mの料金は2728円になります。音声通話定額こそありませんが、金額だけはahamoに肉薄している格好。店舗を利用できるほか、Yahoo!プレミアムが無料になる点などを加味すれば、十分魅力的な料金と言えそうです。単独で契約するならLINEMO、家族で契約できたり固定回線があるならワイモバイルと、状況に応じてブランドを使い分けるといいでしょう。
また、2月から、PayPayカード ゴールドでワイモバイルの料金を支払ったときの還元が、これまでの3%から10%に上がります。各種割引適用後の料金に対し1000円ごとに100ポイントのため、シンプル2 Mでは200ポイントがもらえる格好。ポイントはPayPayでそのまま支払いに利用したり、料金の支払いに充当できます。あくまでゴールドカード限定ですが、実質価格が1978円になるのは魅力。オンライン専用プランと比べると、こうした還元施策もワイモバイルを契約するメリットと言えそうです。