石野純也の「スマホとお金」

楽天のポイントプログラムが12月改定! 楽天モバイルユーザーはどれくらいおトクになる?

 楽天グループは、12月1日、SPU(スーパーポイントアッププログラム)の特典内容を変更します。 一言でまとめれば、楽天モバイルユーザーの優遇を強める内容 。ポイント付与の倍率を上げることで、より楽天モバイルから楽天市場への誘導を強める格好になります。また、固定回線の代替として利用されている「Rakuten Turbo」のポイント倍率も上がります。その他での調整もあり、最大倍率は11月までの15.5倍から16.5倍にアップします。

 一方で、この内容改定に伴い、毎月の付与上限額は減少する格好です。特にダイヤモンド会員だった場合の減少幅が大きいと言えるでしょう。また、現在実施している「毎月5と0のつく日」に付与されるポイントの付与率も4倍に変更され、上限ポイントも下がります。では、実際、楽天モバイルユーザーはどの程度お得になるのでしょうか。楽天市場の利用額を元に、前後比較をしてみました。

楽天グループは、SPUの最大倍率や中身を改定する。楽天モバイルユーザーへの還元を手厚くする方針だ

楽天モバイルユーザーは一律5倍還元に、固定回線やキャリア決済も倍率アップ

 SPUとは、楽天グループ内のサービス利用状況に応じてポイント付与率がアップする仕組み。楽天市場での買い物時に、この倍率が適用されます。もともと、楽天モバイルもここに組み込まれていましたが、前料金プランの「UN-LIMIT VII」で、その倍率が大幅に上がりました。ダイヤモンド会員の場合は3倍、非ダイヤモンド会員の場合は2倍と、それまでの1倍より付与率が大きく向上した格好です。23年6月に導入された「Rakuten最強プラン」でも、このSPUの仕組みは受け継がれています。

SPUとは、楽天グループのサービスを使えば使うほど、楽天市場でのポイント還元率が上がるキャンペーンのこと。倍率や対象サービスは、適宜見直されている

 上限額は、ダイヤモンド会員の場合が7000ポイント、非ダイヤモンド会員の場合が6000ポイントでした。これに加え、固定回線や固定回線代替の「楽天ひかり」や「Rakuten Turbo」でも、SPUのポイント付与率が1倍ぶん増加します。こちらは、上限ポイントが5000ポイントです。モバイル絡みでは、楽天モバイルキャリア決済も0.5%、上限5000ポイントまでSPUでポイント付与が上がります。ダイヤモンド会員でかつ楽天モバイルとRakuten Turboを契約し、さらに支払いにキャリア決済を使えば、ポイント付与率は最大で4.5%まで上がっていました。

Rakuten最強プランでは、ダイヤモンド会員の場合でポイント還元率が通常の3倍ぶんアップする

 このポイント倍率や獲得上限ポイントが、12月1日から変更されます。大きな変更があるのは、楽天モバイル関連です。まず、 ダイヤモンド会員と非ダイヤモンド会員の区別がなくなり、回線契約者は一律で4倍 に付与率が上がります。ダイヤモンド会員からだと1倍、非ダイヤモンド会員からだと2倍、ポイントが多く付与されるようになるというわけです。ポイント還元率が統一されたことにより、分かりやすくなるのもメリットと言えるでしょう。

 また、楽天ひかり/Rakuten Turboのポイント付与率も、1倍から2倍に向上します。モバイル回線と固定回線を楽天モバイルで統一しておくだけで、楽天市場でのポイント付与率が6倍になるというわけです。さらに、キャリア決済のポイント付与率は0.5倍から2倍に増加します。上記のとおり、11月までは楽天モバイル関連だけで最大4.5倍でしたが、12月の改定でこれが8倍まで上がります。改定後のSPUの最大倍率は16.5倍ですが、その内の半分程度が楽天モバイル絡みで占められていると言えるでしょう。“楽天モバイルシフト”を、ポイント付与率という形でより明確化した格好です。

