石野純也の「スマホとお金」
ドコモが「eximo」でdカードのポイント還元を改定へ、携帯各社の“クレカ割”をあらためてチェック
2023年12月21日 00:00
NTTドコモは、2024年1月からスマホなどの携帯料金に対するポイント付与の条件を改めます。
大きく変わるのが、dカード GOLDの扱い。元々はこれらのクレカを“契約”さえしていれば付与率が上がっていましたが、 1月利用分から、クレカでの“支払い”も必要 になります。他社と条件をそろえた格好ですが、このように、スマホなどの料金と各社が展開するクレカは、以前よりも密接に結びつくようになってきました。
料金とクレカの連動は、元々、いわゆるメインブランド中心の施策でしたが、2023年にはUQ mobileやワイモバイルといったサブブランドにも広がりはじめています。
ポイント付与に加え、直接的な料金割引にもなっているだけに、クレカの所有もお得にスマホを使う上で必須になりつつあると言えるでしょう。ここでは、ドコモの条件変更を改めて解説するとともに、他社の状況も確認していきます。
ドコモがポイント付与条件を変更し、他社と横並びに
ドコモはこれまで、通信料1000円につき10ポイントのdポイントを付与していました。ただし、これは一般的なユーザーの話。dカード GOLDを保有していた場合、その特典が10倍の10%になります。
たとえば、同社のeximoの場合、割引前の料金は7315円。税抜きで6650円になります。この6650円に対して、600ポイントが付与されるというのが現行のdカード GOLD特典です。なお、irumoは1%まで還元率が下がります。
dカードの種類 | |
dカード GOLD | 10% |
dカード(レギュラー) | 1% |
dカード無し | 1% |
ちなみに、これはeximoに対して付与されるポイントで、 ドコモ光やhome 5G、ドコモでんきといった各種サービスを利用していると、さらにポイント付与額は多くなります 。dカード GOLDの年会費は1万1000円ですが、ドコモ回線やドコモのサービスをヘビーに使っているユーザーであれば、ポイント還元だけも元が取れる可能性があります。
これに対し、通常のdカードは、dカードなしと同じ1%でお得感はありません。レギュラーのdカードは年会費が無料なため、あまり後述する割引以外の特典は少ない印象です。
12月分までは、このdカード GOLD特典がつく条件が“保有”になっていました。
つまり、dカード GOLDさえ作っていれば、別のクレカで料金を支払っていても、10%のポイント還元を受けられるということです。この条件が1月に見直され、dカード GOLDでの支払いが必須になります。単にカードを保有しているだけだと、ポイント還元率はカードなしと同じ1%まで下がってしまうため、注意が必要です。レギュラーのdカードは、元々1%還元のため、条件は変わりません。
ただ、 支払いを条件にしたポイント還元は、ドコモ以外のキャリアでは当たり前 のようになっています。
au PAYカードを展開するKDDIも、「au PAYゴールドカード」で10%のPontaポイント還元を受けるには、料金の支払いが必要。ソフトバンクも、「PayPayカード ゴールド」で通信料などに10%の還元を行っていますが、そのカードで支払った料金が還元の対象になっています。保有だけで還元率が上がっていたドコモが、他社に比べてやや緩かったと言えるでしょう。
料金の支払いに対してポイントがつくのは、“キャリアクレカ”の分かりやすいお得感ですが、特典はそれだけではありません。最近では、通信料金の値引きも一般的になりつつあります。ドコモの「dカードお支払割」や、KDDIの「au PAYカードお支払い割」、ソフトバンクの「PayPayカード割」がそれです。
元々はドコモやauで導入されていた割引ですが、最近ではソフトバンクやサブブランドにも広がりを見せています。
メインブランドで節約するならクレカ割がマスト、レギュラーカードは持つべきか
ドコモの「dカードお支払割」
まず、クレカ割の先駆けとなった「dカードお支払割」ですが、現行の料金プランでは、eximoとirumoに導入されています。オンライン専用プランのahamoは非対象。これは、シンプルさを重視するため、割引を廃した料金設計になっているからでしょう。「dカードお支払割」は、その名のとおり、dカードやdカード GOLDでスマホの通信料を支払った際に受けられる割引。 割引額はeximo、irumoともに187円 です。
