スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

今時の「骨伝導ヘッドホン」は音がイイ!?

今時の「骨伝導ヘッドホン」は音がイイ!?

 ひっさびさに「骨伝導ヘッドホン」を買いました。顎の骨を振動させて音を聴神経へ伝える方式のヘッドホン。モノはAfterShokzの「TREKZ TITANIUM」(公式ページ)です。日本ではフォーカルポイント(製品ページ)から発売されていて、フォーカルストア価格は税別1万2880円です。

AfterShokz(アフターショックス)の「TREKZ TITANIUM(トレックス タイタニウム)」。音源とBluetooth接続して無線で使える骨伝導ヘッドホンで、ネックバンドのように装着して使います。カラーバリエーションは写真の4色。

 この骨伝導ヘッドホン、2017年の6月に国内販売が開始されました(AV Watchニュース記事)。それを知って、一瞬「あっイイかも」と。かな~り以前に骨伝導ヘッドホンを使ったことがあったんですが、その製品は有線式。TREKZ TITANIUMを見て「骨伝導で無線だと快適そう」と思ったわけです。

 ですが、骨伝導ヘッドホンの類って、高音質という印象が全然ありません。人の声などはわりと聞きやすく、骨伝導なので周囲の騒音にも邪魔されにくいので、通話とかに使うならイイ。しかし「音楽を聴くには全然適なさい音質」という印象があったんです。また、TREKZ TITANIUMは値段も安くはありませんでした。というわけで、一瞬TREKZ TITANIUMに興味を持ったけど、やっぱりいいやとスルー。

 それから半年以上経ち、今年2018年のある日にコストコに買い物に出掛けましたら、あっあの骨伝導ヘッドホンが安価にて販売されている! 税込9800円! ……あ、こここ、これは、骨伝導って音が悪い(←思い込み)から市場に受け入れられずに叩き売り? やっぱりね~。

 てなコトを思いましたが、音を聴けるTREKZ TITANIUM実機が展示されていましたので試聴。すると、けっこーイイ音。いやコレ骨伝導ヘッドホンの音質じゃないでしょ! ていうか今の骨伝導ヘッドホン、一昔前のと全然違う! と思ってサクッと買っちゃいました。でもなんでコストコってこんなに値引きできるの?

 ともあれ以降、骨伝導ヘッドホンTREKZ TITANIUMの使用感などを書いてみたいと思います。なお、コストコにて9800円で買ったTREKZ TITANIUMは、どうもコストコ販売に特化したものらしい? そのあたりも含めて書ていきます。

TREKZ TITANIUMってどんなヘッドホン?

 まずはTREKZ TITANIUMの概要から。前述のとおり「骨伝導ヘッドホン」です。耳の穴の前方にある「下顎骨」から聴神経に振動(音)を伝えるという方式。空気の振動となった音が鼓膜→聴神経に届くという、一般的な方式のヘッドホンとは音の伝達経路が違い、音の伝わりが周囲の騒音に邪魔されにくいという特徴があります。

TREKZ TITANIUMはドライバ部を耳の前方に当てて使います。
操作ボタン類は合計3つ。左ドライバ外側にマルチキー、右側ドライバ手前下部に音量キーなどがあります。マルチキーで音楽の一時停止や再生、受話や終話などを行い、音量キーは電源オンオフやペアリング操作にも使います。

 TREKZ TITANIUMは骨伝導ヘッドホンであり、かつ、Bluetooth接続の無線式ヘッドホン。無線で音楽が聴けるほか、通話にも対応します。Bluetooth対応プロファイルはA2DP/AVRCP/HSP/HFPですが、コーデックは公開されていないようです。

 見たとおりネックバンド式のヘッドホンで、防水防塵対応。防水防塵性能はIP55で、機器作動に支障をきたす粉塵が内部に侵入せず、全方向からの水の直接噴流による悪影響を受けないといいうものです。スポーツ時に大汗をかきつつ使ってもOKな防水性能で、粉塵かかっても大丈夫な防塵性能。ネックバンドは「挟む力」もそこそこ強く、こめかみへのフィット感も良く、激しく動いても外れたりしません。そのあたり、スポーツやアウトドアアクティビティにはとりわけよく向く製品です。

 ちなみに、充電はUSB充電(microUSB)で、最長約1.5時間で満充電になります。満充電からの駆動時間は連続再生で約6時間、連続待ち受けで約10日間となっています。

 操作感は至ってシンプル。ボタンは3つしかなく、特殊な操作の方法も一度行えば覚えられるくらいの平易さです。ただ、マルチキーが左側にあり、ボリュームボタンが右側にあるのはやや残念。3つのボタンを右側か左側に集めて「右もしくは左の手だけでボタン操作ができるように」してほしかったとこです。

音質はどう? 音漏れは!?

