本日の一品

30余年ぶりに他社から復活した”消しゴム付きシャーペン”「SHARM」(シャーム)

2022年6月に発売されたサンスター文具の「シャーム」

 ステーショナリーの世界は面白い。素晴らしく革新的だと思っていたモノに感動してついついSNSに書いてしまった。すると知人から”昔あったよ!”とか聞かされてへぇ~とか思いながらWEBサイトを検索して昔の現物を見つけた”そういえばこれ持ってたなぁ~”なんてこと今回もスタート。

 30年以上経っていればもう世界は別の時代だ。同じようなことは今回ご紹介させて頂くステーショナリーの世界に限ったことではなく圧倒的に歴史の浅いICT系デバイス世界にも当てはまることが多い。

 長年に渡って様々な商品企画をやってきた筆者が勝手に作った”座右の銘”に「たいていのものは昔からある」と言うのがある。人間の世界では頻繁にある繰り返し話なのだ。今回に限らず、ネットニュース上ではいつも何かが新企画商品だと騒がれている。今回ご紹介する商品もオリジナル機能の商品は今から32年前の1990年に他社から発表・発売されている。

1990年に発売されたご先祖様であるトンボ鉛筆の「イレーシャ」当時500円で消しゴムリフィル1本付き


 「イレーシャ」(ERAse+SHArp)という商品名でトンボ鉛筆社が32年前の1990年6月に発売したのがご先祖様だ。当時の価格は現在のシャームより50円安い500円。芯型の消しゴムの径が2.5㎜と少し太いことをのぞけばもうほとんど同じ着想、同じ構造の製品だ。そして当時の宣伝コピーは「右に回すとシャープ、左に回してノック消しゴム」と今より直球型でスマートだ。

 商品パーケージの背面説明書きには、一見か弱そうな2.5㎜の極細消しゴムも実は一般的な人の筆圧である500gを大きく超えて最大900gの圧力がかかっても折れたり欠けたりしない素材を使っている……となかなかうんちくも強力だ。

1990年・イレーシャのパッケージ裏面の極細消しゴムのうんちくは秀逸だ

 トンボ鉛筆社製のイレーシャを実際に持っていた筆者でさえシャームの発売広告を見ても、当初は全く記憶から消えていた。当然、1985年以降に生まれた人達ならニュースを伝える側のメディアの人達も商品購入者の人達も生まれて初めて見る新商品と映っても当然だろう。

 そういえばトンボと言えば筆者が常に愛用しているペンシル型消しゴムのMONO ZEROの発売元だ。細かな場所の消去が可能でブロック形や大きな円形の消しゴムに比べてペンと一緒にペンケースに収納しやすい形状はユーザに受け入れられロングセラー商品となっている。

トンボ MONO ZEROペン型消しゴムは発売時以降ずっと愛用している

 古くからシャープペンシルを含む鉛筆系の筆記具に消しゴムはベストコンパニオンだ。定番商品として消しゴムが芯先と反対側のテイル側に付いた筆記具は数多い。消去時に消しゴムを露出する為キャップを引き抜く物やネジを回してキャップを取り去るもの、軸型消しゴムをシャープペンシルの様に回転させて出すものなど様々だ。

時代が変われども鉛筆(シャープペンシル)と消しゴムは切っても切れない関係だ
シャープペンシルに付属の消しゴムもメーカーや時代によって様々だ

 トンボ社はイレーシャ発売18年後の2008年にノック式消しゴムを独立させてペン型のMONO ZERO 消しゴムを発売し現在に受け継がれている。現在までのところ先陣を切ったトンボ鉛筆社からはイレーシャの後継モデルは発売されておらずイレーシャのDNAを引き継いだのは今回ご紹介しているサンスター文具のシャームの様だ。

 さて今回のシャームもシャープペンシルとノック式消しゴムの両者をインテグレーションした製品だ。シャームの消しゴムリフィルは見た目は全くMONO ZEROのリフィルと同じ軸径に思えたが興味本位で電子ノギスを使って測ってみたところ微妙に直径が異なる。実測ではシャームに付属する消しゴムの方がまだ細かった。

1990年前後からシャープペンシル+消しゴムのインテグレーションは一つのターゲットだったのかもしれない
シャームの消しゴムとMONO ZEROは同じものかと思ったが、実測してみたらシャームの消しゴムの方がスリムだった

 シャームを手に持って軸を左右に回したりノックしたりして遊んでいてふと気になったことがあった。筆者は昨今、紙の手帳に加えてE-Inkを採用した電子ペーパーを頻繁に使っている。電子ペーパーも当然の様にペン(スタイラス)で筆記するのだ。スタイラスの機能やデザインはシャープペンシル+消しゴム機能が基本だ。

電子ペーパー用のスタイラスと消しゴムの関係に興味は広がっていった

 一部のスタイラスは本体軸上のボタンを押し続けることで普段は筆記の為のペン先が突然消しゴムに化けて消去機能を発揮してくれる。同じような電子ペーパー用のペンでも軸先ではなく反対側のテイル側に消しゴム機能が独立して存在するタイプもある。

 どれが便利か使いよいかは難しい問題で一概には言えない。ユーザが過去慣れ親しんできたUI(ユーザインターフェイス)に重きを置くのか、新しいUIに慣れてスタイラスの持ち替えをミニマイズにするかはユーザ次第だ。シャームが普及すればスタイラスにも軸を捩じってペンと消しゴムの切替インターフェイスはありそうだ。

 シャームを分解してみると同じく”右に回すとシャープ、左に回してノック式消しゴム”の構造が良く分かる。ところで令和の今年、このシャームのメインユーザはいったい誰だろう?いろいろ考えてみたが現代の文具事情に疎い筆者にはメインユーザ層が全く思いつかない。

シャームのメカ部分は基本的にイレーシャと同じに見えた
今回の久々のシャープペンシル+ノック式消しゴムのユーザは令和のシステム手帳ユーザなのだろうか

 一方、イレーシャの登場した1990年と言えば、筆者もハマってインターネット以前の大手パソコン通信ネットワーク上で仲間数人と”システムノートフォーラム”といったグループを創設していたくらいシステム手帳が普及、流行した時代だった。

 A5版やB6版サイズの分厚さ自慢のシステム手帳のページに細かいシャープペンシルで小さな文字や細かなイラストや地図を描いていた記憶が鮮明にある。当時のそんな緻密な箇所の訂正には細い消しゴムが絶対に必要だった。

 ひょっとすると、令和の今も、デジタル時代の真っただ中でアナログ回帰でまたシステム手帳の第二流行期なのかもしれない。もしそうだとすればシャームの登場は極めて歓迎されるだろう。

 そういえば分解ついでにテイルのキャップを取り外したらなんとごく普通のシャープペンシルに付いてる消しゴムが現れた。ベースとなったボールペンに元々あったモノなのか、細部消去と大まか消去の目的別デバイスのタスク分けなのか、そのあたりのうんちくもWEBページで紹介してほしかった。そして出来れば32年の時を超えて昭和の「イレーシャ」と令和の「シャーム」の大バトルも見てみたかった。

なぜかテイル部分にも普通の消しゴムが付いていた。消すサイズによる使い分けなのかそのあたりのうんちくも聞きたかった。ちなみにイレーシャにはテイルの消しゴムはなかったようだ
昭和と令和のバトルも見てみたかったが残念だ
商品名販売元購入場所価格
シャームサンスター文具ヨドバシ・ドット・コム550円