スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

人工知能が写真を一変させる「Luminar AI」

AIが写真を美化・好印象化・便利化

SKYLUM「Luminar AI」は編集機能を備えた画像ブラウザで、AIによる強力な自動編集機能が特徴的。写真のなかの空だけをワンタッチで置換することもできる

 今回のネタはAIが処理を請け負いまくりの画像処理アプリ、SKYLUM「Luminar AI(ルミナーエーアイ)」。以前に「Luminar 4(ルミナー4)」をレビューしたが、その後継アプリだ。Luminar 4はAIが空を置換しちゃったりするアプリですな。

 リンク先の記事のとおり、俺の場合はLuminar 4を使ってそのAI処理機能にビックリ。ユーザーの手間が大幅に省かれ、処理結果も十分満足できるものだった。てゅーか「コレってAIによる自動処理なんだョ!」とか言わなきゃバレないレベルで、写真を半自動的に美化・好印象化してくれるのであった。

Luminar 4のAI機能で空を自動置換している様子。写真左側がオリジナルで、右側が置換したものだが、それを調整前/調整後の比較機能で見比べている。モヤッとした空をエモーショナルな夕日にしつつ、風景全体の色調を空に合わせて自動調整することもできる

 こういう「空だけを別の写真のものと差し替える」といった編集は手作業でもできる。が、実際はタ〜イヘン。手間暇かかりまくり。しかしLuminar 4だと「空の写真を選ぶ程度」でデキちゃう。効率が超イイし仕上がりも十分キレイだしで、仕事に使えるレベル。なので、Luminar 4を多用し始めた。

 そして2020年の12月15日にLuminar 4の後継アプリとなるLuminar AIが発売された。処理性能が高まりつつ使いやすくなっているっぽかったので、Luminar AIを購入&使用し始めた。

 ちなみに、Luminar 4とLuminar AIの違いだが、人工知能エンジンが刷新され、処理速度が高まり、新しいツールや機能が加わっている。アプリの特徴としては両者よく似ているが、後継アプリLuminar AIのほうが容易に使えて機能も豊富という印象だ。

Luminar 4の表示例。真昼の空を夕空に置換している様子だが、初期設定では画面がややゴチャゴチャしている。画像処理関連のUIもやや煩雑という印象がある
Luminar AIの表示例。同じように空を置換している様子。初期設定ではスッキリした表示(フィルムストリップなどを追加することも可能)で、UI部分の見やすさやわかりやすさも高まった。両者ではAI処理の出力結果もけっこう異なるようだ

 Luminar 4もLuminar AIも、「写真を手軽に処理して思うイメージに近づけたい」というユーザーに向く、直感的に使えるアプリ。アプリを扱うスキルにおいては初心者レベルでも使える使い勝手でありつつ、仕上がりはプロクオリティ、みたいな。そんなアプリとして使い始めたLuminar AIだが、結果、非常に気に入っておりその処理機能もスゴいと感じる。てなわけで以降、Luminar AIの特徴的な機能についてレビューしてゆきたいッ!!!

SKYLUMのお家芸こと“スカイAI”で空を置換

 Luminar AIは非常に多彩な静止画処理ができるアプリだが、やはり特徴的なのが空を置換するスカイAI機能だ。写真を撮りに出かけたら「チガーウ、この感じの空じゃナーイ」ってときでも、ロケに出たら「あちゃ〜薄曇りになった〜青空が欲しかったのに!」ってときでも、スカイAIにより好みの空に置き換えることができる。しかも超簡単に。まずはその手順をスクリーンショットと説明文で見ていこう。

Luminar AIはよくある画像ブラウザ的なUI。写真を読み込んで、そのなかの1枚を選んで表示する。さらに編集していく
編集タブをクリックすると、右側にツール一覧が表示される。空の置換は「スカイAI」ツールで行う。主な操作は項目の選択とスライダーでの適用量調整なので、迷わず処理を進めていける
「空のセレクション」ボタンでプリセットの空を選ぶ。ここでは夕景を選んでみた。空を選ぶとすぐ、もとの写真の空が選んだ空に変わる。自前で用意した空の写真を追加し、それを置換素材として使うこともできる
「このままだと道路が明るく色合いも不自然」と感じたので、風景要素を空の色味に合わせる「シーンのリライト」を調整。それぞれのスライダーを最大にしていったら、自然な雰囲気になった

 以上が基本的な使い方だ。空の手前にある山とか木々の隙間とかそういった要素を自動認識して空をはめ込んでくれるあたり、相変わらず「さすが!!!」である。

 さらに細かく画像を調整していくこともできる。空を少しボカすとか、全体の明るさや色温度を微調整するとか。

 でもまあ「だいたいLuminar AIがやっちゃってくれる」という感じ。ホント手軽なのだ。ユーザーが苦心するのは微調整とかそーゆーコトよりも、「どういうイメージが自分のなかでの理想なのか」をハッキリさせることかもしれない。