割引額はわずかではありますが、1年積み重なるとその金額は2244円にものぼります。クレカは、年会費が1万1000円のdカード GOLDに加え、年会費無料のレギュラーdカードも対象。後者の場合、発行の手間や支払先変更の手間はあるものの、基本的に、金銭的な負担が増えるわけではないため、 eximoやirumoを契約する際には作っておいた方がいいクレカ と言えます。
なお、ahamoも割引こそありませんが、dカードやdカード GOLDと連携する特典が用意されています。それが、「dカードボーナスパケット特典」です。この特典は、レギュラーdカードの場合は1GB、dカード GOLDの場合は5GBのデータ容量が追加になるというもの。ahamoは20GBプランですが、前者であれば21GB、後者であれば25GBになるというわけです。ポイントではなく、データ容量に対する優遇があるという仕組みは、デジタルネイティブ世代を狙ったahamoならではと言えるかもしれません。
au PAYカードお支払い割
同様に、KDDIのauにも、「au PAYカードお支払い割」が用意されています。こちらも金額に関してはドコモと同額で187円の割引。
現行の料金プランは、データ容量無制限の「使い放題MAX」や、段階制の「スマホミニプラン」がこの割引に対応しています。
ちなみに、スマホミニプランの前身となる「ピタットプラン」では、2年契約の「2年契約N」かau PAYお支払い割の選択制でした。この選択肢がなくなり、スマホミニプランではau PAYお支払い割一択になった格好です。
継続契約期間は、“縛り”とも言われ、総務省からも問題視されてきた経緯があります。ただし、2年契約Nも解除料は法令の範囲内で、その金額は1100円と小さくなっていました。
一方で、2年契約Nは2022年3月31日に新規受付を終了。割引自体は続いていましたが、スマホミニプランの登場に伴い、姿を消した格好です。データ使用量が2GB以下の場合、スマホミニプランの料金はピタットプランと変わりませんが、au PAYカードがないとそのぶんだけ割高になってしまう点には注意が必要と言えるでしょう。
クレカ割にはソフトバンクやサブブランドも追随、契約促進や手数料削減が狙いか
これまで同様の割引がなかったソフトバンクも、PayPayの連結子会社化に伴う形でクレカ割を開始しています。「PayPayカード割」がそれです。
割引額は完全に横並びの187円。導入されたのは現行の料金プランである「ペイトク」から。
前身となる「メリハリ無制限」にはない割引でしたが、ペイトクに伴って新設された「メリハリ無制限+」にはPayPayカード割が設定され、そのぶんだけ割引適用前の料金が上がっています。「+」は料金がプラスって意味だったのでしょうか……。
また、ほぼ同時期に改定されたワイモバイルの料金プランでも、「シンプル2」からPayPayカード割が設定されています。こちらも、PayPayカード割のぶんだけ、割引適用前の料金が上がっています。
UQでも「au PAYカードお支払い割」
サブブランドにもカード割を適用する動きはソフトバンクだけでなく、KDDIも同じ。UQ mobileでは、6月に導入された「トクトクプラン」「ミニミニプラン」にau PAYカードお支払い割が設定されました。
ただし、UQ mobileの場合、10分間の音声通話定額と20GBのデータ容量がセットになった「コミコミプラン」は、au PAYカードお支払い割の対象外です。コミコミプランは、ahamo対抗の色合いが濃く、シンプルさを売りにしています。先に述べたようにahamoにもdカードお支払い割が設定されていないため、これにならったと見ていいでしょう。同様に、LINEMOやpovo2.0などのオンライン専用ブランドにも、クレカ割はありません。
携帯各社が金融・決済に注力
このように、メインブランドやサブブランドで一般的になったポイント還元やクレカ割ですが、背景にはキャリア各社が金融・決済事業に注力していることがあります。
料金に対してポイントを付与したり、直接割引をしたりすることで、クレカの契約を促進しているというわけです。クレカは、毎月の支払いがあるスマホと相性がいいだけに、各社ともクレカの発行数を伸ばしています。
また、割引が提供できるのは、自社クレカで手数料を節約できるという側面もありそうです。他社クレカの場合、ある程度の手数料がコストとして発生してしまう一方で、自社や自社グループ発行の場合、それを抑えられるようになります。こうして減らしたぶんのコストを、ある程度、料金に還元しているという見方もできます。ともあれ、いずれのキャリアもレギュラーカードであれば年会費は原則無料。メインブランドやサブブランドを契約するのであれば、加入しておいて損はなさそうです。