石野純也の「スマホとお金」
「povo」の「1GB/180日」「120GB/365日」「300GB/365日」は”新料金プラン”級のインパクト、その特徴とは
2024年8月29日 00:00
2021年9月にサービスを開始したpovo2.0は、トッピングを売りに独自性の高い通信サービスとしてユーザーの支持を集めてきました。まるでプレーンなピザの上に好きなトッピングを乗せられるかのように、 料金プランをユーザー自身がカスタマイズできるのが同ブランド最大の特徴 。ポストペイ型が多い通信サービスの中に、プリペイド型のスタイルをミックスしたことで、かゆいところに手が届くサービスを実現しました。
季節ごとのイベントに合わせ期間限定トッピングや、コンテンツや店舗で購入できる商品とデータ容量をセットにしたコラボトッピングも数多く投入してきました。
一方で、サービスの“顔”でもある定番トッピングの顔ぶれは、あまり変わっていませんでした。そのラインナップが24年度に入り、徐々に多様化しています。ここでは、そんな新定番トッピングを解説するとともに、その狙いを読み解いていきます。
3GBと20GBの間を埋める「120GB(365日)」、月あたりの料金は10GBで1800円
8月14日に、KDDIはpovo2.0に新たな定番トッピングを追加しました。
これらは「いつものトッピング」と呼ばれるジャンルのトッピングで、恒常的に提供されるものです。実際、いつものトッピングに含まれる「3GB(30日間)」(990円)や、「20GB(30日間)」(2700円)などのトッピングについては、サービス開始と同時にスタートしており、現在も同じように提供が続けられています。
競争環境に応じてデータ容量や料金が変わることはありそうですが、少なくともの期間限定トッピングのように、数週間や数カ月単位で変わるものではなく、年単位で提供されるトッピングと理解しておけばいいでしょう。8月14日に加わったトッピングは、以下の3つになります。
1つ目が「120GB(365日間)」(2万1600円)、2つ目が「300GB(365日間)」(2万4800円)、最後が「1GB(180日間)」(1260円)です。
1つ目の「120GB(365日)」は1万円越えでスマホの料金としては高く見えますが、これは 1年間ぶんの料金を先払いする ような仕組み。12で割ると、1カ月あたり10GBで1800円になります。
オンライン専用ブランドとして登場したpovo2.0は、当初から他社に近い水準の「20GB(30日間)」(2700円)がラインナップされていました。一方で、その下は「3GB(30日間)」(990円)になり、容量が一気に少なくなります。1年分まとめての表記だと容量も価格も大きく見えてしまいますが、30日間に当てはめると、 ちょうど20GBと3GBの間を埋めるトッピング であることが分かります。
あくまで1カ月換算ですが、1800円という価格も割安と言えるでしょう。
競合として思い浮かぶのが、ソフトバンクのLINEMO。同社は7月に「LINEMOベストプラン」を導入しましたが、このプランで3GBを超えたときの料金が10GBまで2090円で、「10GB以下最安」をうたっています。
月額課金される料金プランとは少々位置づけが異なっているものの、1年分の料金を先払いする代わりに、10GBを安く使えるのが「120GB(365日間)」トッピングと言えそうです。“最安”の称号を約半月で奪い去っていった格好です。
長期トッピングは縛りにもなりうる、データ使用量の凸凹にも注意
ただし、月額いくらの料金体系ではなく、先払いでトッピングの料金を支払ってしまう仕組みにはデメリットもあります。 まとめ買いは、裏返すと“縛り”にもなってしまう からです。2万1600円も支払ったのに、途中で解約する人は少ないはず。月額料金の一般的な料金プランより、解約のハードルは高めと言えるでしょう。よく言えばまとめ買い、悪く言えば1年縛りというわけです。
いくらKDDIのネットワークに定評があっても、電波は水物。期間や場所によって、通信がうまくできないということもありえます。自宅に電波が届きづらいというケースもあるでしょう。こうした 失敗を避けるためには、購入前に30日間トッピングでエリアや通信速度を試す など、お試し期間を経てから、このトッピングにアップグレードするといいでしょう。こうした柔軟な使い方ができるのも、povo2.0の魅力です。
もう1つの注意点が、1カ月あたりの容量はあくまで平均値であるということです。
実際にこのトッピングを購入すると、120GBがまとめて付与されるため、極端な話、1日で使い切ってしまうことも可能。データ容量に余裕があるように見えて、ついつい動画を見すぎてしまい、半年ぐらいしか持たなかったという失敗も考えられます。データ量は目に見えないだけに、毎月コンスタントに使うよう、何らかの対策はした方がいいでしょう。
例えば、 Androidには指定したデータ量を超過した際に通信を止められる仕組み があります。ストップではなく、警告を出すことも可能。この機能を使って、8GBあたりで注意を出すようにしておくなど、データ使用量を可視化するための管理はしておくようにしましょう。 iPhoneには同様の機能がないため、定期的にアプリをチェックするなどして、容量を確認しておく必要があります 。
一方で、これは利点にもなります。
月末で10GBを少し超えてしまいそうな場合には、翌月分と見なしていたデータ容量を前借りする形で利用できるからです。今月は8GB、翌月は12GBという形で、月によって異なるデータ使用量を吸収することが可能なのも、まとめ買いの特徴。「繰り越し」を実装しているキャリアやMVNOもありますが、自身でそれができるというわけです。その意味では、柔軟性のある料金プランと言えそうです。
楽天モバイル対抗にもなりうる「300GB(365日間)」トッピング、回線維持用も
このようなメリット、デメリットは、「300GB(365日間)」トッピングも同じ。 こちらは1カ月あたり25GBになり、料金は2067円 になります。povo2.0では、先に挙げたように20GB(30日間)が2700円で提供されていますが、これと比べても安くて大容量。まとめ買いで縛られるぶん、1カ月ごとにトッピングを買い足していくよりも安くなるということです。
先ほど同じLINEMOとの比較では、「LINEMOベストプランV」がこれに近いと言えるでしょう。ただし、このプランは20GBまでが2970円。この時点で、「300GB(365日間)」の方が、使える容量が多く、かつ安い価格で提供されています。
同様に、楽天モバイルとの比較だと、こちらは20GBまでが2178円。「最強家族プログラム」で家族と契約すると、2068円まで料金は下がりますが、povo2.0の「300GB(365日間)」の方が1円だけ安くなります。
1年まとめ買いのデメリットは存在するものの、料金の安さに定評のある他社と比べてもなお優位性があると言えそうです。
ちなみに、povo2.0は4月に“楽天モバイル対抗”を(カラーリングで)全面に打ち出した「データ使い放題(7日間)12回分」と「300GB(90日間)」を追加しています。詳細は以前、本連載で解説したため割愛しますが、「300GB(365日間)」の月25GBでは足りないという場合には、こちらを選択するのも手もあります。
このように見ていくと、povo2.0はトッピングを生かしつつ、柔軟に他社対抗を打ち出していることが分かります。楽天モバイルのように自動的に料金が変動する仕組みはないものの、ユーザー自身が選択するトッピング次第では、同水準の料金を実現できていると言えるでしょう。トッピングを都度購入する仕組みがやや玄人向けですが、安価にKDDI回線を使いたい人にはうってつけです。
なお、以前の連載で「データ使い放題(7日間)12回分」を取り上げた際には、実質的にプラス1日、データ使い放題が適用されると記載していましたが、この仕様は9月17日購入分から改定され、きっちり24時間が測定されるようになります。暫定仕様がついに撤廃された格好ですが、購入日翌日いっぱいまで使い放題になるのは9月16日までという点には注意が必要です。
これら2つの新規定番トッピングとは異なり、3つ目の 「1GB(180日間)」はバックアップのための回線維持用 という色合いが濃いトッピングです。povo2.0は、180日以上トッピング購入がない場合、順次回線が停止され、その後、自動的に解約になります。一方で、トッピングを足すことでいざという時だけピンチヒッター的に使えるのもpovo2.0の魅力です。
この期間はトッピングの有効期間終了後からカウントされます。そのため、「1GB(180日間)」をつけておけば、 1年に近い間、回線契約を維持することが可能 。金額的には期間限定トッピングを180日間に1回買う方が安上がりですが、その手間を省けるというわけです。「1GB(180日)」の登場で、バックアップ回線としての使い勝手も増したと言えるでしょう。
期間限定のトッピングを矢継ぎ早に追加していることもあり、スルーしてしまっていた人もいそうですが、8月に加わった 3つの定番トッピングは、一般的なキャリアやMVNOの新料金プランに匹敵するインパクト があります。定番トッピングのラインナップが増えたことで、サービスの魅力がより高まったことは間違いありません。