本日の一品

激安256円で衝動買いしたミニマル腕時計が楽しい

 100均ダイソーの腕時計が100円だったのはもう忘れるくらい昔のお話。今ではそのほとんどが500円アッパーだ。これはチプカシというユーザの付けたニックネームを冠している安価なカシオの腕時計も同じ。底を打ったレガシーなチープ腕時計の価格は今や反発して高値傾向だ。

 現在のアップルウオッチを除けば、登場当時からしばらくは高価だったAndroid系のスマートウオッチもGoogleのWearOSとは無縁の独自OSを搭載しフィットネスと健康オタクにターゲットを絞り一挙に低価格化の道を歩み出したのと対照的だ。

 価格帯で見る限り右上がりのレガシーチープ腕時計と右下がりのアフォーダブルなスマートウオッチの分布図には置き場所の無い腕時計が静かに登場してきている。世界的に急激な勢いで拡大をしているtemuや先発のAliExpressで売られているチープだがユニークな腕時計がその代表格だ。

 安さがウリの中国製の腕時計の2番目の特徴は明確な製品名やニックネームの無い商品が多いことだ。今回の腕時計も「飛行機ケース&ピンクシリコンストラップ付きLEDタッチスクリーンスポーツウォッチ、ナイトライト機能、日付/週表示、デジタル&アナログモード、ティーンズ、学生、カップル向け、非充電式バッテリー」という想像を絶する長い商品名だった。

 まだまだ検索対策の方がブランド認知より重要な時代のイメージだ。どうもストラップを除く本体の形状を真上から見ると長い商品名称の先頭にある「飛行機ケース」と言うのが言いたい特徴らしいのでここでは「飛行機ケース腕時計」と呼ぼうと思う。

 飛行機ケース腕時計は本体にシリコン製のストラップを取り付けた超軽量なスポーツモデル腕時計だ。キッチン秤で重さを測定してみたら26g。これはチプカシ最軽量モデルのF-91Wの16gより10g重い。

 腕時計はストラップの素材によって腕時計の総重量は大きく変わるが一般的なステンレス製のストラップを付けた腕時計で85g~120g程度なので飛行機ケース腕時計は圧倒的に軽い腕時計であることは確かだ。

 最初にこの腕時計が届いた時、筆者は飛行機ケースという名称を一切知らなかったので本体を初めて見た時は”ドラキュラの棺桶”のようだと思った。大きな見やすいボールド文字の明るい白表示で視認性は極めて高い。現在時刻表示と、カレンダー、曜日表示だけがある。タイマーやアラームなど余計な機能の無いミニマル仕様だ。

 表示のためのボタンを押すと毎回画面に”18 88”というセグメント表示のテスト画面のような表示が現れる。初めて見た時は”18時88分”って何だ?故障か?と思ったが慣れてしまうとこれはこれで楽しい。それより遥かに不可思議なのは分表示の下側に表示されるスニーカーらしきアイコンの左右に表示される”085”と”21”という数字だ。

 最初はペドメーター(歩数計)かと思ったが何をしてもこの2ヶ所の数字が変化することは無かった……念のために購入したtemuのサイトの商品写真を確認してみたがここの表示もまったく同じ。左上にある雷アイコンとその右横の数字の”68”も同様だった。バッテリー残量かもと思ったがこれも変化しない。きっと目的を誰かに伝えたい謎のナンバーかもしれないがそのうち気にならなくなった。

 今回原稿を書いている最中にまた気になってWEBサイトの”PLEASE NOTICE”というコメントを見たら……”Other Functional keys or symbols of this product are for decoration purpose only,without actual functions. This watch can only show the time.”と書かれていた。今もコレクションしている某オマージュ腕時計の一部の針が文字盤上に描かれているのと同じくジョークだった。

 シリコン製のストラップは横に少し強くスライドするだけで綺麗に脱着できる。今すぐには思い当たらないが探せば交換ストラップも見つかりそうだ。ストラップのカラーはブラック、ホワイト、ピンク、オレンジ、ライトグリーン、アーミーグリーン、グレー、ディープブルーと全8色もあるので全色腕時計本体付きで買っても交換ストラップ1本分と差の無い2000円前後だ。

 筆者はライトグリーンのシリコンストラップモデルを1個256円で購入した。シリコンストラップはなかなかしなやかで装着性能は極めて高い。固定はストラップ中央に開けられた11個の穴で子供から女性、男性まで対応範囲は広い。またベルトのロックは同色のシリコン製”遊革”(ゆうかく)に通すことで波板風のシリコンベルトを確実にロック可能だった。

 ドラキュラ棺桶型の腕時計の上下左右を見ても操作ボタンらしきものが全く見当たらない。WEBサイトの商品名の一部に”LEDタッチスクリーン”という表現があった。一般の人が理解している”タッチスクリーン”とは少し異なるが表示画面のほぼ中央をよ~く見てみると小さな膨らみが見つかる。実はこの出っ張りが唯一の操作ボタンだ。LEDタッチスクリーンはあながち嘘では無さそうだ。

 3個~4個のボタンで腕時計の設定に慣れている人にはたった1個のボタンで時刻合わせをするのは難しそうだがやってみると意外に簡単だった。オマケに日本語の操作マニュアルも付いている。と思ったら全く関係の無い4つボタンの腕時計の操作ガイドだった。中華製の数百円以下の腕時計よくあるあるだ。

 だれも信じないとは思うが、腕時計裏面には”WATERRESISTAN 10M”といった普通の腕時計には付き物の単語だがなぜか潔く言い切り完結していないスペルの表記もありなかなかユーモアあふれるガジェット腕時計だ。

 50年ほど昔のレガシーなHP-01電卓腕時計とは全てが対極にあるような飛行機ケース腕時計だが単に現在時刻を知るだけという潔さとミニマル志向は複雑怪奇過ぎる多機能腕時計が溢れる令和の時代には極めて新鮮だ。滅多に使わない機能はハリボテでも十分なのだ。

 チプカシが裸で逃げ出しそうなたった256円の腕時計はいろいろなことを考えさせてくれる令和の逸品腕時計だ。販売価格は日々刻々と変化するので参考価格だ。さっき確かめて見たら327円と筆者が購入した時よりも28%も値上がりしていた。もちろんまた下がることもあるだろう。ちなみに時刻合わせをしてから約2か月半、筆者宅のNTPクロックとのずれは20秒弱なので精度も十分許容範囲だ。

商品購入価格
飛行機ケース腕時計temu256円