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イオンモバイルが「既存ユーザー最優先」に取り組む理由とは――ユーザーの「よくわからない」を解消し満足度向上へ

 イオンリテールは4日、MVNOサービス「イオンモバイル」で、既存ユーザーに展開しているサポートサービス「スマホメンテナンス」に料金プラン見直し提案のメニューの追加と、「シェアプラン」で回線別に上限データ容量を設定できる機能の追加を発表した。

 料金プラン見直し提案のメニューは4日から、上限データ容量の設定機能は2024年2月から利用できる。

 料金プラン見直し提案では、多くの場合「これまでのデータ容量よりも少ない容量」に見直しを行うことになるほか、上限データ容量の設定機能は、これまでの契約容量を変えずに利用しやすく改善する機能となり、ユーザーあたりの利用単価を上げることにつながらない取り組みとなる。今回の取り組みにはどのような狙いがあるのか。

同じ「乗り換えない」ユーザーでも異なる理由

MMD研究所の吉本 浩司氏

 説明会の冒頭では、MMD研究所の吉本 浩司氏から、昨今のモバイル業界における情勢が説明された。

 総務省のワーキンググループでは、携帯電話料金プランの競争促進への取り組みとして、乗り換えの円滑化や公平や競争環境の促進などが進められている。

 「乗り換えの円滑化」というキーワードを吉本氏は挙げ、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクのメインプランについて「シェアがほとんど変わっていない、寡占状態になっている」と指摘。

 その一方で、ahamoやLINEMOなどの新料金プランの契約数は増加しており、「低価格プランへの移行が進んでいる」事実もまたあると説明した。

 まとめると、ここ数年で「本ブランド」から「サブブランド/新料金プラン」への移行がしっかり進んでいる状況にある。

 新料金プランへの乗り換えが進む一方で、「本ブランド」を契約するユーザーの約半数が「新料金プランへの乗り換え意向がなかったり、状況をよくわかっていなかったり」するユーザーだという。

 MMD研究所では、乗り換えに関する調査も実施しており、たとえば古くから本ブランドを利用しているユーザーは、あまり乗り換え経験が無いが、新料金プランを利用するユーザーの多くは乗り換え経験があるという結果が出ている。

 また、「本ブランドのユーザー」と「それ以外のユーザー」で、乗り換え意向がない理由を調査すると、「それ以外のユーザー」では現状のプランで満足している「他社の料金プランが魅力的でない」という理由がトップとなった一方で、「本ブランドのユーザー」は「手続きが面倒だから」という回答が過半数以上となった。

 吉本氏は、この「手続きが面倒そう」という理由には、「新しい端末への設定移行」と「データの移行」、「(料金に対する)調べるべき情報が多い」の3点を挙げ、店舗での契約が多いこの「本ブランドのユーザー」が乗り換えの障壁となっていることをいかに解消させるかが、「乗り換えの円滑化加速」のヒントになるのではないかとした。

「イオンモバイルにして良かった」と思ってもらえる施策を

イオンリテール イオンモバイル商品マネージャーの井原 龍二氏

 イオンリテール イオンモバイル商品マネージャーの井原 龍二氏からは、ユーザーに「イオンモバイルにして良かった」と思ってもらいたいとし「商人が作った通信プラン」という文言を掲げ、ユーザー目線の料金プランやサービスを展開してきたとコメント。

第三者機関の調査でも顧客満足度1位となったほか、契約回線数も2023年度は純増見込み、解約率も9月末時点で1.5%、最新のデータで1.4%となっているなど、既存ユーザーの満足度が高いとアピール。

 また、近年では「大容量を家族でシェアする」利用方法が増えてきているほか、これまでの60歳以上の高齢ユーザーが多いのもイオンモバイルの特徴とした。

 井原氏は、イオンモバイルの取り組みについて「利用中のユーザーの機能改善を最優先に取り組んでいる」とし、既存ユーザーが利用できるイオングループとの取り組みを強化してきたとした。

スマホメンテナンスで料金の見直し提案

 今回のサポートサービス「スマホメンテナンス」自体は、2022年10月から本格的にサービスを開始してきたといい、これまで4600人以上のユーザーが利用しているという。そのなかでも多くが60歳以上のユーザーで、「トラブルの解消ではなく、定期的なメンテナンスによりトラブルの発生を未然に防ぐ、トラブルのない環境を提供するのが目的」と井原氏は意義を説明する。

