石野純也の「スマホとお金」

いまだに高い海外での通話料金、オススメのキャリアや着信料を抑える裏ワザを解説

 筆者は今、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されるサムスン電子の新製品発表イベント「Galaxy Unpacked」を取材するため、現地に来ています。コロナ禍での渡航制限も大幅に緩和され、航空便の本数も回復しつつあることから、約1年前と比べると海外旅行や海外出張の機会も増えました。3月に卒業旅行を控えている学生の方も多いでしょう。そんなときに役立つのが、国際ローミングです。

 とは言え、以前本連載でも扱ったように、海外ローミングの価格はお手頃になり、ahamoや楽天モバイルのように、無料を打ち出すキャリアやブランドは増えています。eSIM対応端末が増えたこともあり、これらのキャリアを利用しないユーザーも、海外での安価な通信手段を簡単にそろえられるようになりました。 一方で、解決していないのが通話料です

国際ローミング時に要注意なのが着信料。それを回避する裏技を紹介する

ローミング時は通話料も高額、LINEなどをフル活用すべし

 データローミングに関しては、au/UQ mobileの「世界データ定額」やNTTドコモの「パケットパック海外オプション」の登場で価格が下がり、以前よりも安価に利用できるようになりました。ahamoは、20GBの範囲であれば無料。楽天モバイルも、2GBまでは無料でローミングを使うことができます。1日2980円、最悪の場合、青天井もありえた以前と比べると、海外渡航時のローミングサービスはかなり充実してきたと言えるでしょう。

 その反面、変わっていないのが音声通話です。ローミング時の通話料に関しては、いわゆる音声通話定額オプションに加入していても別建てになってしまいます。定額ではないため、日本にいるような感覚で長電話してしまうと、料金がみるみるうちに上がってしまいます。しかも、国内通話に比べると単価も高額で、仕組みが少々複雑です。

 筆者が今いる米国でドコモを使った場合の料金は次のとおり。まず、滞在国向けが1分あたり125円です。これは、米国内の電話番号に発信した場合の料金。現地の友人・知人やレストランなどの店舗に電話した際にかかる料金が1分125円です。次に、日本向けの料金ですが、こちらは1分140円に設定されています。

通話料は従量課金で、かつ1分あたり125円/140円と割高だ

 日本向けと言っても、これはあくまで日本の電話番号という意味合い。国際ローミングしている同士で通話しても、1分間140円の通話料が発生してしまう点には注意が必要です。特に家族や友達同士で一緒に旅行している場合。このときに相手に電話をすると、日本向けの料金がかかります。いつもの感覚で5分程度通話しただけで、ローミング時の通話料が700円にもなってしまうというわけです。

日本だけでなく、海外ローミング中の同行者に電話をかける際にも、(より高額な)日本向けの料金が適用される

 とは言え、スマホの普及以降、電話番号を使った通常の音声通話をするのはまれかもしれません。 海外ローミング時に料金が高いことを分かっていれば、LINEやMessengerなどで通話することもできます 。データ通信のネットワーク上で音声をやり取りするサービスを使えば、当然ながら通話料はかかりません。データ通信さえできれば、連絡の取りようはあると言えるでしょう。

LINEなどのアプリを使った通話は、データ通信としてカウントされるため、データローミングさえしていれば料金はかからない

高額かつほぼ青天井で高額請求リスクの高いローミング時の着信料

 一方で、LINEやMessengerなどの連絡先を 主体的に選べるのは、あくまで自分が発信する場合。相手から電話がかかってきたときには、通話の手段は選べません 。国際ローミング時、特に 厄介なのが、この音声通話の着信 です。日本にいる場合には着信は無料ですが、これは、前回紹介したアクセスチャージという仕組みがあるため。着信側の設備利用料などは、発信先のキャリアに請求されています。

 これに対し、国際ローミング時には、国や地域に応じた着信料がユーザーに請求されるのが一般的です。着信料という概念はなじみがないため、ついつい忘れてしまったり、知らなかったりするユーザーも少なくないでしょう。かかってきた通話だから料金がかからないと思い、長電話してしまうと、あとで高額な請求に泣くことになりかねません。通話料が高額になり過ぎると通信が止まるように設定されていますが、請求の遅れなどが理由で10万円を超えてしまうケースもあります。

相手がかけてくる通話に関しては、防ぐ手立てがない。海外だと着信料がかかってしまう

 では、実際にいくら程度かかるものなのでしょうか。

 先に挙げたドコモの場合、米国では着信料として175円の料金が設定されています。米国内への発信や日本への発信よりも、割高な設定になっているのです。相手から電話がかかってきて、 5分間通話しただけで、料金は875円 にもなってしまいます。日本にいるときと同じ感覚で30分程度の長電話をすると、料金は5250円。たった30分の電話で、1カ月の通信料と同程度かそれ以上の料金が発生してしまうというわけです。

ドコモは米国に、175円の着信料を設定している

 ドコモや米国だけが例外的に高いのでは……と思われるかもしれませんが、そうではありません。米国では、auも着信料は165円。ドコモより10円割安ですが、その差がわずかに思えてしまうほど、料金は高めです。ソフトバンクはアメリカ放題が適用されるため、無料で利用できますが、これは例外中の例外と考えたおいた方がいいでしょう。また、筆者が2月に行く予定のスペインも、着信料はドコモで110円かかります。米国よりも割安ですが、従量課金のインパクトは大きいと言えるでしょう。

KDDIも、米国の着信料は1分165円だ

転送電話を駆使して着信料を無料に、実はオススメの楽天モバイル

 これを防ぐには、「海外では電話に出ない」を徹底するほかありません。電話以外の連絡先を知っている友人・知人や同僚からの着信の場合は、いったん着信を切って、自分からLINEやMessengerなどで折り返せばOKです。ただ、知らない電話番号からかかってきて気になってしまい、ついつい電話を取ってしまうことはあるでしょう。仕事の電話など、どうしても電話に出ざるをえないケースも考えられます。

 このようなときの “裏ワザ”として活用したいのが、転送電話サービス です。転送電話とは、あらかじめ指定した別の番号に、ネットワーク側で転送をかける仕組みのこと。ahamoのように非対応のブランドもありますが、大手4キャリアとも、こうしたサービスを用意しています。このサービスの転送先を、050番号を持ったIP電話にすることで、国際ローミング時の着信料を節約できます。

電話を転送することで、国内の通話料が適用される

 なぜかと言うと、転送電話はあくまで日本国内で行われている扱いになるからです。転送先への発信料はかかりますが、通常だと30秒22円。国際ローミングの着信料に比べれば大幅に割安です。また、音声通話定額オプションも有効になるため、こうしたオプションに入っていれば、規定の通話時間までは追加の料金はかかりません。完全定額の場合なら、日本にいるときと同様、着信料がゼロになるというわけです。

 筆者は、NTTレゾナントの「050 plus」を契約しているため、海外渡航時の電話はここに転送をかけるようにしています。転送ではありますが、同じスマホに着信があるため、アプリは異なれど、普段と同様に電話を取るだけ。複雑な設定も必要ないため、重宝しています。ただし、国や地域によっては、現地のキャリアがIP電話をブロックしている場合もあります。データ通信に現地のSIMカードを使う際には、注意しておきたいところです

筆者は、OCNの050 plusに電話を転送している

 また、楽天モバイルでAndroid端末を使っている場合、「Rakuten Link」で着信を受けることが可能。こちらも、着信料はかかりません。国際ローミング時に通常の音声通話アプリを使いたくないときには、「my楽天モバイル」で「契約プラン」のタブを開き、「国際通話・国際SMS(海外でOS標準の電話アプリ・メッセージアプリ利用時)」をオフにしつつ、「国際通話・国際SMS」だけをオンにします。この設定だと、通常iOSでは受けられない「Rakuten Link」の着信も可能になります。ただし、相手の発信が「Rakuten Link」からの場合に限定されるのが難点。通常の電話は不通扱いになってしまいます。

楽天モバイルの場合、Rakuten Linkで通話を受ければ着信料がかからない。通常の電話への着信をオフにしておくと安心だ

 AndroidのデュアルSIM端末で2回線目を楽天モバイルにしているような場合、転送先をその電話番号にするという手もあります。IP電話アプリへの転送の応用例と考えておけばいいでしょう。また、「Rakuten Link」の場合、国内への通話は発信も無料になります。先に挙げたとおり、2GBまでですがデータローミングも無料。1GB以下0円の終了で純減に見舞われてしまった楽天モバイルですが、海外渡航の多い人には意外とオススメのキャリアと言えるかもしれません。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya