本日の一品

実用品にもなる“キーキャッププーラー”で遊ぶ

 スマホ全盛時代になって、パソコンを使わない、使えない世代も増えてきていると聞く。スマホでの入力もタッチスクリーンのフリック入力が大勢を占め、タイプライターの時代から続くパソコンのQWERTYキーボードを使うユーザーは激減したと思っていたが、実はそうでもないらしい。

 昔から「市場が縮小するとより深くなる」と言われるように、キーボードのタッチ&フィーリングに凝るユーザは逆に増えてきているようだ。

 キーボードのカスタマイズショップが誕生したり、周辺機器各社もメカニカルキーボードを新規開発したりしている。この動きは海の向こうの台湾やクラウドファンディングの世界でも同様だ。

キーキャッププーラーは見たことや使った経験のある人は居ると思うが、今日のキーキャッププーラーはちょっと違う。変なモノが周りに付いている

 今回ご紹介するのは、そんなキーボードのディープな時代にはピッタリの「スイッチテスター付きキーキャッププーラー」だ。いったい何の話をしているのかまったく分からない人も居るだろう。しかし所詮それほど難しいお話ではなく、キーボードにまつわるおバカなネタなので、気にせずに先に読み進んで欲しい。

キーキャッププーラーを見たことや使った経験のある人は居ると思うが、今日のキーキャッププーラーはちょっと違う。変なモノが周りに付いている

 今回の一品は、新興のキースイッチメーカーであるKailh社(カイル)が作った、TOOLとTESTERTがインテグレーションしたガジェットだ。

 キースイッチとは、キーボードを構成するひとつひとつのキーを指す一般名称だ。キーを押し下げると、さまざまな方法でスイッチが入って、最終的にはそれが文字となって表現される。そのキースイッチが必要な数だけ集まって、キーボードを構成することになる。

 メカニカルなキースイッチは複数の部品で構成されているが、その中でも一番表面の見えるところに配置されているモノが「キーキャップ」と呼ばれている。通常は文字や記号が表面に記されている部品を指す。

普通の安価なキーキャッププーラーのミニマムデザインはこんな感じ。先の開いた2つの爪でキーキャップだけをつまんで引きはがす道具だ
Kailhのキーキャッププーラーの持ち手には、3個のキースイッチがくっついている
キーキャッププーラーとしての機能は普通のキーキャッププーラーと同様で、簡単にキーキャップを引きはがせる
個性的なキーボードはキーピッチが異なったり、角度が異なったりするが、キーキャッププーラーさえあれば基本的に個体差は関係なく使用できる

 キーキャッププーラーは、そのキーキャップを引き抜くための道具なのだ。キーキャップを交換する目的は人それぞれだが、ソフトと連動して、キーそれぞれが持つ意味を変える場合や、単にキーキャップを変えて雰囲気を変えたい場合など様々だ。

 また昨今では、市場の先鋭化が進み、キーボードに対してマニアックに凝る人や自作派も増えてきている。そんなディープなユーザーは、キースイッチそのもののタッチやフィーリング、レスポンスなどに強い関心を持っている人も多く、キースイッチその物を専門的なメーカーの作っているモノの中から探し出し、自分専用の一心同体となるようなキーボードを求め、また自作している。

昨年くらいからキーテスター(キースイッチのテストベッド)がキーボード専門コーナーに展示され、販売されるケースも増えてきた。これはキーボードでは老舗のチェリー社の9種類のキースイッチのキータッチとフィーリングを指先で感じられるテスター

 そういうユーザーは、各社のキースイッチの特徴を指先で実際にテストしたいと思うのが普通だ。積極的な販売促進を考えるキースイッチメーカーは、ユーザーがお気に入りのキースイッチを選択できるように、複数のキースイッチを一度に体感できるテストベッドをキーボード売場に展示したり、時には1人でゆっくり吟味するための道具として販売している。

 一般的にはこれらを「キースイッチテスター」と呼ぶことが多いようだ。面白いことに、前述したキーキャッププーラーはこのスイッチテスターをインテグレーションした最右翼のキーキャッププーラーなのだ。

付いている向きはちょっと違うが同様のテストができる

 Kailhのキーキャッププーラーがテスターとして常備しているキースイッチは、キーキャッププーラーの持ち手の部分の左右に各1個、トップ面に1個の合計3個。

 トップ面には通称“青軸”のクリック感のあるメカニカルキースイッチが配置されており、指先で押すとカチカチとクリック音がする。両側面にあるのは、重いタクタイル感が特徴の“茶軸”とリニアな“赤軸”。赤軸のリニア感はキーを押し始めた時から、底打ち(キーがこれ以上押せない状態)まで、ほとんど指先感覚の変わらないタイプだ。

 もちろんこれらのKailh製キースイッチは、キーボードの世界では王様であるドイツのチェリーの影響を大きく受けているのは言うまでもない。

筆者が仲間とクラウドファンディングで作ったの、は同じようにキースイッチ(チェリー青軸)を使った玩具だが、暇つぶしと脳みそのデフラグの手助けをするガジェットだ
今年も来年もキースイッチを使ったおバカなガジェットの登場に期待したい

 基本的には交換できない3つだけのキースイッチのテスターがキーキャッププーラーにオマケについていて、嬉しいか嬉しくないかは個人差があるだろう。

 筆者は、一般的にはほとんど何の役にも立たないキースイッチを3個並べて、CTRL、ATL、DELの3つのキーキャップを被せたガジェットを、ストレス解消、人生リブートを御旗に“Reboot Anytime"とネーミングしてクラウドファンディングで実現させて頂いた身なので、“キーテスター付きのキーキャッププーラー”のジョークは極めてよく理解できる。

 ただし、Reboot Anytimeは圧倒的に原価の高い“チェリーの青軸”を使ってしまい極めて高い商品になってしまった。今回のキーキャッププーラーを買ってみて、世の中にはまだまだ同じような奇人変人がたくさん居ることに安心した。きっとこれからもキースイッチやキーキャップを遊びに使う奇人変人は続々と登場するだろう。いや必ず登場して欲しいものだ。

商品名購入店舗購入価格
Kailh キーキャッププーラー上海問屋890円(税別)