 たとえば、スマートフォンが遅くなったというトラブルを紐解いてみると、アプリがミスタップなどで意図せずにダウンロードされてしまっていたり、その削除方法がわからなかったりするユーザーがいるという。モバイルリテラシーの高いユーザーであれば、短時間で解消できるこういったトラブルを、実店舗のスタッフと共に解消に導くことで、「使用できなくなる」という事態を未然に防ぐことができるという。

 このほか、「スマートフォンの機種変更タイミングがわからない」といったユーザーには、機種変更を勧めるといったことや、料金プランに関する相談も、これまでも受けていたとしている。今回の取り組みでは、この料金プランに関する相談をより充実したツールで受け付け、最適なプランへの見直しを促すものだという。

 井原氏は、これまでのイオンモバイルユーザーの例として「なるべくデータ容量を使わないようにしているユーザーが、契約容量をすごく余らせているケースが多い」とする一方、「これまで節約していたが、多少容量を増やしても月額料金が大きく上がることがないので、多く使うようになった」というケースもあるとし、料金プランの見直しは“三者三様”であるようだ。

 また、今回は「音声通話のかけ放題サービス」の見直しも提案できるツールが用意されている。

 ユーザーが実際に利用している過去の通話状況から、「かけ放題なし」と「5分かけ放題」「10分かけ放題」「制限なしのかけ放題」を契約した場合の電話料金合計を比較することで、ユーザーが目で見て納得して料金プランを見直せるようにされている。

 無論、月によって通話の状況は変わっていくため、定期的な見直しができるよう、過去の相談履歴も残せるようにするという。

DMなどで告知

 高齢者が多いイオンモバイルでは、スマホメンテナンスに来てもらえるような取り組みを実施している。

 イオンモールなど、イオンのショッピングセンターに併設されていることが多いイオンモバイルのカウンターでは、生活動線であるが故に気軽に訪れてもらえるような環境ではある(スマホメンテナンス事態は、予約なしでも利用可能)とする一方、定期的にダイレクトメールなどでユーザーに直接案内をかけているという。

 説明会後に、実際のイオンモバイル店頭で相談しているユーザーも、「ダイレクトメールから予約して訪れた」といい、一定の効果が出ているようだ。このユーザーは、実際に「スマートフォンの容量が足りなくなってきた」という相談事であり、イオンモバイルのスタッフからは「余計なアプリの削除」や「microSDカードへのデータ移行」を勧める光景が見られた。

 スタッフからは、「イオンモールのアプリを入れよう」や「microSDカードを買ってくれ」などの提案はなく、ユーザーが購入したカードで後日データ移行を行う流れで今回のサポートは終了したようだ。

スタッフが資料やタブレットでわかりやすくユーザーに案内する

 井原氏によると、イオンモバイルのカウンターでは、イオンモバイル以外にもドコモやKDDI、ソフトバンクなどの代理店としても営業しており、熟練のスタッフが揃っているとのこと。

「安くないと意味が無い」

 今回のサービスの意義について、井原氏は「サービスを長く利用してもらうためには、常によかったと思われることが重要。『安くしたいから』という目的で契約してもらっているので、安くしないと意味が無い」とし、これに合致したサービスを提供していく姿勢だとした。

 実際に、料金プランを定期的に見直しているユーザーが、長期間契約していることが多いとし、長期的なユーザー確保に向けての取り組みであることをあらためて示した。

シェアプランの個別容量制限

 今回の説明会では、24年2月開始のシェアプラン契約回線について、回線ごとに月間データ容量に制限をかけられる機能の提供についても触れられた。

 たとえば、家族の誰かがデータ容量を多く使い、ほかのユーザーが利用できるデータ容量が少なくなっている状態であれば、多く使っているユーザーのデータ容量の使用を制限することで、料金プランを変えずにほかの家族のデータ通信容量を確保できる。

 この機能について井原氏は「ユーザーからの声が多かった」とし、ユーザーの声を受けて提供するサービスであるとした。

 シェアプランに関して井原氏は「シェアプランで20GBを契約し、家族利用するユーザーが多い」とし、大容量のシェアプランへのニーズが高くなってきていると感じているという。

まだまだ認知が進んでいない課題感

 井原氏は、携帯電話の料金プラン全般についても、認知に課題感を感じているとコメント。

 イオンモバイル自体では、高齢ユーザーやモバイルリテラシーが低いユーザーに向けての取り組みを進めている一方、井原氏は携帯会社の乗り換えについて、未だに電話番号が変わることに抵抗を持っているユーザーが一定数いるとコメント。

 手続きに抵抗を持つユーザーなどに向けても、もはや“当たり前”だと思っている制度やサービスについても、認知が進むだけで乗り換え市場が活性化できるのではと井原氏は指摘している。