 さて、肝心の音質ですが、筆者の経験からすると「骨伝導方式のイヤホン/ヘッドホンとしてはかなり高音質」という印象です。ただ、筆者の認識だと、骨伝導方式のヘッドホン/イヤホンって、わりと純粋に「骨への振動だけで音を伝える」というもの。ですが、TREKZ TITANIUMの場合、骨伝導方式に加えて、鼓膜から音を伝える方式も使われているようで、頭部から外しても普通のイヤホン/ヘッドホンのように少々音が聞こえてきます。骨伝導+空気振動により、音をより聞こえやすくしているのかもしれませんが、詳細はよくわかりません。

 さておき、音質を具体的に言えば、まあまあの音質の超小型ポータブルスピーカーというイメージ。普及価格帯のイヤホン/ヘッドホンより1~2ランク落ち、音質をウリにしているやや高価めのイヤホン/ヘッドホンとは比較にならないレベルです。普通のイヤホン/ヘッドホンとして見ちゃうと、ハッキリ言って「音質は低い部類」。

 とは言っても、音楽をBGM的に流すなら、まあまあ聴ける音質ではあります。高音もそこそこ聞こえますし、低音もわりと出ています。一昔前の骨伝導イヤホン/ヘッドホンだと「これで音楽を聴くって、何かの罰ゲーム? 苦行の一種?」みたいな音質でしたが、TREKZ TITANIUMならけっこう気分良く、あまり不満もなく、音楽やラジオ放送を楽しめます。

 また、通話に使っても、相手の声がクリアに伝わってきてイイ感じです。両手がフリーで通話できるのはもちろん、通話中に周囲の音がよく聞こえるのも実用的。耳の解放感がありつつ、通話がしっかりできる感じもまた、TREKZ TITANIUM独特の使用感です。仲間と会話しながら行動を共にするような用途にもイイかもしれません。

 細かな話ですが、TREKZ TITANIUMにはイコライザー機能があり、低音まわりの強さを変えられるようです。使い方は、音楽など再生中に2つのボリュームボタンを同時に2秒押し。低音を減らしてしまう状態にすると「高音がよく目立つ特殊な音質」になりますが、この音質にすると通話で相手の声が聞き取りやすくなるように感じます。

 なお、TREKZ TITANIUMは「装着位置」によってかなり音質が変わります。装着位置により、低音も高音もバランス良く聞こえることもあれば、高音ばかり響くようなことも。肌によく密着させつつ、最適な音質となる位置を見つける必要が少々あると思います。

 それと、音漏れがけっこうあります。非常に静かな室内だと、1m離れている相手に音漏れが伝わる感じ。聴く音量にもよりますが、その状況だと「静かめにBGMを流す音量」で聴いていても、相手に僅かに音漏れが聞こえるようです。「音楽にノレるくらい大きめの音量」で聴くと、相手に「曲は何か?」「歌詞内容は何か?」までわかるくらい、音が伝わっちゃいます。

 そんな感じで音漏れするので、静かな室内ではなく、電車やバスなどで移動中であっても、他者が近くにいる場合は迷惑になるかも。公共交通機関にて混雑気味なときには使うのが憚られるTREKZ TITANIUMです。

 ただ、そういう「非常に静かな室内」とか「他者が間近にいる状況」でなければ、あ~んまり気にならない音漏れかもしれません。外を歩いているとかなら、全然問題にならない音漏れ。移動中全般そうですね。ある程度ガサガサガタゴトと作業しているときも同様だと思います。

外の音が聞こえて好都合♪

 TREKZ TITANIUMを使っていてイイのは、やはり「環境音が丸聞こえ」という点。耳の穴を全く塞ぎませんので、周囲の音はそのまま聞こえてきます。TREKZ TITANIUMの音量をかなり上げると、そのぶん周囲の音も聞こえにくくなりますが、まあ常識的な範囲のボリュームで使っている限り、TREKZ TITANIUMは「音楽などを聴いていても周囲の環境音がしっかり聞こえるヘッドホン」だと思います。

 また、その「環境音が丸聞こえ」が好都合なことが意外に多い。まず徒歩で好都合。歩きながらBGM的に音楽を楽しめるわけですが、周囲の音もハッキリ聞こえます。クルマやバイクの音はもちろん、ボリュームをあまり大きくしていなければ、近づく人の音……というか気配的なものもわかります。いきなり人などが視野に現れて「ハッ!」とビックリすることもありません。

