石野純也の「スマホとお金」

キーワードは「親子割」? UQ/ソフトバンク/ワイモバイルの若者向け施策を徹底解説!

 2月、3月は携帯電話、スマホの新規契約がもっとも伸びる季節。新生活、新入学を迎えるに合わせ、スマホを新たに持つ若者が多いためです。かつては“学割”と銘打ったキャンペーンが展開されるのが一般的でしたが、最近では学生に限らず、年齢で区切って割引などを提供しています。そんな春商戦を控え、キャリアやそのサブブランドが続々と若者向けの割引キャンペーンを発表しています。

 ここ数年の傾向として挙げられるのが、より親を巻き込む形に向かっていることです。以前から展開してきたワイモバイルの「ワイモバ親子割」やUQ mobileの「UQ親子応援割」はもちろん、23年12月からはメインブランドであるソフトバンクも親子でお得になることをうたった「ソフトバンクデビュー割」を導入しています。 料金を支払うことになるであろう親にお得感を訴求することで、契約を促している と言えるでしょう。今回は、この2社の割引施策を見ていきます。

親側への還元も手厚くしているキャリアの若年層向け割引。KDDIとソフトバンクは、キャンペーンを開始済みだ

親子同時に割引を受けられるワイモバ親子割

 まずはワイモバイルのワイモバ親子割から。対象年齢は、5歳から18歳までで、その家族も含めてお得になるキャンペーンです。この割引が適用されるのは、10月に導入された新料金プランの「シンプル2」。ただし、データ容量が4GBの最安プランとなる「シンプル2 S」だと、割引がつきません。よりデータ容量の大きい「シンプル2 M」もしくは「シンプル2 L」が、割引の対象になります。

 これは、Sの料金が元々安いことも関係しています。Sの料金は2565円。ここに、「おうち割 光セット」と「PayPayカード割」を適用すると、料金は1078円まで下がります。

 これに対し、ワイモバ親子割は12カ月間限定ですが、割引額は1100円。そのまま適用すると、料金がマイナスになってしまいます(笑)。キャリアにとっても新規契約でARPUを上げたいところで、元々の料金がやや高めのMやLに絞って展開していることが伺えます。

ワイモバ親子割で割引が適用されるのは、シンプル2のM以上。4GBのシンプル2 Sは対象外になる点には注意が必要だ

 1100円の割引を適用した場合の金額は、Mが1078円、Mが2178円と、期間限定ながらかなりリーズナブル。1100円の割引を適用することで、1つ下の容量の料金プランと同額になるというわけです。ワイモバ親子割非対象のSと、ワイモバ親子割対象のMで金額が変わらないとなれば、あえてデータ容量の少ないSを契約する人は少ないでしょう。こうした点から、新規契約の若者に、20GBのMを使ってもらいたいソフトバンクの意図が見え隠れします。

 また、この割引は家族も対象になります。家族の場合、すでに回線契約があるケースが多いと思われますが、ワイモバ家族割はプラン変更でもOK。ただし、この場合、シンプル2のMかLへのプラン変更が条件になります。割引額は、上記の子どもと同じ。この金額であれば、親にとってもお得で、ワイモバイルユーザーの親が子どもの回線を同一ブランドにそろえるモチベーションになりえそうです。

ワイモバ親子割の条件。プラン変更も対象になっているため、家族も割引を受けやすい。ただし、シンプル2のMかLを契約する必要がある

 同時に、親の料金プランを最新のシンプル2に移行させる効果もあります。新規契約を獲得するだけでなく、新料金プランへのマイグレーション(移行促進)を同時に果たせるキャンペーンといった形になっており、よく練られていることが分かります。特に、シンプル2はデータ容量が増えている半面、一部のユーザーにとっては値上げになるため、こうしたキャンペーンが移行に効く可能性があると言えるでしょう。

ソフトバンクはPayPayポイントで還元、1万2000円ぶんを親に

 実際に料金を払うことが多い親に訴求した方がキャンペーンとして効果的なのか、今年から来年にかけての春商戦では、メインブランドのソフトバンクも同様に親まで含めてのお得感を訴求しています。かつてはソフトバンクも親子での割引を行っていましたが、ここ数年は子ども単独での割引に変わっていました。親をその対象として復活させた格好です。

 ただし、おもしろいのが ソフトバンクの場合、割引ではなくポイント還元 にしているところ。子どもは割引、親はPayPayポイントという形で、方法を分けています。リアル、ネットを問わず幅広い店舗で現金のように使えるPayPayポイントをもらえるのは、ある意味、非常に直接的なキャンペーンですが、明細で見なければ分からない割引よりもお得感は強くなりそう。あくまで筆者個人の見解ですが、1100円の割引よりも1000ポイントの方がうれしくなります。

