スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

静電容量無接点→メカニカルになった「HHKB Studio」を試す! カスタマイズが大充実!!!

PFUの「HHKB Studio」は日本語配列版と英語配列版の2機種がラインアップされている。カラーは「墨」のみ。税込価格は4万4000円でPFU直販のみとなる。

 2023年10月25日にPFUから発売された「HHKB Studio」。1996年に初登場したHHKB(ハッピーハッキングキーボード)シリーズは、テンキーやファンクションキーなどを省いたコンパクトなキーボードで、指をホームポジションに置いたまま最小限の動きで効率のよい入力ができることから人気のシリーズとなっていった。

 その最新型がHHKB Studio……と思ったら、従来のHHKBシリーズとは別路線のHHKBシリーズなのであった。コンパクトなキーボードとしての基本的な部分は従来のHHKBとほぼ同じだが、新たにマウス機能やジェスチャーパッドを採用した。

 また、キースイッチも独自のメカニカルスイッチ(リニアタイプ/押下圧45g)に変更。このキースイッチはCherry MXメカニカルスイッチ(3ピン/5ピン/通常プロファイル)と互換性があり、好みのメカニカルスイッチ(Cherry、Gateron、Kailh製)と交換することができる。ということは、キーキャップも好みのものと交換可能でもある。

 さらに非常に強力なキー配列カスタマイズ機能を搭載。従来品にもキー配列カスタマイズ対応機種はあったが、HHKB Studioのそれはキー配列セット(プロファイル)を本体内に4つも保存できたり、複数キーを同時押しするショートカットを1キーに割当可能だったり、ユーザーが自在に使えるFn3キーを設定できたり、自由度がヒッジョーに高い。

HHKB Studioのキー配列をカスタマイズするためのキーマップ変更ツール。Windows版とMac版が用意されている。

 キースイッチやキーキャップを自由に交換でき、キー配列も自在にカスタマイズ可能ということは、自分が使いやすい配列のHHKBを構成できるっつーコトだッ!!! しかもマウス機能内蔵で、ジェスチャーパッドでカーソル操作やスクロールまでできる!!! ヤベい!!! スゲく魅力的だぜHHKB Studioッ!!!

 とか興奮していたら、ラッキーなことにPFUからHHKB Studioを提供されたゼ!!! じゃあガッツリ使い込んでゆくッ!!! そして今回はHHKB Studioをレビューしてゆきたいッ!!!

HHKB Studioはどんなキーボードか?

 HHKB Studioは前述のとおり新路線のHHKBで、マウス機能やジェスチャーパッド、独自のメカニカルキースイッチを採用し、強力なカスタマイズ機能を搭載しているあたりが従来のHHKBと大きく異なる。

 だが基本的な部分は従来のHHKBと同様で、たとえば非常にコンパクトな本体や合理的なキー配列、あるいはキー形状がシリンドリカルステップスカルプチャであることは従来のHHKBから引き継がれている。

HHKB Studioの英語配列版と日本語配列版。大きさは幅308×奥行き132×高さ41mmで、重さは840g(電池含まず)。かなりコンパクトだがキーの多くは一般的なフルサイズキーボードと同じサイズ。配列は従来のHHKBと同じ。
キー手前側面にはFnキーとの同時押しで入力されるファンクションが刻印されている。これも配列は従来のHHKBと同じ。
キー形状はシリンドリカルステップスカルプチャ。シリンドリカルはキー中央がくぼんでいて隣接するキーに指が触れにくい形状。ステップは奥のキーほど高い階段状になっており上下のキーに指が触れにくい配置。スカルプチャは画像のように段によってキー向きが異なり無駄なく指を動かせる配置。

 キー数は60でマウスキーが3。キー押下圧は45gでキーストロークは3.6mm。キースイッチは前述のとおり独自開発品で、HHKBオリジナルチューニングのリニアタイプ静音メカニカルスイッチ(Kailh社製)を採用している。

 HHKB Studioとパソコンなど端末との接続は、Bluetooth(最大4台とマルチペアリング)とUSB-C。電源はUSB接続時がUSB給電で、Bluetooth接続時が単3形乾電池×4本となる。Bluetooth接続・アルカリ乾電池で使用した場合は約3カ月間使用可能。

 サポートOSはWindows 10(64bit)以降、macOS 11以降、Android 9以降、iOS 13.7以降、iPadOS 13.0以降となっている。

あーらイキナリ、打ちやすい

 新機軸HHKBことHHKB Studioについて、多くの面で魅力的だと感じたが、ひとつだけ危惧したことがあった。それはキースイッチ。従来のHHKBは静電容量無接点方式だったが、これがメカニカルスイッチに変更になったことだ。

HHKB Studioに採用されたメカニカルスイッチ。キースイッチ自体の交換やキーキャップの交換ができて非常に魅力的な仕様ではあるのだが……。

 静電容量無接点方式のキースイッチは、静電容量で動作するスイッチ機構を使うことで、電極が接する箇所がない。これにより耐久性と信頼性が高く、チャタリングやスイッチ故障を起こすケースが極めて低い。

 一方のメカニカルスイッチは、接点があるために使うほどに劣化する。俺の経験では、だいたいチャタリング(スイッチの接点不良などで一度のタイプで複数回も入力されるなどの現象)を起こすようになる。そうなるとスイッチの交換が必要。ハンダ付け作業だ。現在はホットスワップ対応のキースイッチがあるので、それに対応しているキーボードならキースイッチの交換は簡単。HHKB Studioもホットスワップ対応のキーボードだ。

 もうひとつ、俺の場合は静電容量無接点方式のキースイッチに慣れており、同キースイッチを採用する従来のHHKBや愛用中のREALFORCE R3の使用感をヒッジョーに気に入っている。「メカニカルスイッチ? そのうち壊れるし、押下感もどうなのかなぁ?」とHHKB Studioのキースイッチに危惧を抱いていた。

 のだが、HHKB Studioをタイプしてみたら、あらまあイキナリ打ちやすい! リニアでクリック感がなく、わりと浅めの打鍵感だが、音も静かでスイッチ自体の滑らかさも良好。

 その打ち心地は総じて「エレガント」という感じ。音もそうで、愛用中のREALFORCE R3よりも上品に聞こえる。そんな打ち心地のHHKB Studio、タイプして3分で気に入った。

 打鍵感のよいHHKB Studioなので、興味があるならぜひ実機に触れてみてほしい。PFUのキーボードは各所の「タッチ&トライスポット」で触れることができる。

 また、「ゲオあれこれレンタル」でも借りることができ、その後にHHKB Studioを買うゼとなったらレンタル料金を差し引いた金額で購入できる。

イイじゃ〜ん、ジェスチャーパッドとポインティングデバイス!

 新搭載のジェスチャーパッドとポインティングデバイス(ポインティング・スティック)。ジェスチャーパッドはキーボード側面の2方向タッチパッドで、ポインティングデバイスはIBMの赤いポッチこと「TrackPoint II」と同じマウスポインター操作対応のデバイスだ。

ジェスチャーパッドはキーボードの側面にあり、合計4つある。機能は後述のキーマップ変更ツールで入れ替えたりカスタマイズしたりできる。ジェスチャーパッド自体を不使用(無反応)にすることもできる。
IBMの赤いポッチと同じポインティングデバイスを備える。マウスポインターを動かせて、軽くタップするとクリック操作になる。一般的なマウスと同様に使えるボタンも3つ搭載している。

 ジェスチャーパッドは、初期値では左側2セットがカーソルキー操作に対応している。右側2セットは上下スクロールとウィンドウ(アプリ)切り替えになっている。

 これを知ったときに「HHKB Studioだとタッチ操作でカーソル操作ができるのか? カーソルキー代わりになるじゃん!」と思った。カーソルキー超使う派なんスよ〜。

 で、実際に操作してみたら、あらけっこうスムーズ。これなら慣れられる。ヘンな位置にあるカーソルキーよりずっといいかも! と感じた次第。その後、右手でカーソル操作したいなあと思い、キーマップ変更ツールでジェスチャーパッドの左右機能を入れ替えた。