改定後の内容。モバイル関連のポイント還元率が大きく上がっていることが分かる

 実際、毎月5万円ほど楽天市場で買い物している場合、楽天モバイルを契約していると、付与されるポイントは500ポイントから1000ポイントほどアップします。非ダイヤモンド会員で楽天カードと楽天モバイルの契約をしている場合、楽天市場で5万円使うと付与ポイントは2500ポイントから3500ポイントの増加。これだけで、Rakuten最強プランの最低料金である1078円の“元”は、ほぼほぼ取れてしまいます。

上限額は縮小になる一方、達成のハードルは低めに

 とは言え、世の中そこまで甘くはないのが常。

 単純にポイント付与率が上がるだけだと、楽天グループの負担が大きくなりすぎます。楽天モバイル関連だけで、計8倍まで付与率が上がってしまうとなおさらです。そのため、12月1日からのSPU改定では、毎月の付与上限が大幅にカットされています。 貯まりやすくなる一方で、天井が低くなった というわけです。

 具体的には、まず、楽天モバイル契約での上限が2000ポイントまで下がります。11月まではダイヤモンド会員が7000ポイント、非ダイヤモンド会員が6000ポイントだったため、4000ないしは5000ポイントの減額です。次に楽天ひかり/Rakuten Turboは、5000ポイントから1000ポイントに。倍率が2倍に増えた代わりに、上限は4000ポイントダウンした格好です。キャリア決済も5000ポイントから1000ポイントまで上限が下がっています。

楽天モバイル関連に絞った新旧のSPUポイント上限。グラフにすると、大胆にポイントがカットされているように見えてしまう

 結果として、楽天モバイル関連での獲得上限ポイントはトータルで4000ポイントまで下がります。11月までのSPUでは、ダイヤモンド会員の場合が1万7000ポイント、非ダイヤモンド会員の場合が1万6000ポイントだったため、上限だけで見ると、1/4程度まで下がってしまったことが分かります。楽天市場で上限いっぱいポイントがつくまで買い物をしていた人にとっては、付与されるポイントが減る“改悪”になってしまいます。

 ただ、もともと 1万7000ポイントを入手するには、かなり高めのハードルを越える必要がありました 。ダイヤモンド会員での7000ポイントには23万3333円超、キャリア決済の5000ポイントには100万円、楽天ひかり/Rakuten Turboの5000ポイントには50万円といった具合です。倍率は合算されるため、1万7000円に達するには、もっとも倍率の低いキャリア決済に合わせて100万円の利用が必要になります。

還元上限が高い割に還元率が低かったため、上限に達するには最低でも23万円超の利用が必要だった。キャリア決済まで加味すると、その額は100万円に……。そのハードルは大きく下がる

 ダイヤモンド会員の楽天モバイル契約ぶんだけなら23万3334円の利用で7000ポイントに達しますが、この場合、楽天ひかり/Rakuten Turboで2334ポイント、キャリア決済で1166ポイントとなり、合計は1万500ポイントにしかなりません。23万円超という条件を楽天市場だけで満たすのはなかなか難しいはず。ハイエンドスマホの一括払いでも、なかなかここまでの金額にはなりません。生活に必要なものをすべて楽天市場で調達して、かつスマホなりブランドものなりの“大物”を買った月ぐらいしか、上限に達することはないでしょう。

 逆に、改定後のSPUは楽天モバイル絡みでもっとも倍率/上限額の低いキャリア決済や楽天ひかり/Rakuten Turboが5万円で上限に達します。また、楽天モバイル契約は、4倍/2000ポイントのため、5万円までの利用が上限。これで上限の4000ポイントに達するため、日用品プラスαの買い物で達成しやすくなります。 上限額の縮小は一見すると改悪にも見えますが、どちらかと言えば、より現実的な還元になったと評価することもできます 。実際、楽天グループによると、8割前後のユーザーにとっては、これまでより付与されるポイントが増えることになるといいます。

スマホで見る還元率の変化、Apple Gift Cardも購入しやすい

 より具体的に、スマホを購入した際にどの程度還元されるか、前後比較をしてみましょう。

 まずは、ハイエンドかつ高額なスマホの代表として「iPhone 15 Pro」の128GB版をチェックしてみます。楽天モバイル公式 楽天市場店では、回線紐づきでも単体でも購入が可能。価格はアップルよりやや高い17万9800円。一括購入であれば、SPUのダイヤモンド会員兼楽天モバイル契約で4902ポイント、楽天ひかり/Rakuten Turbo契約で1634ポイントがつきます。基本ポイントの1%と合わせると、合計額は8170ポイントです。

iPhone 15 Proは、17万9800円から。筆者の場合、通常ポイントと楽天モバイル契約(ダイヤモンド会員)で、約5%の還元を受けられる。支払いを楽天カードに変えれば、ここに2%が上乗せされる

 キャリア決済でSPUが上がる条件は、Androidで2000円以上利用した場合になり、iPhoneを購入する条件としては、あまり現実的ではないため、ここでは除外しました。これが、改定後のSPUだと、楽天モバイル契約で2000ポイント、楽天ひかり/Rakuten Turbo契約で1000ポイントつき、計3000ポイントになります。通常購入分の1634ポイントを含めても、4634ポイントにとどまります。5万円を超えてしまっていることもあり、改定後のSPUでは減額になってしまうというわけです。

 一方で、ミッドレンジモデルの「Xperia 10 IV」の場合、単体購入でもクーポン適用時の価格は4万9800円。現行のSPUだと、ダイヤモンド会員の楽天モバイル契約で1470ポイント、楽天ひかり/Rakuten Turboで490ポイント。こちらはAndroidのため、キャリア決済を入れると245ポイントが追加されます。通常購入分の490ポイントと合わせると、合計は2695ポイントです。これに対し、改定後は楽天モバイル契約だけで1960ポイント、楽天ひかり/Rakuten Turboで980ポイント、キャリア決済で980ポイントがつき、通常購入分の490ポイントと合わせると、4410ポイントまでポイントが増加します。

ミッドレンジのXperia 10 IVの場合、現状では最大でも2695ポイントほどだ。筆者のケースでは、1960ポイントの還元を受けられる
約5万円で上限に達することもあり、iPhoneは現行のSPU、Xperiaは新たなSPUの方がポイント還元額が大きくなる結果に

 最新のiPhoneの場合、価格が高いことで上限突破してしまい、改定後の付与率の高さを生かせません。ただし、iPhoneの場合、アップルストアでApple Gift Cardを使って購入が可能。楽天市場にはApple Gift Card販売店もあり、ここにもSPUが適用されます。初回購入から45日経過している際の上限は1回5万円。偶然だと思いますが、改定後のSPUの上限とピッタリ合っていますね(笑)。楽天モバイルと楽天ひかり/Rakuten Turbo契約者が毎月5万円ずつ購入すると、月あたり通常購入分も入れて4000ポイント。4カ月かけて20万円ぶん買えば、1万6000ポイントにもなります。

 割引がつきづらい最新のiPhoneをアップルストアで購入する際に、お勧めです。また、購入時の決済方法に楽天カードを使えば、さらに1000ポイントが上乗せされ、20万円ぶん購入した際には、2万ポイントに。月をまたいで使ったぶんが合算されるApple Gift Cardのような商品では、ポイント付与率の高さのメリットが出てきます。日用品だけで5万円ぶんとなるとなかなか難しいかもしれませんが、このような“アップル製品貯金”であれば、比較的簡単に上限に達します。

楽天市場で販売されているApple Gift Cardを購入する際にも、SPUのポイントがつく。1回に購入可能なのは5万円までで、ちょうど新SPUで楽天モバイル関連の上限に達するため、効率よく買い物ができる

 また、SPUの上限まで付与されれば、楽天モバイルの最低料金である1078円を上回るポイントになり、実際に使う/使わないに関わらず、とりあえずでも契約しておいた方がお得になります。エリア? 通信品質? そんなことは関係ありません。よければ使う、悪ければ予備回線にすればいいだけ。プラン変更の必要がない「Rakuten最強プラン」は、そんな使い方にも適しています。楽天市場をよく使う人であれば、すぐに元が取れるため、今まで以上に契約している価値が高まったと言えるでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya