石野純也の「スマホとお金」
ワイモバイルが残価設定型のスマホ販売方式を導入、「新トクするサポート(A)」はどこまでおトク?
2025年1月23日 00:00
残価設定型の割賦販売が一般的になったスマホですが、どちらかと言えばメインブランド中心の話。サブブランドやMVNOが取り扱う端末は、元々の価格が安いこともあり、一括での販売や単純な分割払いが多い印象です。一方で、物価高や為替の影響を受け、ミッドレンジの端末も徐々に値上がりしています。
このような中、ソフトバンクのサブブランドで同社の主力にもなっているワイモバイルが、ついに残価設定型の販売方式を導入しました。その名も、「新トクするサポート(A)」です。では、ワイモバイルならではなのはどういった部分でしょうか。先に導入しているソフトバンクとの比較を通じて、その特徴や同社がこれを始める狙いを読み解いていきます。
2年での下取りで実質半額に
ワイモバイルは、1月発売のフリップ型スマホ「nubia Flip 2」に合わせる形で新トクするサポート(A)を発表しました。名称に“新”がついていることから、既存の仕組みをリニューアルしたかのようにも見えますが、ワイモバイルがこれを導入するのは初めてのこと。サービス名称はメインブランドのソフトバンクとそろえています。
中身も基本はソフトバンクと同じ。端末の代金を48回に分割し、支払いの途中で端末を返却すると、半分にあたる24回が免除されるというものです。48回中24回の支払いが免除されるので、ざっくり言えば2年間端末を使い、端末を下取りに出せば実質的な価格は半額になるということになります。
ただし、支払額が単純な48分割になる端末は少なく、厳密に言えば免除される金額が半額になるとは限りません。むしろ、前半24回が安くなっている端末の方が一般的。後半の支払いが大きければ大きいほど免除される金額も上がるため、反対に実質価格は下がります。48分割という形を取っていますが、後半24回分は他社の残価に近いものととらえれば理解しやすいでしょう。
制度変更のたびに販売方法を改定してきたソフトバンクには、現在、複数の新トクするサポートがあり、端末ごとに適用されるものが異なります。価格が10万円台前半で、売れ筋の端末には1年で端末を下取りに出せる「新トクするサポート(プレミアム)」が用意されている一方で、従来通り、2年での下取りを前提にした「新トクするサポート(スタンダード)」もあります。
ワイモバイルが導入した新トクするサポート(A)の仕組みは、後者と同じ。基本的には48回割賦のうち、24回分が免除されるものになります。導入直後ということもあり、まずは1種類でスタートするようです。また、ソフトバンクとは異なり、10万円を超えるハイエンド端末の取り扱いは少ないため、1年で下取りして実質価格を抑える必要性は薄かったと言えるでしょう。
一括価格の安い機種も残る、ミッドレンジはトクサポだとさらにお手頃に
一方で、すべての端末が新トクするサポート(A)の対象になるわけではありません。従来通り、一括販売もしくは単純な24回などの分割払いで購入できる端末も残されています。通信料金の安いワイモバイルには、ユーザー層に合わせた格安のエントリーモデルも多いためです。2万円程度の端末であれば、元々の支払額が安く、残価を設定してまで実質価格を抑えるメリットがほとんどありません。
先に挙げたnubia Flip 2と同じ日に発表された、「nubia S 5G」はそんな一括販売の端末。本体価格は2万1996円で、5G対応ながら格安です。しかも新規契約やMNPでワイモバイルを契約し、かつ「シンプル2 M」や「シンプル2 L」を選択すると、2万1995円の割引が適用され、代金は1円まで下がります。一括価格が1円なら、そもそも割賦を組む必要すらありません(笑)。
nubia S 5G以外でも、比較的新しいものだとOPPOの「OPPO A3 5G」やモトローラの「moto g64y 5G」といった端末が同様の本体価格で販売されています。割引額も同じで、いずれも一括1円まで下がります。金額は同じなので、ユーザーは好みの1台を選択すればOK。契約したついでに事実上“もらえる”端末には、新トクするサポート(A)は適用されないというわけです。
逆に、それ以上の価格の端末は多少安くても、新トクするサポート(A)の対象になります。例えば、ワイモバイル初の「らくらくスマートフォン」として導入された「らくらくスマートフォンa」は、新規もしくはMNPの場合、1回目から24回目までの支払い額が45円。25回目から48回目までは375円に設定されており、24か月目までに端末を下取りに出せばこれが免除され、実質価格は「45円×24回」の1080円になります。
本体価格は割引適用後で1万80円になるため、上記のような一括1円の端末よりは割高。そのぶん、残価設定型の新トクするサポート(A)で実質価格が抑えられているというわけです。元々リーズナブルな端末が多いため、残価にあたる25回目から48回目の支払額がそこまで高くないのも新トクするサポート(A)の特徴と言っていいでしょう。
前半24回と後半24回の差が大きな機種も、一部iPhoneは実質24円に
結果として、仮に2年ちょうどで下取りに出すのを忘れてしまったり、もっと使いたいということであえて下取りに出さなかったときでも、負担感は少なくなります。うっかりで支払額が上がってしまわない点では、“トラップ”が少なく、ユーザーにとっても使いやすいプログラムと言えそうです。
ただし、中には前半24回と後半24回の差が大きく、きっちり2年で下取りに出さないと思わぬ出費になってしまう端末も存在します。例えば、先に挙げたnubia Flip 2はその1つ。後半24回の支払額が毎月1850円に設定されており、前半24回ぶんよりも1000円以上高くなります。
同様に、Androidでは「Pixel 8a」も前半と後半の差額が大きな端末と言えます。こちらは、前半24回目までの支払額が330円なのに対し、後半24回は1620円になっており、25回目から48回目までの比重がより高くなっています。この傾向がより顕著なのがiPhone。一例を挙げると、ワイモバイルで販売される「iPhone 14」は、1回目から24回目までが1円なのに対し、後半24回は3329円に設定されています。
免除される金額は、トータルで7万9896円にものぼります。これは、iPhoneのリセールバリューが高いからこそ。Androidで同様のことをしようとすると、中古店の買取額を超えてしまう可能性が高く、ここまで大胆な残価設定はできません。逆に言えば、そのぶん返却を忘れた際に急に支払額が上がってしまうリスクは高くなるため、注意が必要です。
また、iPhoneもより新しい「iPhone 15」だと、前半24回が2162円なのに対し、後半24回は1654円となっており、免除される金額よりも支払う金額の方が高くなります。Androidでも、シャープの「AQUOS wish4」は、前半24回が230円で、後半24回の190円よりも高くなっています。
端末価格の上昇に伴って導入された新トクするサポート(A)ですが、トラップにさえ気をつければ、むしろ端末を買い替えやすくなります。特にiPhoneやミドルレンジのAndroidスマホを気軽に購入できるのはユーザーにとってのメリットと言えるでしょう。一括1円に加え、“月額1円”もワイモバイルの新たな武器になりそうです。