スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

ビジネス用途にハイエンドゲーミングマウス

ビジネス用途にハイエンドゲーミングマウス

 はいはいはい、新年早々ゲーマーでもないのにゲーミングマウスをポチッた俺が通りますよ、おっとすいませんね、あっそっちごめんなさいね、はいはいはいはい、みたいな。そして今回のネタは米Razerのハイエンドゲーミングマウス「Ouroboros(ウロボロス)」である。arkオンラインショップにて1万2980円で購入した。

米Razerの「Ouroboros(ウロボロス)」。8200dpiという高分解能のハイエンドゲーミングマウスで、12個のプログラマブルボタンを備える。手の大きさや持ち方に合わせてマウスの全長やバックアーチの傾きを調節可能

 コレ、2012年12月21日に発売された「ゲーマー向けマウス」ですな。詳細は上記リンク先を見て欲しいが、分解能が8200dpiもあったり、レーザーとオプティカルの2つのセンサーを搭載していたり、カスタマイズ可能なボタンが12個もあったり。さらには外観が上の写真のようであって今にも飛行しそうであったり、スゴいんである。

 が、俺の場合、このマウスをゲームのために買ったのではない。「あ、コレは俺的ビジネス用途にマッチするかも!!」と思って購入した。

 てのは、ここしばらくの間、自分に合うマウスをアレコレ探してきたのだが、なかなかシックリ来るのを見つけることができなかった。なんか手にしたとき、微妙な違和感が残るんですな。どのマウスも。ある程度使い込んでも、その違和感が抜けない。そんなところへこの「Ouroboros(ウロボロス)」(以下、ウロボロス)が登場した。

 ウロボロスは左右対称型の無線/有線両対応マウスで、マウスの全長を最大20mmの範囲で調節でき、バックアーチ(手のひらの手首に近い部分が当たる箇所)の傾きも調節できるという。また、好みに応じてサイドパネルを2種類から選べる。「これならきっと自分の手にフィットさせられる」と思った。

 また、仕事に使うにも良さそう。カスタマイズ可能なボタンは12個もあるので、ボタンをアプリの起動なんかに割り当てたら便利そうだ。ゲーミングマウスだからビジネス用途なんか楽勝な感度があるに違いない。これは試してみたい~、というわけで購入。

 てなわけで以降、「ビジネス用途におけるウロボロス」についてレポートしてみたい。が、結論から言えば、かなりイイっす。俺の手にもピッタリ。機能的にも満足。仕事に使うポインティングデバイスとして秀逸であり、予備にもう一個買おうかなと思いつつこのテのゲーミングマウスに対して急激に興味がわいてきたほどである。

手にフィットするか?

 まずはウロボロスは「どんなふうに手にフィットさせられるのか?」ということから。思うに、マウスの持ち方は大きく分けて2種類ある。この記事(の真ん中くらい)でも書いたが、「かぶせ持ち」と「つまみ持ち」に分かれると思う。

【かぶせ持ち】
手のひらでマウスを覆うようにする持ち方。手のひらはマウスの背中(バックアーチ)に触れるケースが多いと思う。手首~肘を使ってポインタを操作することになる
【つまみ持ち】
マウスの左右サイドを指(親指と薬指/小指あたり)でつまむようにする持ち方。手首と指先を使ってポインタを操作することになる。手のひらはマウスのバックアーチに触れないケースが多いと思う。俺の場合はコレ

 上の写真、わかりやすいように「やや大げさにそれぞれの持ち方を再現」している。つまみ持ちと言ってもこんなにマウスから手が離れているわけではない。

 さておき、俺の場合は「つまみ持ち」なんですけど、この持ち方だとマウスがある程度長かったり大きかったり、バックアーチ(マウスの背中)が高かったりすると、「もう全然シックリ来ない」という感じになる。つまみ持ちの場合、マウスポインタのダイナミックな動きを手首でコントロールし、繊細な動きを指先でコントロールする人が多いと思うが、手のひらにバックアーチが接触すると「指先での繊細なコントロールが邪魔されてしまう」のだ。

 てなわけで、つまみ持ち派の場合は比較的に小さいマウスを選ぶと思う。たとえばモバイルマウスなんかは携帯性を優先するため、必然的にマウスは小型であり、バックアーチ部も小さく低い。ので、そういうマウスならわりと快適につまみ持ちできる。

 が、小さめのマウスはだいたい軽め。なので非常に繊細なポインタコントロールには向きにくかったりする。ポインタを安定的かつ滑らかに動かすには本体が軽すぎるため、手や指先の力を受け止めてくれず、かえってコントロールしにくいのだ。軽すぎるカメラが手ブレしやすいコトと似てますな。

 ウロボロスの質量は約147g(電池込み/実測値)で、一般的なモバイルマウスより50~60g程度重い感じ。おおよそのサイズは、縦幅122~137mm、横幅71mm、高さは42mmとなっている。縦横はフツー的なマウスのサイズだが、高さは低めというイメージ。で、縦幅やバックアーチ角度を変えて手にフィットさせられる。

バックアーチがスライドし、マウスの縦幅を調節できる。外すこともできる。つまみ持ちの人なら、外したまま使っても問題ない。ちなみに、電池交換はバックアーチを外して行う
バックアーチの角度を変えられる。角度調節はマウス手前下部のネジで行う

 こんな感じで変わるので、つまみ持ちの人にもかぶせ持ちの人にもフィットすると思う。また、左右クリックボタンはつまみ派の人に好都合。左右クリックボタンはホイールのやや後ろあたりを押してもクリックできるので、つまむ位置の前後範囲も広いというわけだ。

 それから、左右のサイドパネルを交換することができる。当初は「サイドパネルなんかどっちでもいいや」と思っていたが、結果的に「このギミックはイイなあ」と感じた。

サイドパネルは2種類から選べる。写真中央が「フィンガーレストパネル」装着時で、文字通り指を下部に置いて休ませることができる。写真右は「フィンガーグリップパネル」装着時で、指でマウスをつまみやすい。左右パネルを別種にすることもできる。装着は強力なマグネット式

 個人的には両方のパネルとも気に入れた。フィンガーレストパネルを使うと、(つまみ持ちの場合は)指でのマウスポインタコントロールをより緻密かつ安定的に行えると感じた。指でマウスをつまみつつも、机面に手の重さを任せられる感覚(もしくはマウスを机面に押し当てる感覚)で使える。ので、たとえばフォトレタッチソフトで手動の範囲選択など行う場合、普通のマウスよりも1~2ランク精密な選択操作を行えると思う。

 フィンガーグリップパネルは、シリコンっぽい滑り止めが付いたパネル。個人的にはより広い用途で使えると感じた。汎用的、みたいな。だが、指経由で手の重さをマウスに任せられる感じではないので、繊細なコントロールはフィンガーレストパネルにやや劣るという気がする。

 しかしまあ、よくできてますわこのマウス。正直なところ、こんなに短時間で慣れることができたマウスはコレが初めてである。使い始めて3日せず完璧に違和感がなくなった。もともと背が低めなのでつまみ持ち派にはマッチしやすいのかもしれないが、ボタン類のクリック感なんかもイイ感じ。まあ、押下で「ミスしたら殺られる」というゲームの世界なんで、操作感は十二分にチューンしてあるんでしょうな。

12個のボタンをカスタマイズ可能

 ウロボロスはゲーミングマウスなので、カスタマイズできるボタンをたっぷり搭載している。ボタン数は全部で13個あるが、そのうち12個のボタンに好みの機能を割り振れる。設定などは「Razer Synapse 2.0」ソフトウェアで行う。

左クリック以外のボタンを自由にカスタマイズできる。「○」はカスタマイズ可能なボタン。ホイールは回転方向もカスタマイズの対象となっている。左右の矢印はサイドパネルがボタンになっていることを示す。各ボタンには、マウスやキーボードの機能のほか、マクロなども登録可能

 ほとんど自由自在にカスタマイズできるボタン類だが、そのカスタマイズ結果一式をプロファイルとして登録できる。プロファイルは複数登録でき、必要に応じて切り替えられる。プロファイルの切り替えはマウスのボタンからでも行える。

 ウロボロスはゲーミングマウスだけあって、感度の切り替えも柔軟に行えて、設定の自由度も高い。感度とはマウスポインタの移動速度(ポイント精度)で、5段階(ステージ)まで設定でき、デフォルトではホイール手前の2つのボタンで段階を切り替えられる。