ソフトバンクは、子どもが割引なのに対し、親にはPayPayポイントを還元する

 詳細を見ていくと、まず、子どもに関しては6カ月間、1650円の割引を受けることができます。ワイモバイルより短い半年というのが、やや引っかかるところですが、そのぶん、割引額は大きくなっています。また、ワイモバイルは対象ユーザーが18歳まででしたが、ソフトバンクの ソフトバンクデビュー割については、22歳まで 割引を受けることができます。

 割引対象になる料金プランは、こちらも初めて契約したユーザーが対象になる「スマホデビュープラン+」の「ベーシック」。データ容量が20GBのプランになり、各種割引適用前の料金は3916円です。メインブランドではありますが、初めてスマホを持つユーザーに限定されていることもあり、料金はワイモバイルのシンプル2 Mより割安に設定されています。

 ここに、「1年おトク割+」とスマホデビュー割の「デビュー特典」がつきます。前者は1年間対象で1188円の割引。後者は上記のように6カ月間ながら1650円です。すべて適用した場合の料金は、1078円まで下がります。2つの割引の期間が異なるため、契約後は段階的に料金が上がっていく格好。8カ月目以降は2728円、14カ月目以降は3916円と正規の価格になります。

子ども側の料金プラン詳細。スマホデビュープラン+に1年お得割+とデビュー特典がついて、最初の6カ月間は料金が1078円まで下がる

 親側が受けられる特典はシンプルで、毎月1000円のPayPayポイント還元です。期間はスマホデビュー割のデビュー特典より長く、1年間。実際に契約する子どもより期間が長いところからも、親向けにアピールしていることがうかがえます。合計すると1万2000円で、そこそこの金額になります。親側の回線は10月開始の「ペイトク」や、「メリハリ無制限」などの大容量、無制限プランが対象です。

親側の回線にも料金プランの制約はある。ペイトクなど、無制限・大容量のプランが中心だ

UQも親子で割引する一方、auの特典は子ども単独

 KDDIも、サブブランドのUQ mobileは親子でのお得感を訴求しています。中身はワイモバイルに近い親子両方の回線に対する割引。ただし、対象となる料金プランは、10分間の音声通話定額と20GBのデータ容量がセットになったahamo対抗の「コミコミプラン」に限定されています。分かりやすさと、通話も含めた実質的な安さが人気のプランですが、春商戦では、ここにリソースを集中させたことが分かります。

 子どもは18歳以下が対象。選択できる料金プランが絞られているぶん、割引額は大きめ。ワイモバイルが1100円の割引だったのに対し、UQ mobileは12カ月間、1320円と金額が大きくなります。コミコミプランはオンライン専用プランに近く、基本的に割引はありませんが、UQ親子応援割を適用した場合の料金は1958円になります。しかも、子ども用の回線はデータ容量が12カ月間、10GB増量に。期間限定ではありますが、計30GBの回線が1958円というのはMVNOもビックリの価格設定です。

UQ mobileのUQ親子応援割は、コミコミプランが対象。元々割引がない料金プランなだけに、金額の算出方法もシンプル。子どもはデータ容量も10GB増量される

 親の回線にも、同額の割引が適用され、12カ月間1780円になります。こちらも、対象となる料金プランはコミコミプランだけ。データ使用量の変動が多い人が使う「トクトクプラン」や、4GBと小容量の「ミニミニプラン」では利用ができません。コミコミプランなだけに、親子コミコミでの加入を促進するキャンペーンと言えそうです。

 親子まとめてガッツリ割り引くUQ mobileに対し、auの「スマホスタート応援割」はやや控えめ。対象年齢はUQ mobileより高く、22歳以下まで割引されますが、親に対しての還元は特にありません。ただし、子どもの割引額は大きく、「スマホスタート1年割」と「スマホスタート応援割」の両方が適用されます。前者は年齢を問わない通常の割引で、金額は1188円。後者が11月22日から提供が始まった22歳以下向けの割引で、その額は1650円になります。

auのスマホスタート応援割には、親への還元がない。そのぶん、割引額が大きめで、ソフトバンクと比べると年間の料金は安くなる

 これらの割引に、187円割引の「au PAYカードお支払い割」を組み合わせると、「スマホスタートプラン 5G/4G」の料金が、1年限定で1078円まで下がります。メインブランド同士の比較だと、親への還元はない代わりに、ソフトバンクより1078円の期間が長く続きます。親子重視のソフトバンクに対し、KDDIはブランドごとに考え方を分けてきたと言えるでしょう。なお、ドコモは春商戦向けのキャンペーンは未発表。年明けから動きが活発化するだけに、対抗策には期待したいところです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya