石野純也の「スマホとお金」
海外でも安くスマホを使いたい! eSIMで使える国際ローミング専門のMVNOの魅力に迫る
2022年11月24日 00:00
新型コロナウイルス感染症を受けた水際対策が緩和され、9月以降、海外渡航のハードルが大きく下がりました。筆者も9月、11月と米国に出張していますが、コロナ禍以前とほぼほぼ変わらない形で出入国ができるようになり、海外渡航の難易度が下がったことは痛感しています。2月にMWC Barcelonaを取材した際に、あれこれ書類を準備したり、帰国時のPCR検査をドキドキしながら受けたのがウソのようです。
依然として円安ドル高が続いていたり、ロシアのウクライナ侵攻で欧州方面に飛びづらくなっていたりと、水際対策以外のハードルは残るものの、海外旅行や海外出張をする人は確実に増えています。そんなときに活躍するのは、以前、本コーナーでも紹介した国際ローミング。ただ、国際ローミングを低価格で利用できるユーザーは、ある程度限定されています。
たとえば、メイン回線がMVNOの場合、原則として国際ローミングは利用できません。ドコモのahamoや楽天モバイルのように、国際ローミング料が無料のキャリアも、まだまだ数の上では少数派。以前より料金は下がっているものの、日数が長いとそれなりのコストになってしまいます。そんなときに検討したいのが、国際ローミングを専門に提供している海外MVNOのeSIMです。
3GBで1500円強、割安な料金が魅力のAiralo
海外MVNOのeSIMと言っても、難しいことは特にありません。キャリアによっては、アプリから簡単に申し込むことができ、日本語化もされているからです。また、アプリからダイレクトにeSIMのプロファイルを発行できるサービスもあるため、渡航直前にサクッと発行すれば、現地に到着してすぐに使い始めることができます。筆者が8月の旅行や11月の出張でお世話になった「Airalo」は、そんなサービスの1つです。
Airaloは、シンガポールに拠点を構えるAIRGSM社のサービス。MVNOとして国際ローミングサービスを提供しており、対応している国や地域は190以上と広範です。国ごとの料金プランに加え、国をまたいだ地域全体をカバーする「リージョナルeSIM」や、87カ国どこでも利用可能な「グローバルeSIM」も提供しています。筆者の場合、出張で複数の国や地域を渡り歩くことはまれなので、国ごとのeSIMを購入することがほとんど。トランジット時で利用できませんが、そのぶん料金を安くおさえられます。
こうした海外ローミングを主力にしているMVNOはほかにも多数ありますが、Airaloの魅力は料金の安さにあります。11月に利用したアメリカ用プランの場合、1GBプランの料金はわずか4.5ドル(638円、11月22日の1ドル=141.64円で計算)。データ容量が多いと、そのぶん1GBあたりの単価はさらに下がります。2GBで8ドル(1134円)、3GBで11ドル(1559円)、5GBで16ドル(2268円)。中容量の10GBや20GBも、それぞれ26ドル(3686円)と42ドル(5954円)で提供されています。
同様の国際ローミングを提供するTransatelの「Ubigi」は、アメリカ向けが3GB、14ドル(1985円)から。Gigskyは1GBで1400円からと、Airaloの安さが際立ちます。1週間程度の滞在で、ホテルのWi-Fiにつなぎながら使うのであれば、3GBから5GBあれば十分という方も多いでしょう(使い方にもよりますが)。1500円から2000円程度で済んでしまうため、国際ローミングサービスとしては非常に割安と言えます。
安かろう、悪かろうでは……と心配される向きもあるかもしれませんが、米国では通信品質も十分でした。Airaloは、AT&TとT-Mobileの2キャリアに対応しており、どちらかの電波が弱い場合でも、もう一方を利用可能。しかも、T-Mobileは5Gにも対応しています。T-Mobileは600MHz帯の5Gでエリアを広げているため、一概には言えませんが、筆者が利用した場所(ハワイ州マウイ島)では、500Mbpsを超えることもあり、快適に利用できました。
料金と並んで大事なユーザビリティ、端末内で完結する使い勝手
海外出張時にAiraloを選択することが多いのは、購入から設定までが非常に簡易なことが挙げられます。発行されるeSIMプロファイルはワンショットで、データ容量が切れたらあらためてプランを買い直すだけ。出張なり旅行なりのたびに購入すれば済むので、常時、端末内にプロファイルを入れておく必要はありません。そのため機種変更時に、eSIMプロファイルを移す面倒な作業がなく、気軽に利用できます。
このようなスタイルを取っている国際ローミング専業MVNOはほかにもありますが、Airaloは、決済からeSIMプロファイルのインストールまでがアプリで完結するのが魅力です。以前は購入後に表示されるSM-DP+アドレスやアクティベーションコードを手作業で“コピペ”する必要があり、これが少々面倒でした。QRコードも発行されていましたが、いったんスクショを取り、別の端末に移してからカメラで読み取らなければなりません。
こうした仕様も、約1年前に改善されており、今ではeSIMのダイレクトインストールに対応しています。そのため、必要なeSIMは、次の手順で簡単に購入し、利用を始めることができます。まずアプリを開いて、国を選択。人気の国や地域はトップ画面に表示されているため、この中から選択するか、検索で探します。すると国ごとのプランが表示されるので、料金を考慮しながら必要な容量を決めて「今すぐ購入」のボタンをタップします。
データパッケージの中身が表示されるので、念のため、接続できるキャリアや通信方式を確認しましょう。アメリカの場合は、先に述べたようにAT&TとT-Mobileに接続でき、前者は4G、後者は5Gが利用できます。有効期限は7日間ですが、最初の接続がトリガーになるため、渡航前に作業を済ませておきます。再び、「今すぐ購入」をタップすると、支払い方法の選択画面が表示されます。iPhoneの場合、Apple Payが選択されています。
そのまま決済を済ませると、eSIMのインストール画面に切り替わります。ここで「ダイレクト」を選択すると、eSIMプロファイルのダウンロードが始まります。筆者は、主回線で接続したまま副回線のeSIMプロファイルをインストールできましたが、安定性を求めるなら、Wi-Fi接続時に作業をしておいた方がいいでしょう。あとの手順は、通常と同じ。すべてがアプリ内で完結しており、引っかかるところは特にありませんでした。ちなみに、ここではiOS版のお話をしていますが、Androidもダイレクトインストールに対応しています。
キャリア自らが提供する旅行者用eSIMも、選択肢は多彩だ
同様に、ダイレクトインストールに対応しているローミング専業MVNOとして挙げておきたいのが、KDDI傘下のソラコムが運営するSoracom Mobileです。こちらは、iOSのみの対応。支払いにApple Payが利用できる点も、Airaloと同じです。また、先に挙げた国際ローミング専業MVNOでは、GigskyもApple Payやダイレクトインストールに対応済み。こうしたサービスであれば、下手なネットショッピングより簡単にローミング用のeSIMが入手できます。
ただし、料金的には必ずしもローミング専業キャリアが最安というわけではありません。海外キャリアの中には、旅行者専用の料金プランをeSIMで用意している会社もあり、その数は徐々に増えています。あらかじめ渡航先が決まっていて、準備に時間がさけるのであれば、現地キャリアの情報をチェックしてみてもいいでしょう。
たとえば、お隣の国、韓国ではKTやLG U+、SK Telocomといった3大キャリアが旅行者向けの料金プランを用意しています。料金プランの一例を紹介すると、KTはデータ容量が無制限(ただし、1日3GBで速度が5Mbpsに制限されます)。1日、5日、10日、20日と日数別い金額が分かれています。
料金は1日プランが6600ウォン(約690円、11月22日の1ウォン=0.1046円で計算)。5日間プランは2万7500ウォン(2878円)です。データ容量に制限がなく、単価も国際ローミング専業MVNOより割安。オンラインではデータ専用SIMのみですが、空港では音声付きのeSIMも販売しているようです。日本語のサイトがきちんと用意されているところも、さすが韓国。言葉的にはやや怪しい部分もありましたが、意味は通ります。
また、欧米でもキャリアがeSIMのプリペイドプランを販売しているケースがあります。筆者が2月のバルセロナ渡航時に利用したのが、フランスのOrange。こちらは、欧州の幅広い地域で利用できるトラベル用のeSIMということで8GB、19.99ユーロ(2908円、11月22日の1ユーロ=145.5円で計算)と価格はやや割高ですが、スペインだけでなく、トランジットで一瞬だけ立ち寄ったドイツでも利用でき、便利でした。対応端末に、楽天モバイルオリジナルの「Rakuten Mini」や「Rakuten BIG」まで挙げている芸の細かさも特筆したいところです。
このように、探せば探すほど出てくるeSIMの国際ローミングサービスですが、国ごとに探すのはなかなかハードルが高いのも事実。言語の壁だけでなく、決済の壁で弾かれてしまうこともあります。安価で幅広い国に対応しており、かつアプリも日本語化されていて決済からプロファイルのインストールまでが簡単なのは、Airaloのようなローミング専業サービスの強みです。国際ローミング非対応のMVNOを使っている人はもちろん、国際ローミングのコストをおさえたいと考えている人も、ぜひ検討してみてください。