 で、おもしろいのが「感度クラッチ」という機能だ。これは「感度クラッチ機能を割り振ったボタンを押している間だけ、指定の感度になる」というもの。たとえばこれを十分精密にポインタをコントロールできる感度に設定しておけば、突然の標的出現時でも感度クラッチ機能を使い、ポインタを精密&正確にコントロールして標的を狙える、てな感じで使う。

ポインタ移動速度は100~8200dpiの間で調節できる。また、あらかじめ5段階の感度を設定しておき、切り替えることができる。感度クラッチ機能を使えば、どの感度のときからでも、感度クラッチで指定した感度へ一時的に変更することができる

 ビジネスで使うなら、たとえば感度クラッチに低めのdpi値を設定しておき、グラフィック系の操作などで緻密なポインタコントロールが必要な場合に呼び出すと便利かも。俺の場合、フォトショップで細かいポインタコントロールを行うときに使っている。なかなか便利。

 ほか、キーボードやマウスからの入力をマクロとして記録しておくこともできる。キー押下の間隔(時間)まで正確に記録される。もちろん記録後に編集することができる。エバークエストをプレイしたときに、ソフトだったかキーボードだったかでこういったマクロを使ったが、俺の場合は「別れ際に特定のヘンな踊りをしつつ特定の別れの言葉を言う」という用途にマクロを使ったなあ、とか思い出した。

難点もあるが快適なマウス

 ウロボロス、手に気持ちよくフィットし、機能的にもポインタ精度的にも十二分に満足している。のだが、難点も感じられた。

 それは専用ソフトウェア関連。前述の「Razer Synapse 2.0」ソフトウェアですな。これが微妙に不安定な感じ。

 Razer社では、同社の各種デバイスの設定情報をクラウド上に保存するようだ。これによりユーザーアカウントでログインすれば、どこでも同じプロファイル(カスタマイズ)でウロボロスなどのRazer社製デバイスを使えるということらしい。そしてこの機能を担っているのが「Razer Synapse 2.0」ソフトウェアだ。

 でまあソレはいいとして、問題と感じているのは、ごく希にだが、「プロファイルが全てデフォルトに戻ったり、最悪ではマウスが認識されなかったりする」ということ。な~んかこの「Razer Synapse 2.0」ソフトウェアが怪しい気がしている。

「Razer Synapse 2.0」ソフトウェアの表示例。わかりやすく使いやすいドライバソフトだが、PC起動時にトラブルを起こすことがある。……俺の環境だけかしら?

 デフォルトのプロファイルではマウス感度が8200dpiとかになっているので、プロファイルがデフォルトに戻るとポインタが物凄いスピードで移動しちまったりする。また、マウスが認識されないとさらに困る。でもまあ、単純に「ウロボロスの再接続(USBレシーバの抜き差し)で正しく認識される」ようになる。プロファイルも元通りに。ので、致命的な難点ってほどではないように思う。

 でもナンででしょうね。「Razer Synapse 2.0」ソフトウェアがクラウドとうまく通信できていなかったりするのだろうか? それともPC上の他のソフトウェアとコンフリクトしているのだろうか?

 じつは、ちょっと前までもうひとつ問題があって、PC起動時に非常に頻繁にウロボロスが認識されなかった。これもウロボロスの再接続で正しく認識されるようになった。いろいろ試したところ、原因はロジクールの「SetPointソフトウェア」と競合していたようだ。「SetPointソフトウェア」をアンインストールして以降、起動時に認識されないという問題は起きていない。

 でもほかは全体的にグレイト。上記の問題も、俺の場合はほとんどPC起動時に起きることで、毎回そうなるというわけではない。ユーザー環境によるのかもしれないが、ウロボロスの購入を考えている方は「スタパの場合はときどき認識しないとかしてトラブってるらしい」と頭の片隅に入れておくといいかも。

 ともあれ、持った感じやボタンの押下感、それからできればドライバソフトの使用感なども含め、ぜひ一度実機に触れてみて欲しい。「ゲーミングマウスを気持ちよく使えるマウスとして汎用する」ってのは、かなりアリかもしれない。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。