本日の一品

極太より快適な太字万年筆の究極「PILOT MUSIC」

 強烈なマニアやコレクターではなくても、万年筆の好きな人は多い。筆者は“紙”から繋がって万年筆好きになった一人だが、仕事でレポートや議事録を書いたり、小説家の様に原稿を書いたりするわけではないので、万年筆のヘビーな使い方をしているマニアではない。

 筆者が万年筆を使う目的は、大きな余裕のあるメモ用紙やA4サイズの大学ノートに、商品の企画や思いついた大雑把なアイデアの展開などを一時集中的に記述することだ。小さな細かい綺麗な字を書く必要性は無く、後で自分さえ読めれば問題ないので、多少汚くても大きな文字でゆったりとスペースを使って描くことができる環境なのだ。

 それゆえ、基本的にF(細字)とかEF(極細)といった漢字圏の日本国内ではメジャーな細字系のペン先は必要とはしておらず、記述対象は複雑な字画の漢字の頻度もそれ程多くはないため、最低でも、海外製の万年筆ならM(中字)以上や、国産ならB(太字)やBB(極太)が、筆記時のストレスもなく快適に感じている。

 そんな太字大好きな筆者が、以前から狙っていた万年筆が「MUSIC」という特殊なペン先を備えた万年筆だ。国内では、パイロットやセーラー、プラチナ等のメジャーメーカーが発売しているらしい。

太字の大好きな筆者には最適なPILOT CUSTOM 742のMS(ミュージック)
モンブラン マイスターシュテュック149 B(上)、プラチナ#3776 B (中)、パイロット カスタム742 MUSIC(下)
パイロット・ミュージックは国産の万年筆の中では比較的サイズは大きい方だ
ペン先に注目すると右端のMUSICは「切り割り」が2列あるが、インクを貯めて空気との入れ替わりを実現する切り割りの一番上の丸型やハート型の穴がないことが特長だ。

 筆記の感覚で言えば、縦の線が太く、横線は細いという筆記結果になるペン先で、登場初期のうんちくはきっと五本の横線を引き、そこに音符を記述するのに最適なペン先を目指して企画・開発されたものだろう。カリグラフィーペンとも通じるところがある。

 「MUSIC」はB(太字)やBB(極太)とも多少ニュアンスは違うが、縦の線はそれらに十分対抗できるくらい太く力強い。筆者の購入したパイロットCUSTOM 742 MUSICは、ペン先に極めてユニークな特徴がある。

 万年筆は、内部に蓄積したインクの一部を毛細管現象を利用してペン先に送る。ペン先に向かったインクは、紙面と接しているペン先に刻まれた「切り割り」と言呼ばれる細いスリットを伝って紙上に線を引く仕組みだ。

 通常の万年筆は、“切り割り”は1本だが、MUSICはこの切り割りが2本ある。2本の切り割りを伝って流れてくる大量のインクでスムースに極めて太い縦線を書くことができる。

 ペンポイント(ペンの先端)の構造からか、MUSICは紙面との筆記角度を少し傾けて書くと、書き出しのかすれが起こる場合があるようだ。MUSIC本来の太い力強さを発揮し、書き出しのかすれをなくすには、できる限りペンを立てて書くことが必要なようだ。スムースな書き味のMUSICは、写譜をすることがなくても、突然思いついたアイデアや創発活動を自由に、スピーディに、書き留めるには極めて有力な筆記具の1つだ。

2列の「切り割り」はMUSICと呼ばれる特殊な用途を前提とした万年筆にはさいようされることがある
筆者はカートリッジではなく、好きなボトルインキを選べるコンバーター方式を使うことが多い
今回はプラチナの顔料インクを使ったブルーを入れてみた
MUSICのペン先は確かに横よりも縦の筆跡の方が太く力強く書ける
製品名販売場所価格
パイロット カスタム742 MUSICアメ横の筆記具専門店約1万6000円