石野純也の「スマホとお金」
auの新料金「スマホミニプラン」は、どんな人におすすめ? 既存の「ピタットプラン」と比べて検証する
2023年1月12日 00:00
KDDIは、2月1日に「スマホミニプラン 5G/4G」を導入します。これは、データ利用料が少ないユーザーのための料金プラン。これまでは、同種のプランとして展開していた「ピタットプラン 5G/4G」を置き換えるかたちになり、同プランの新規申し込みは1月31日で終了します。
あくまで別プランとして用意されているため、既存のピタットプランがそのまま置き換えられてしまうわけではありませんが、契約を変更するかどうかはユーザー次第です。
ただ、スマホミニプランは、上限が4GB。各種割引適用前の価格は最大で6215円と、少々割高感があります。また、「家族割プラス」も2人契約で550円、3人以上で1100円だった割引が、それぞれ220円、550円に下がっています。使えるデータ容量の最大値が下がりつつ、値段的にもピタットプランのユーザーが乗り換える必然性は薄いような印象です。
では、スマホミニプランはどんなユーザー向けなのでしょうか。駆け込みでピタットプランを契約する必要性があるかどうかも、合わせて検証しました。
同じ段階制プランながら、上限や割引が異なるスマホミニプラン
2月1日から導入されるスマホミニプランは、1GB刻みで金額が上がっていく段階制の料金プランです。各種割引適用前の金額は、1GBまでが3465円、1GB超2GBまでが4565円、2GB超3GBまでが5665円、3GB超4GBまでが6215円です。
上記のように、家族割プラスが適用されるほか、「auスマートバリュー」や「au PAYカードお支払い割」の対象にもなり、フル適用の場合の金額は2178円、3278円、4378円、4928円です。4GBを超えてしまうと、通信速度が300Kbpsに制限されます。
3GBを超えた場合は4928円ですが、これは、ピタットプランの4GB超7GB以下の金額と同じ。ピタットプランの素の価格は6765円とスマホミニプランより割高ですが、家族割プラスが3人以上で1100円と大きいため、割引適用後の金額が並ぶというわけです。
スマホミニプランは4GBまでの料金体系になっていることもあり、少なくとも毎月のデータ使用量が4GBから7GBに収まっているユーザーには、プラン変更するメリットがありません。使えるデータ容量が減り、金額は変わらないからです。
1GB以下に収まっていた超低容量のユーザーは、新旧どちらの料金プランでも金額は同じです。割引適用前の金額はどちらも3465円。各種割引を全部乗せした際の金額も、2178円になります。
au回線を維持しておきつつ、メールなどのデータ量が小さなサービスをたまに使うだけといった目的の場合、新旧どちらのプランでもいいと言えるでしょう。ただし、割引の仕組みが少々異なるため、結果として最終的な料金が変わってくる可能性はあります。
現状のピタットプランは、3人以上でauを契約するだけで料金が2178円まで下がります。1GB以下の場合、auスマートバリューは非対応のため、固定回線の契約の有無は問いません。
これに対し、スマホミニプランは家族3人で契約しつつ、さらにauスマートバリューを適用しなければ2178円にはなりません。家族割プラスが最大550円になった影響が、ここに出ている格好です。
どちらかと言えば、家族で契約するより、固定回線を引く方がハードルは高め。その意味では、データ使用量の少ないユーザーも、ピタットプランに入れるうちに入っておいた方がいいと言えそうです。
すでにauひかりなどの固定回線を引いている人で、毎月のデータ使用量が1GB以下に収まっている場合で、かつ家族3人以上で契約できるようであれば、ピタットプランとスマホミニプラン、どちらを選んでも金額は変わりません。あわてて1月中にピタットプランに変更する必要はないことになります。
逆に、固定回線を引いている一方で家族がauでまとまっていない場合には、スマホミニプラン化することで金額が安くなるケースもあります。
たとえば、家族割プラス非適用でauスマートバリューが適用されている人は、ピタットプランが3465円なのに対し、スマホミニプランは2915円になります。家族割プラスの有無によっては、プラン変更してしまった方がいいこともある点は覚えておきましょう。
2GB超えや家族割プラス適用のユーザーはピタットプランを維持すべし
では、1GB超はどうでしょうか。ピタットプランは、1GBを超えると料金が5115円に上がり、4GBまでこの金額が続きます。各種割引をフル適用すると、料金は3278円まで下がります。
これに対し、スマホミニプランは2GBまでが4565円(割引後は3278円)、3GBまでが5665円(同4378円)、4GBまでが6215円(同4928円)と細かく分かれています。まず、割引非適用の場合、1GB超2GBまでならピタットプランよりスマホミニプランの方が割安になります。
そのため、家族にau回線を契約しているユーザーがいなかったり、auスマートバリューを組めなかったりするようであれば、2月1日を待ってスマホミニプランに変更した方がいいでしょう。
割引フル適用時はどちらを選んでもOK。2GBまでは、ピタットプランもスマホミニプランも料金は変わらないからです。ただし、1GB以下のときと同様、どの割引が適用されるかで金額は変わってきます。
家族割プラスだけが適用される場合、ピタットプランの方がお得。これに対し、auスマートバリューまで含めると2GBまでの金額は並びます。
条件次第で金額が変わってしまうため、一概には言えませんが、2GB以下で割引が適用できない場合はスマホミニプラン、家族割プラスだけが適用されるならピタットプラン、割引フル適用の場合はどちらを選んでもOKと言えるでしょう。少なくとも、単身でかつ2GB以下の場合は、スマホミニプランの方が優遇されている格好です。
ただ、2GBを超えると、スマホミニプランがとたんに割高になります。“素の料金”がピタットプランの1GB超4GB以下の金額である5115円を超え、割引適用後の金額も上がってしまうからです。
こうした点を踏まえると、スマホミニプランは2GB以下の利用者の一部にお得になる新料金というような評価ができます。また、3GBを超えると、データ通信が使い放題になる「使い放題MAX 5G/4G」も視野に入ってきます。同プランは、素の価格が7238円。割引フル適用で4928円まで料金が下がります。
割引適用前で1023円、割引適用後ならわずか550円の違いしかなく、これならデータ容量の残りを気にしなくて済む使い放題MAXの方が断然オススメ。その意味で、スマホミニプランのターゲットは実質的に3GBまでのユーザーがターゲットと言えるでしょう。ピタットプランよりも、小容量の方向に振りつつ、使い放題MAXに誘導していく意味合いがより強くなった格好です。
auブランドにこだわりつつ、2GBから7GBの範囲に収まっている既存のユーザーは、ピタットプランを維持するのが得策と言えます。
新旧段階制プランをグラフで比較、サブブランドやMVNOも要検討
ここまでの話を、グラフにまとめてみました。まずは割引適用前の料金。実際には、折れ線グラフのような形でデータ使用量に比例して徐々に金額が上がっていくわけではないので、ここでは容量ごとにつけられた「○」の高低を比べてみてください。
上記のとおり、2GBまではスマホミニプランの方が安いか、同額であることが分かります。一方で、2GBを超えると料金は逆転します。3GBを少し超えるようなユーザーの場合は、ピタットプランの方がいいことがこのグラフからも読み取れます。
次に、家族割プラスとauスマートバリュー、au PAYカードお支払い割をすべて適用した場合をグラフ化してみました。こうすると、ピタットプランの安さが一目瞭然になります。
2GBまでは同額ですが、データ使用量がそれ以上になると、料金的にはピタットプランに軍配が上がります。特に、2GB超から4GBまでの金額が3278円とリーズナブル。毎月のデータ使用量がこのぐらいに収まり、かつau回線がどうしても必要なときには、1月中にピタットプランを契約するといいでしょう。
既存ユーザーは、無理にプラン変更すると料金が上がってしまうので注意が必要です。
もう1つ、割引適用前と割引フル適用の中間にあたる、auスマートバリューのみ非適用の場合をグラフ化してみました。
auスマートバリューは適用される固定回線の範囲が広いのが特徴ですが、住んでいる場所や住宅事情によっては、どうしても対象回線を契約できないこともあります。モバイルはauを使いつつも、固定回線だけはNTTやnuroといった組み合わせになっているケースは決してレアとは言えないでしょう。そんな想定での料金比較です。
この場合、1GB超2GB以下で金額が並ぶものの、ほかはすべての容量帯でピタットプランの方がお得になります。家族割プラスの金額が大きいぶん、どうしてもピタットプランが有利になるというわけです。
このように比較していくと、ピタットプランからスマホミニプランへの置き換えで、KDDIが対象ユーザーをより限定していることが読み取れます。5Gのエリア拡大に伴い、データ容量無制限をauのブランドイメージにしていきたい意思の表れと言ってもいいでしょう。
もっとも、auはあくまでメインブランドで、データ使用量の多いヘビーユーザー向けです。低・中容量のユーザーに向け、KDDI自身も低料金ブランドのUQ mobileやオンライン専用ブランドのpovo2.0を運用しています。
メインブランドのauは、ピタットプランですら“ギガ単価”は割高。スマホミニプランの導入を機に料金プランを見直し、このような別ブランドに移ってしまうのも手と言えるでしょう。
UQ mobileは、「自宅セット割」さえ適用できれば料金は3GBで990円。povo2.0に至っては、素の料金として3GB/30日のトッピングが990円で提供されています。最低でも3000円以上かかるピタットプランやスマホミニプランと比べると、明らかに割安です。また、au回線を借りるMVNOであれば、さらに料金を下げることも可能になります。
とは言え、auブランドにしかないサービスがあるのも事実。一例を挙げると、iPhoneと同じ電話番号でApple Watchの発着信が可能な「ナンバーシェア」があります。
UQ mobileやpovo2.0は、この機能に非対応。実は筆者も、iPhoneでau回線を使っていますが、ナンバーシェアのために、UQ mobileやpovo2.0に完全移行できていません。デュアルSIMでデータ通信だけpovo2.0にしつつ、主回線としてはauをピタットプランで維持しています。家族にはauユーザーもおらず、いずれの割引も非適用です。
このような場合、1GBを超えるとガッツリ料金が上がってしまうピタットプランより、スマホミニプランの方が使い勝手はよさそうです。ほかにも、5のつく日やPontaの日のポイント還元率や還元額に違いがあるなど、メインブランドにはメインブランドの存在意義があります。
どちらかと言えば、筆者のような使い方はマジョリティではなさそうですが、似たような境遇のユーザーは、スマホミニプランに変更するかどうかを検討してもよさそうです。