 以下、ご参考までに、スカイAIツールで空を置換のビフォーアフターを。左がオリジナル写真で右が空置換後写真。たまに一部失敗があるが、だーいたいうまくいくのであった。

春先のコーヒーショップを夕空にしてみた。コーヒーショップの窓に映り込む空の色まで夕暮れの色になっていて、お見事。……影の強さや方向をよくみると、違和感が残ったりするわけだが
薄曇りの空を雲がモクモクの空に置換。湖面や自転車などの色温度も微調整されている
夏空を秋空に。空とそれ以外の風景要素が比較的に明確に分かれている写真だと、スカイAIツールの処理結果も良好だ
空とそれ以外の風景要素の接続部がやや複雑な写真の例。概ねうまくいっているが、写真左側中央の電線が一部消えていたり、オリジナル写真の雲が少し残ったりしている。ちょっとだけ失敗しているが、そのあたりは写真の主題ではないので一見では気づかないと思う
自転車のフレームやスポークの間に見える空もしっかり置換してくれるあたり、スカイAIツールは秀逸だと思うわけだが、しかし、これにはちょっとした失敗が見えている。見比べると、右写真の前輪や後輪の間にはオリジナル写真の雲が残っている。前輪ディスクブレーキも、処理後は消えかかったりしている。まあでもオリジナル写真と見比べなければ気づきにくい部分ではある

 といった感じで、たまに失敗する箇所もあるわけですな。「シーンのリライト」スライダーの調整具合でこういった失敗が抑えられたりはするが、「どうしても完璧には空の置換ができない写真」もあるというわけだ。

 でも、Luminar AIで大まかな空の合成を済ませて、違和感がある部分のみ手作業でレタッチすればいいとは言える。というか、広告写真のプロの人でも実際にLuminarをそういうふうに使うことがあるとか。まあ仕事に使えちゃうレベルですよね、コレ。

新機能「ポートレートボケAI」がツカエる!!!

 2021年7月27日にLuminar AIの最新版であるアップデート4が公開された。そのタイミングで加わったのが新機能「ポートレートボケAI」。AIが被写体と背景を区別して、背景にボケ味を加えるという機能だ。どんな感じで使えるのか、スクリーンショットと説明文で見てみよう。

写真を開いてツールから「ポートレートボケAI」を選び、適用量スライダーをあげれば背景がボケる。適用量スライダーをドーンと上げても異常な処理結果とならないあたりは、ほか機能と共通するLuminar AIの「適切な節度」だと感じられる
被写界深度を細かく調整することもできる。左は被写界深度を浅くした(背景ボケを強くした)状態。背景の色味を変えることも可能で、雰囲気としては「朝撮った写真・昼撮った写真・夕方に撮った写真」という感じで背景色温度の微調整を行える
「ポートレートボケAI」ビフォーアフター。スライダーをちょっと調節するだけで背景がしっかりボケた。すご〜い♪

 ほぼバッチリですな〜。この写真での「ポートレートボケAI」適応結果について突っ込むとしたら、顔の左側のマスクと帽子あご紐の間が背景として認識されなかったこと、写真左側の背景ほど奥に位置していないクルマまでボケてしまったこと、あたり。

 ただ、そのあたりは手動で対応可能。ポートレートボケAI上の「ブラシコントロール」の「フォーカス」や「ボケ」「復元」のスライダーで手動調整できる。「フォーカス」でボカさないエリアの指定、「ボケ」でボカすエリアの指定、「復元」でAIが認識したエリアに戻せる。

左は被写体となるエリアを手動で追加している様子。クルマのボディはボケさせないようにすると、右のような結果に。手動での範囲選択が甘かったため、ミラーのあたりの輪郭が曖昧になってしまった。これはユーザーのミスですな

 細かいことはさておき、AIが人物を認識&範囲選択して、背景を思われる部分をボカしてくれる、というところまで全自動。大したモンなのである。

 しかしここまでキレイかつ自然に背景をボカせると、「ボケ味を楽しみたい」という以上にさまざまな用途にツカエる。たとえば「写って欲しくないものが背景にある」という場合、そういった様子を自然な雰囲気で見えなくすることができる。まあ上の写真も「背景が汚い」のを隠しているとも言えるが。ともあれ具体的に何ができるか、「ポートレートボケAI」ビフォーアフターで見ていこう。

たとえば旅行などの写真をBlogなどに掲載するケース。店名などを隠したい場合、自然な雰囲気で背景をボカすことができる。モザイクとかよりは違和感のない処理ですな。なお、この写真の場合、指先と背景の飾りが混ざって被写体と自動認識されてしまった。これは手動で修正できる
あるいは背景がハッキリ見えると場所が特定されてしまうようなケース。背景をほどよくボカせば、ある程度の雰囲気は伝えらえつつ、場所が特定できない写真へと手軽に加工できる。この写真の場合は自転車のサドルやダウンチューブが背景だと自動認識されてしまった。これらも手動で修正できる
これは自転車の具体的な車体が見えてしまうとマズいという場合。ポートレートボケAIは人物が複数でもそれぞれを被写体として認識するが、この写真に適用したら良好(好都合?)な結果となった。ただ、右人物の腕の間から見える背景が被写体として自動認識されてしまった。これも手動で修正できる

 メディアに掲載する写真で背景をきれいに隠すのって、けっこうタイヘン。モザイクにすると違和感が大きいし、トリミングでも限度があるし……といった場合、この「ポートレートボケAI」機能がひとつの優れた解法になる。Luminar AIは、写真を美化したり好印象化するのに加え、写真の用途を広げて便利化してくれるというわけだ。

AI任せで顔も背景も処理、お腹へっこまし機能もあるョ!

 Luminar AIには顔や肌のアラを自然に処理するAI機能もある。「フェイスAI」「スキンAI」といった機能だ。どんな感じで使えるのか、スクリーンショットで見てみよう。

処理前。iPhoneでの撮影なので、実物の顔より少し美化されているような気がするが……まあオッサンの顔ですな
Luminar AIのフェイスAI機能やスキンAI機能を使い、顔をわずかに細くし、目を白くさせつつキャッチライトも増やし、目の下のクマを少々緩和し、肌の湿疹や荒れを減らして、さらに背景を少しボカしたもの

 こんな感じで、違和感のない処理ができる。オッサンの写真だとピンとこないとは思うが、これを写真に写った人物によっては「若返った」「肌が綺麗になった」「イキイキした」といった効果が非常によくわかるケースが少なくない。

 ところで、こういった機能と前出の背景ボカしや雲の置換などを合わせて使ったらどうか? これがなかなか愉快。けっこうキマるのである。具体例をスクリーンショットと説明文で見ていこう。

オリジナルの写真。自撮りスナップ写真ですな
まずはフェイスAI機能で顔を明るく照らす。同時に目を少し目立つように処理。メガネ越しの目も自動認識してくれる
続いてスキンAI機能も適用。肌をきれいにし、テカりも除去し、肌荒れも補正
これはAIが構図を提案してくれる「構図AI」機能。試してみたら主題のインパクトを強めてくれた感じ
さらにスカイAI機能で雲を追加してみた
加えてポートレートボケAIで背景をボカした
こちらが各種AI機能を複合的に適用した場合のビフォーアフター。スライダーを動かす程度の手間で、写真の印象をかなり変えられるのであった

 大したモンですな、Luminar AI。考え方によっては「Luminar AIにより写真が描き変えられた」「写真になかったものが加わった」という「ニセモノ感」があるかもしれない。でもまた別の考え方によっては「フィルムや撮像素子で実際の風景を記録した時点で全部ニセモノ」とも言えよう。どうせニセモノ、どっちが好き? みたいな。

 もうひとつ、ちょっと興味深い“Luminar AIによる写真の描き変え”がある。それは「ボディAI」機能で、体型を自然な雰囲気で変えてしまうというもの。これも具体例をスクリーンショットと説明文で見ていこう。

ボディAI機能を使うと、人物の体型を細くしたり太くしたりできる。また、腹部のみをへこませる効果も。左がオリジナル写真で、右がこれは体型を少し細くして腹部ポッコリを軽減した写真。スライダーを大きく動かしても極端な処理をしないあたり、Luminar AIの使いやすさだ。なお、体型を変化させると周囲の風景が若干歪む
右が処理後。人物は複数認識され、実は左側の男性の体型や腹部も変化している。太め男性の集合写真を一気にダイエットさせることもできる?

 といった感じのLuminar AI。ちょっとした色補正から手軽なレタッチまでいろいろデキるアプリだが、やっぱりAI任せの処理の多くを「凄〜い!!!」と驚けて印象的。常用の現像・レタッチアプリとしているユーザーも増えているようで、実際使っていくと「この写真はLuminar AIで処理すればもっと良くなる」と感じることが少なくない。平易な使い勝手でもあるので、初めて使う画像処理アプリとしてもいいかもしれない。

 ともあれ、興味があればぜひ一度チェックしてみてほしい。使用期間は限定だが、無料でフル機能を試せるトライアル版もある。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。