石野純也の「スマホとお金」

いよいよはじまる「au Ponta ポイントプログラム」、何が変わる? どうすればおトクになる?

 NTTドコモが6月に「dポイントクラブ」を大きく刷新したところですが、競合のKDDIも、7月5日、ポイントプログラムの仕組みを改定します。

 2020年3月に導入されたステージ制を廃止し、直近3カ月間のPontaポイント加算状況に応じて決まる 「au Pontaレベル」 を導入。「Lv.4」「Lv.5」のユーザーには、特典として「がんばったボーナス」が進呈されるようになります。7月分は、au PAYで利用できるクーポンになる予定です。

 これに伴い、ステージと継続契約年数、料金プランで決まっていた 「長期優待ポイント」は、7月と12月に内容が変更 されます。

 これまでは誕生月に最低0ポイント、最大で7000ポイントもらえていた長期優待ポイントですが、7月の改定で0ポイント~5000ポイントに、12月の改定では0ポイント~1000ポイントへポイント数が減少します。一方で、 12月からは「5のつく日+Pontaの日(8日)」を導入 。auおよびUQ mobileユーザーがau PAYを利用した際の還元率がアップするようになります。

 改定内容が多岐に渡っているため、全容がイマイチつかみにくい新たなプログラムですが、新旧の比較をすることでKDDIの狙いが透けて見えます。ここでは、その概要を、かみ砕いて紹介、解説していきます。

変更点を理解するため、まずは6月30日までのステージ制をおさらい

 6月30日までのステージ制は、au回線やau PAY、auでんき、auじぶん銀行など、KDDIの各種サービスを利用することで各ユーザーのステージが決まっていました。

 たとえば、au PAYのアプリ起動で1回1スコア、au PAYのコード決済やネット支払で購入1回につき3スコア、5000円ごとに10スコアといった具合です。auでんきやauじぶん銀行に10万円以上預け入れをしていたときにも、10スコアがついていました。

6月までのステージ制では、さまざまなサービスを利用するごとに蓄積されていくスコアで、レギュラーからプラチナまで4段階のステージが決まっていた

 3カ月間のスコア合計が199スコア以下なら「レギュラー」、200から499スコアは「シルバー」、500から799は「ゴールド」、800以上は「プラチナ」になります。

 筆者のケースを見ると、au PAYやau PAYプリペイドカードで991スコアを貯めて、あっさりプラチナになっています。

 au回線やauでんき、auじぶん銀行、オートチャージの設定でもスコアが加算され、約3カ月間の合計で、1280スコアを獲得していました。さすがにイージーゲームすぎて還元しすぎではないかと心配になってしまいますが、ユーザーの立場としては特に問題はありません(笑)。

筆者の場合、au PAYやau PAYプリペイドカードの利用が多かったこともあり、プラチナステージの基準である800スコアを大きく超えている

 ステージが上がるメリットは、大きく分けて3つ存在します。

 1つが、冒頭で挙げた長期優待ポイントが上がること。たとえば契約年数が4~9年で「使い放題MAX 5G」を契約していた場合、レギュラーは500ポイントしかもらえないのに対し、プラチナは3000ポイントと6倍に獲得できるポイントが上がります。

 契約年数が16年超の場合は、料金プランごとのポイントが一律になり、ステージが関係なくなりますが、15年までは何らかの差がつけられています。超長期のユーザーは手厚く、それ以外にはステージに応じてということが分かります。

変数が3つあって少々複雑だが、長期優待ポイントは利用中の料金プランと継続契約年数、ステージの3つで決まる。6月30日まで、この仕組みだ

 2つ目がau PAYマーケットでの還元率がアップすること。シルバーで2%、ゴールドで3%、プラチナで5%、ポイントが上がります。

 3つ目は、世界データ定額の早割キャンペーンでキャッシュバックされる日数が上がるというものですが、こちらは2020年5月31日までの取り組み。コロナ禍で海外渡航が大幅に制限されている時期の実施になってしまい、結果として特典の恩恵にあずかれたユーザーは非常に少なかったと思います。海外出張の多い筆者もこれには期待していましたが、結局1回も利用できませんでした。残念。

au PAYマーケットの還元率も、ステージに応じて変わっていた。プラチナステージでは常時5%還元率がアップ。特典として非常にお得と言える

 とは言え、このステージの算出方法は非常に複雑。筆者のようにau PAYやau PAYクレジットカードをガンガン使っていれば自然に貯まるものの、組み合わせがあまりにも多く、スコアをどう貯めればいいのかが分かりづらかったと言えるでしょう。