キーマップ変更ツールでジェスチャーパッドの左右機能を入れ替えたの図。左2セットはウィンドウの縦スクロールと横スクロールに、右2セットはカーソルキーと同様にした。

 それからポインティングデバイス。これもイイ感じで、ちょっとしたマウスポインター操作ならマウス不要って感じ。カーソル移動スピードはキーボードショートカットにより4段階に変更でき、画面の広さや用途に応じて手早く設定できる。3つのマウスボタンも便利だ。

 そして操作性が非常にいい。しっかりチューンされているという印象で、「この設定にするとこの動きがヘン」みたいなことはほぼ皆無であった。こういうポインティングデバイスが搭載されちゃうと、従来のHHKBの売れ行きが下がっちゃうのでは? と思ったりするほど完成度が高い。

なんでもデキちゃう? キー配列カスタマイズ機能

 HHKB Studioは、専用のキーマップ変更ツールを使うことで各キーの機能を自在に設定することができる。右の「Opt」キーを「Fn3」キーにしちゃおう、みたいなキーマッピング変更ができるわけですな。

 それだけでなく、装飾キーやファンクション(Fn)キーを自由な位置に割り振ることもできる。さらに1つのキーに(複数キー同時押しの)キーボードショートカットを設定することもできる。Fn3機能を設定すれば、ユーザーが自由に利用できるFn3キー同時押しの機能を作り込むこともできる。なんでもデキちゃう? と思えるようなスゲく強力なキー配列カスタマイズ機能だ。

キーマップ変更ツールの表示例。変更したキー配列はHHKB Studio内に保存されるので、以降はどの端末につないでもそのキー配列で打鍵できる。保存できるプロファイル(キー配列のセット)は4つまで。Mac用、Windows用、iPhone用、Android用などとプロファイルを使い分けられる。なお、キーマップ変更ツール使用時はパソコンとHHKB StudioをUSB接続する必要がある。
上のキーボードのキーのひとつをクリックし、そこに入れたいキー(マッピング)を下から選ぶ。その逆でもOK。けっこう直感的に使える。「QWERTY配列」となっているが、これは既に割り振られているキーの入れ替えに便利だろう。
「すべて」を表示すると、割り振り可能な単一キーを選べるようになる。
「デバイス」からはポインティングデバイス関連の機能やタッチパッドの感度に関わる機能などを選べる。
「ショートカット」では複数キー同時押しのキーボードショートカットを設定できる。ひとつのキーにスクリーンショット取得のキーボードショートカットを割り振ったりできる。

 あらまぁ便利っていうか大充実のキー配列カスタマイズ! そして前述のとおり、HHKB Studioはキースイッチやキーキャップの交換もかなり自在。キーキャップを交換しつつそのキーにキーキャップの刻印と同じ機能を割り振ると……もうやりたい放題のカスタムキーボードが作れちまうってわけですな!

 なんか……キーボードの名門が……我々キーボード大好き人間たちを……カスタムキーボード沼に引きずり込もうとしているのかもしれない!!! HHKB Studio沼から抜け出せないようにするためのHHKB Studio各種機能性能なのかもしれない!!!

 てな感じで実用性はもちろん趣味性もしっかり持ち合わせているHHKB Studio。4万4000円をどう見るかだが、キースイッチも交換可能でながーく使える高機能・愉快・コンパクト・合理的キーボードなので、俺的には決して高くないように見える。

 あ、でもヒトツだけイマイチと感じた点が。それはカラーが「墨」であること。色自体は好みではあるが、黒いキーキャップの上に黒の刻印。これが非常に見づらい。あまり使わない記号類を入力するとき、俺は結局キーキャップを目視して「あの記号どこ押すんだっけ?」と探すが、それをするたびに「あーもー刻印が超見づらい!」とイラつくのであった。

 ……でも、既に注文したキーキャップと交換すれば! Fnキー同時押しの機能刻印はなくなっちゃうけど、ほか一般的なキー刻印の視認性はグッと高まるであろー! ふははははは! 墨に勝ったゼ! 的な?

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。