 雑踏など歩いているときにTREKZ TITANIUMを使うと、音楽を聴きながらでも周囲を行き交う人を意識でき、安全な感じ。危なげなく音楽を聴いていられるのは、TREKZ TITANIUMがもたらす独特のリラックス感につながっているかもしれません。

 ちなみに、ボリュームは最小の状態から13段階上げられますが、5段目くらいにすると歩きながらでもBGMを楽しめる感じ。周囲の状況によってはもう少しボリュームを上げる必要がありますが、それでも周囲の環境音は良好に聞こえてきます。

 室内で使っても意外に快適です。室内ですと、最小音量から3段くらいボリュームUPすれば、BGMとして音楽を楽しめます。ラジオのトークなどをしっかり聴きたい場合は、もう1~2段ボリュームを上げたくなるかも。

 さておき、室内のどこにいても何をしていても、同じ音量・バランスで音楽や放送が聞こえる。同時に、室内でももちろん「環境音が丸聞こえ」。ですので、スマートフォンやPCの各種アラート音とか、作業に関わる音(キーボードを打つ音とかペンで書く音とか)もハッキリ聞こえます。当然、呼び鈴のピンポン音や、ほかの部屋の物音も聞こえます。

 つまり、スピーカーで音楽を鳴らしていたりすると聞き漏らすような音でも、TREKZ TITANIUMならだいたいハッキリ聞こえてくるわけです。作業中などに移動しても同じ音量。顔の向きを変えても何ら変わらない聞こえ方のBGM。何と言うか、聴覚的に閉塞感などの違和感がないけれど、BGMや放送がつねに同じ感じで耳に入ってくるという感覚。これがけっこうイイですし、イヤホンやポータブルスピーカーなどと比べてもずっと便利です。

 あと、構造上、耳の穴への負担がゼロなもの快適ですね。ただ、耳の穴の前方あたりには少々圧迫感はあります。ソレがイヤという人もあるかもしれませんが、筆者は短時間で慣れました。

 それから、このタイプのネックバンド式ヘッドホンって、体や首を動かしたときにノイズが発生しにくくてイイですね。筆者の場合ですが、TREKZ TITANIUM使用中に首を左右に早めに動かしても、TREKZ TITANIUMと耳や首が擦れることからくるノイズは出ませんでした。ただ、メガネをかけると、メガネのフレームとTREKZ TITANIUMが擦れる「ギュギュッ」みたいなノイズが出ることがありました。

 やや話が逸れますが、筆者はTREKZ TITANIUMをコストコにて税込9800円で買いました。実勢価格ですと税込1万3910円しますが、ずいぶん安く買えた感じ。ただ、よく見たら、一般販売品とコストコ販売品では、一部仕様が異なるようです。具体的には、まずパッケージの違い。それから一般販売品にはFitBands(サイズ調整用)が付属しますが、コストコ販売品にはそれが付属していません。ほかの違いは、実機を比べたわけではないので、わかりませんスイマセン。

コストコで購入したTREKZ TITANIUMのパッケージとその裏面。そうなんです無駄にデカいんです。USBケーブル3本セットとかの商品も、こういうプレート状の大きなパッケージに入って売られていたりします。このデカさってアレですかね、万引き防止? コストコのTREKZ TITANIUMにはFitBands(サイズ調整用)が付属しませんが、ほかの一般流通品には付属しているようです。

 あとこのTREKZ TITANIUM、ナニゲに堅牢性もあります。前述のようにIP55の防水防塵性能がありますが、それに加えてネックバンド部がしっかりしたつくり。また、材質的にも傷つきにくそうです。なので、なんかこう、雑に扱っても壊れにくそうな気がします。そのままバッグに突っ込める感じのヘッドホンなので、気楽さという点でも好印象です。

専用ポーチが付属しています。が、つくりが壊れにくそうですし、グニッと曲げても大丈夫なネックバンド部の堅牢さがあったりもしますし、わりと気楽(というかラフ)に扱える製品だと思います。ただ、耐衝撃性が保証されているわけではありませんので、もちろんなるべく丁寧に扱うのが良いと思います。

 てな感じの、TREKZ TITANIUM。骨伝導ヘッドホンの類としては「あまり違和感なく音楽を楽しめる音質」だと思いますが、音質重視で買う製品ではないと思います。それよりも「行動しているときの環境音がちゃんと聞こえつつ、悪くない音で音楽も楽しめる」というところがポイント。興味のある方は、ぜひ実機に触れてその使用感などを確かめてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。