本日の一品

9年ぶりにICレコーダー新調、ZOOMの「H1n」

新しいICレコーダーにZOOM「H1n」を選んだ

 筆者は大変憤っている。9年前にこの本日の一品で紹介したICレコーダーが存分に活躍してくれて、そろそろ引退時期かな、と思って新調を検討していたのだが、結局のところ、ICレコーダーというデバイスが9年もたっているのに全くと言っていいほど進化していなかったのだ。

 取材で毎日のように出番があり、そんななかで(原因不明のおかしなノイズは時々あるにしろ)一度も録音自体には失敗していないICレコーダーには頭が上がらないが、そろそろ世代交代。そう思ってここ1年くらい次の10年の相棒となる製品を探していたのに、スマートフォンやパソコンなど、ほかのデバイスのような変化がちっとも見られないのである。

9年間使い続けたICレコーダー(まだ当面は現役)
miniUSBポートでUSB 2.0。9年以上前の製品なのでここは仕方ないが

 たとえばインターフェイス。充電やデータ転送のためのUSBポートは、最新のモデルでもminiUSBかmicroUSBを採用しており、Type-Cのモデルは少なくとも筆者の知る限りでは、ハンディタイプのICレコーダーには存在していない。しかもUSBの規格としてはHigh Speed、つまりUSB 2.0(最大480Mbps)だ。この10年近く、いや実質的にはおそらくもっと長い期間、ずっとUSB 2.0なのである。

 さほどデータサイズの大きくない音声ファイルの転送にUSB 3.0/3.1の5Gbpsとか10Gbpsとかのデータ転送速度は不要だろう、みたいな判断なのかもしれないが、1~2時間インタビューした音声ファイルは128kbpsのMP3でも50~100MBになり、USB 2.0だとパソコンへの転送に数十秒かかる。シンプルに遅い。

 ハイレゾ音質の録音ができる製品も多く、その場合はファイルサイズがさらに肥大化することが考えられ、USB 2.0では力不足だと思うのだけれど……。ちなみにmicroSDカードを外部メディアとして使えるICレコーダーも多いので、その場合はSDカードリーダー(とアダプター)を使う手もあるが、いちいちカードを出し入れするのは面倒くさい。それになぜか最大容量が32GB止まりということも。

手元にあるmicroSDカードはだいたい64GB以上。もちろんこれらは今回紹介するH1nでも使えない

 とはいえ、9年たったICレコーダーがいつ故障するかもわからない。慣れに要する時間も考えると、さっさと新しいICレコーダーを手に入れて、安全のためにしばらく並行運用すべきだ。そう考え、妥協できるものとして選んだのが、ZOOMの「H1n」だった。

けっこうコンパクトなZOOM「H1n」

 この「H1n」もUSBインターフェイスのポート形状はmicroUSB、そしてUSB 2.0だ。保存先は外部メディアのmicroSDのみで、最大容量は32GB。容量的には音声ファイルなので32GBもあれば十分ではあるが、そもそも32GB(以下)という小容量のmicroSD自体、手元にない。わざわざ新たに32GBのmicroSDカードを購入する必要があった(安いのは助かるけれども)。

インターフェイスはmicroUSB。もちろんUSB 2.0だ
データ保存はmicroSDのみ。長年使うと何度も上書きすることになるので、繰り返し保存に強そうなタイプを購入。約1000円

 とはいえ、製品としては2017年頃に発売されたもの。USB Type-Cや大容量SDカードに対応していないのも仕方ないと言えば仕方ない。そこに目をつむりさえすれば、満足度の高いポイントがあちこちにあるのだ。全体がプラスチックなのでややチープ感はあるものの、購入前に想像していたより本体はコンパクト・軽量で、扱いやすい。底面にカメラと同じ三脚固定用のねじ穴があるので、小型三脚を使えばノイズを拾いやすい床・デスク直置きを避けながら収録することもできる。

底面には三脚固定用のねじ穴
小型三脚を使うことで余計なノイズが紛れ込むのを回避できる

 さらにパソコンとUSB接続するとオーディオインターフェイスとして認識され、Web会議用のマイクにもなる。そのうえ、パソコンやモバイルバッテリーからのUSB給電で駆動させられるので、微妙に手間のかかる電池の交換や充電の頻度を減らすことにつながる。電池を入れていなくても動作するから、電池が残り少ないことに使用直前に気付いたとしても、最低限、電源(パソコン)とUSBケーブルさえあればなんとかなる。

電池駆動に加えてUSB給電での動作も可能
パソコン接続時は動作モードをオーディオインターフェイスとカードリーダーから選べる。どちらも選ばない場合は給電のみ

 最近はほとんどの取材がオンラインで、パソコンからのライン入力で録音しているから、マイクの音質などはまだ実戦では確かめられていない。けれど、試しに自分の声をテスト収録してみたところでは今まで通り無難に使えそう。ダイヤル操作で素早くゲイン調整できる機能や、オートゲインで自動調整してくれる機能は、現場ではかなりの利便性を発揮してくれる予感もしている。

中央のダイヤルでマイクのゲインを簡単に調整できる。ほかにオートゲイン機能もあり

 ただし、筆者の環境では、ライン入力した音声を録音しようとした場合、オーディオケーブルや給電用のUSBケーブルの種類、あるいは差し込むポートによっては盛大にノイズが入った。たとえばオンライン会議の音声をパソコン背面の音声出力からH1nに入力して録音しようとすると、ノイズで使い物にならない音声になる。パソコンのUSBポートから給電した場合もノイズが紛れ込み、ケーブルを変えることで改善する部分もあれば、そうでないところもある。H1nはケーブルや環境との相性がシビアなのかもしれない(9年使ったICレコーダーではそんな現象はなかった)。

オンライン取材の音声録音で使っているときの様子。ノイズを回避するため、電源はUSB充電器から、音声はほかのケーブルが少ないパソコン前方のライン出力から引いている

 いずれにしろおそらくは次の10年、このH1nと付き合っていくことになるだろう。持ち運び用に別売のケースも購入したので、仕事の相棒として大切に使っていきたい所存である。

安全に持ち運べるように別売のケースも購入した。およそ1600円
製品名発売元価格
H1n Handy RecorderZOOM1万2000円
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