 また、auでんきやauじぶん銀行などのスコアが一律で、au PAYやau PAYクレジットカードの利用額で貯まるスコアと比べると微々たるもの。サービスを契約してもらうモチベーションにはなりづらいのが難点だったと思います。

新たに導入されるau Pontaレベル、そのメリットは?

 これに対し、新たに導入されるau Pontaレベルは、 レベルを分ける条件がKDDIから付与されたPontaポイントだけ と、仕組みはシンプルです。

 3カ月間で1000ポイント以下だとLv.1、1001ポイント~2000ポイントだとLv.2、2001ポイント~3000ポイントだとLv.3、3001ポイント~6000ポイントだとLv.4、6001ポイント以上だとLv.5というように、3カ月間の累積ポイントに応じてレベルが上がっていきます。

レベルは5段階に設定されている。画像が「?」になっているのは、これ自体がデジタルコンテンツとしての特典になっているためだが、特典としてちょっと緩いような気も……

 シンプルで分かりやすくなった半面、レベルアップ時の特典のインパクトが弱くなっているため、単純に「改善された」と評価するのは難しいところです。

 現状ではLv.4とLv.5の「がんばったボーナス」だけがアナウンスされていますが、Lv.2とLv.3になる実利とも言えるメリットが特に示されていません。au PAYマーケットでの最大5%還元もなくなってしまうため、正直なところ、 無理をしてまでレベルアップする必要性は薄くなってしまった印象 を受けます。

 レベルアップするのに必要なポイントを貯めるのも、なかなかハードルが高い。

 たとえば、「がんばったボーナス」がもらえる最低レベルのLv.4には3001ポイントが必要になります。しかも、レベル判定の基準になるPontaポイントは、KDDIから付与されたものだけ。したがって、au回線やUQ mobile回線、auひかりといった通信料や、auでんきなどのサービスで得たポイントだけが対象です。

 これらのポイントは月ごとの変動が小さいため、積極的にレベルアップを狙うなら、au PAYやau PAYカード、au PAYマーケットの積極的な利用は必須と言えるでしょう。

がんばったボーナスがもらえるのは、Lv.4とLv.5のみ。7月はau PAYクーポンが提供されるという。クーポンの額や枚数など、条件次第だが、正直なところ「え、これだけ……」と思ってしまった

 とは言え、au PAYの還元率は通常0.5%。3001ポイントを貯めようとすると、3カ月で60万200円、1カ月あたり約20万円の決済が必要になります。

 au PAYカードであれば、還元率1%のため、これでau PAYにチャージをしたうえで決済をすれば、計1.5%のポイントが貯まり、必要な決済額は20万66円、1カ月あたり約6万6688円まで下がります。auやUQ mobileの回線やauでんきを契約しているユーザーは、そのぶんが上乗せになるので決済に必要な金額はもっと下がります。

au PAYやau PAYクレジット―カードだけで貯めようとすると、なかなかハードルが高い。逆に、auでんきで電気代が毎月2万円だとすると、毎月1000ポイントがもらえるため、あっさり基準をクリアする。複数サービスを連携させて利用するのが、レベルアップの鍵になる

 ただ、果たして「がんばったボーナス」は、本当にユーザーの“がんばり”に見合ったものになるのか。このお得さが、ポイントを積極的に貯めていくべきかどうかが左右しそうです。

 現状では、7月ぶんがau PAYで利用できるクーポンとしか案内されていません。このクーポンがいくらぶんになり、どこで使えるのかといった情報が本稿を執筆している6月28日時点で公開されていないのは、少々残念です。

長期利用ポイントは還元額ダウンに、au PAYで元を取れるか

 もうひとつ、大きな変更は 誕生月に付与されていた長期優待ポイント です。回線契約者にとって、この改定は少々痛手と言えるかもしれません。もらえるポイントが、大幅に少なくなってしまう可能性があるからです。

 長期優待ポイントとは、誕生月にau契約者がもらえるポイントのこと。先に述べたとおり、6月までは、au回線の契約年数と契約しているプラン、さらにステージを考慮してポイント数が決まっていました。「より契約期間が長く、料金の高いプランを契約し、かつステージが高い」と、より多くもらえる仕組みです。

 7月からは、この中の「ステージ」が条件から外れ、算出方法がよりシンプルになります。ここまで見てきたau Pontaレベルは考慮されません。つまり、料金プランと契約年数に応じてもらえるポイントが変わるということ。

 言い換えるなら、回線以外のサービスの利用状況は加味せず、 純粋に料金プランと契約年数だけでポイントを算出 すると言えるでしょう。長期契約をしているユーザーを優遇するだけなら、本来サービスの利用状況は関係ないはず。その意味では、長期利用者優遇に原点回帰した仕組みになったと言えます。

ステージが加味されなくなったぶん、もらえるポイントが減ってしまうユーザーは多そうだ

 一方で、もらえるポイント数が減ってしまうユーザーは少なくありません。たとえば、先に挙げたとおり、「使い放題MAX 5G」で4~9年契約しているユーザーの場合、6月までは500ポイント~3000ポイントが付与されますが、7月以降はステージ問わず、一律で500ポイントに下がります。

 ほかの料金プランも同様で、「使い放題MAX 5G ALL STARパック」を契約する4~9年のユーザーも、500~3000ポイントだったのが一律で500ポイントに。

 「ピタットプラン5G」は、4~9年の場合、ゴールドないしはプラチナステージでもらえていた500ポイントがなくなってしまいます。

 長期優待ポイントは12月1日にもう一度改定され、使い放題MAXなどの料金でもらえるポイントは1年以上で500ポイント、最大の10年超で1000ポイントまで下がることが決まっています。

 7月にステージ制による優遇がなくなったあと、12月に契約年数のカテゴリーを3段階に整理し、長期契約しているユーザーに付与するポイント数を抑えるというのが大きな方向性です。

12月1日には、長期優待ポイントが再変更され、長期ユーザーのもらえるポイント数がガクンと下がる

 代わりに12月から導入されるのが、au PAY決済と連動した「5のつく日」と「Pontaの日(8日)」です。

 この日に限って、auの場合は4.5%、UQ mobileの場合は2.5%、還元率が上乗せされます。12月は12月5日、15日、25日と12月8日の計4日間が対象。1カ月の上限ポイントはauが500ポイント、UQ mobileが300ポイントで、auは11111円、UQ mobileは1万2000円の決済で上限までポイントが貯まります。

au、UQ mobileユーザーは5のつく日と8日にau PAYの還元率がアップする。単純な長期契約者優遇から、決済サービスの利用者優遇に舵を切ったと言えそうだ

 長期契約をすることのメリットが薄くなる代わりに、 回線契約のあるユーザーがau PAYを使うことで、還元を上乗せ しているというわけです。

 決済は必要になりますが、上乗せを加味するとほとんどのケースでトータルの還元額は上がる格好で、これは一長一短と言えるでしょう。より au PAYによる決済を促す仕組み に変わると見ることもできそうです。

 この点は、先に挙げたレベルアップにも共通しています。こちらも、近道はau PAYやau PAYカードといった金融サービスを使うこと。

 ポイントが比較的貯まりやすいauでんきも含め、KDDIが中期経営戦略で掲げた「サテライトグロース戦略」の中の「金融」や「エネルギー」を重視していると言えるでしょう。

 その意味で、KDDIが新たに導入するポイントプログラムも、グループを挙げた戦略に沿った内容です。

KDDIが中期経営計画で掲げたサテライトグロース戦略。新たなポイントプログラムで重視されるサービスは、ここでグロース(成長)させたい分野とマッチしている

 ただ、先に挙げたように、レベルアップするモチベーションが薄かったり、イーコマースでの還元率が下がってしまったりする点は懸念材料です。改悪につながっている点も多く、ポイントを貯めるユーザーが減ってしまったら本末転倒だからです。ポイント還元で選ばれていたau PAYマーケットを離脱してしまうユーザーが出てくる可能性もあり、au経済圏のパワーバランスが大きく変わるきっかけになるかもしれません。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya