スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

新しい「10.5インチiPad Pro」、インパクト少なめ?

新しい「10.5インチiPad Pro」、インパクト少なめ?

 2017年6月13日に発売された「ちょっと画面が大きな最新iPad」こと「10.5インチiPad Pro」。これまであった「9.7インチiPad Pro」が終了し、これと入れ替わって発売された「小さいほうのiPad Proの後継機」という感じです。ワタクシ、iPad Proについては機能も使用感もヒッジョ~に気に入っており、従来の9.7インチのものも12.9インチのものも激愛用中。というわけで、最新型「10.5インチiPad Pro」も購入しました。

2017年6月13日発売の最新型iPadとなる「10.5インチiPad Pro」。容量違いで3種類あり、64GBが税別6万9800円、256GBが税別8万800円、512GBが税別10万2800円。カラーはシルバー、ゴールド、スペースグレイ、ローズゴールドの4種類です。スペースグレイの256GBを買いました。

 で、いきなりワタクシ的な結論。「10.5インチiPad Pro」を買ってどうだったのか? に答えれば「嬉しいっす」「9.7インチのよりイイっす」みたいな。実際に使うと満足感がありますし、これまで使っていた「9.7インチiPad Pro」の使用頻度が急激に下がり、新しく買った「10.5インチiPad Pro」ばかり使うようになりました。

 けれど、もうひとつの結論を言えば、「9.7インチiPad Pro」からの乗り換えだと、インパクトはイマイチ。こういう製品が発売されたらすぐ買っちゃうアーリーアダプタでありかつレビュー記事を書くのが仕事だったりもするワタクシなので買いましたけど、ワタクシが単なる「9.7インチiPad Pro」ユーザーだったら購入は見送っていたかも、ってくらいに「9.7インチiPad Pro」と「10.5インチiPad Pro」にはインパクトを感じるような差が少ないと思いました。

 まあでも、これからApple Pencilが使えたり画面表示や音が良かったりするiPad、つまりiPad Proを買うというスタンスなら、「10.5インチiPad Pro」発売のタイミングで購入を吟味できる人はラッキーだとも思います。「9.7インチiPad Pro」より「10.5インチiPad Pro」のほうが明らかに優れた端末だと思われるからです。

 まあそのあたり「“買い”なのかどうなのか?」については最後にまとめるとして、以降、「10.5インチiPad Pro」をしばらく使ってみての印象などを書いてみたいと思います。なお、「10.5インチiPad Pro」はWi-Fi + Cellularを買い、ドコモ網のMVNOのSIMカードを挿して使っています。

大きさの違いは一回り弱、愛用者ほど気付く画面サイズの差

 まず「10.5インチiPad Pro」の外観ですが、「9.7インチiPad Pro」などの9.7インチiPadと比べると、違いはあ~んまりナイという感じ。サイズや質量の公称値は、「10.5インチiPad Pro」(Wi-Fi + Cellularモデル)が250.6×174.1×6.1mm・477gで、「9.7インチiPad Pro」(Wi-Fi + Cellularモデル)が240×169.5×6.1mm・444gです。で、実際に比べてみると、大雑把に「大きさも重さもだいたい同じ」という印象。

「10.5インチiPad Pro」と「9.7インチiPad Pro」を並べてみました。額縁が黒いほうが「10.5インチiPad Pro」。並べた状態だと新型のほうが縦長になったという感じがありつつ、「12.9インチiPad Pro」の見栄えに近いような印象もあります。重ねると「ほんの少しサイズが違う」ということがわかりますが、一見すると同じ端末に見えるくらい、差が僅少です。
裏返してみました。スペースグレイのほうが「10.5インチiPad Pro」です。細かなスペックには違いがある「10.5インチiPad Pro」と「9.7インチiPad Pro」ですが、裏側のイメージもパーツ配置もほとんど同じですネ。

 なーんだ同じじゃん! こんな同じようなモンを10万近くだして買うなんてどうかしてるゼ! とか無頓着な人に言われそうですが、あ~ま~そうとも言えるかもしれません。無頓着な心意気を敢えて起動しつつ、もっと言えば「使い勝手もだいたい同じ」ですし。

 ただ、毎日「9.7インチiPad Pro」を使っている人にとって、新型「10.5インチiPad Pro」の画面サイズについては、その違いがわかると思います。実際に両機を並べて見てみましょう。

画面を表示させつつ「10.5インチiPad Pro」と「9.7インチiPad Pro」を並べてみました。長辺の長さが違うことがわかります。画面サイズの違いも何となく……わかりますよね? でもパッと見だと「色違いの端末?」くらいの印象になるかも。

 という感じ。10.5インチと9.7インチを並べてるよ~、と前置きしていないと、パッと見ではイマイチわらないかも、です。まあ0.8インチの差ですし。

 でも、iPadの9.7インチ系をたびたび使ったことがある人が「10.5インチiPad Pro」を使うと、並べなくても使っただけで「ん?」と感じるんじゃないかな~、と。たとえば「あれぇ~、画面のフチが狭くない? コレAndroid?」みたいな微妙な違いを感じ取れるように思います。その後に「なるほど10.5インチのiPadか、コレ」的に気がつく、みたいな。

 さらに、9.7インチ系iPadを毎日使っている人が、新型「10.5インチiPad Pro」を使うと、すぐに「あ!」と感じると思います。画面対角0.8インチ≒2cmの違いで、長辺・短辺とも1cm程度大きいだけですが、9.7インチ系iPadを常用していると「あっ大きい」とすぐわかる違いです。ワタクシは「10.5インチiPad Pro」を使い始めてから1週間程度、毎日「あっ大きいなやっぱり」と感じていました。

 実際、各種アプリを使っていくと、10.5インチと9.7インチの快適さの違いは、わりとすぐわかります。たとえばワタクシの場合、毎日閲覧するウェブサイトは「10.5インチiPad Pro」のほうが文字も画像も一回り大きく表示されるのを見て「やっぱりこっちが読みやすいな~」と感じます。マンガも「10.5インチiPad Pro」のほうが少しだけ大きく表示され、ちょっと快適に読めます。

 ホーム画面なんかを見ると「10.5インチiPad Pro」のほうが「間延びした感じ」なので、そこで画面サイズの違いに「あっ」と思う人があるかもしれません。余談ですがこの「間延び感」と額縁の狭さからくるバランス、他意はありませんが「12.9インチiPad Pro」の雰囲気と良く似ている気がします。

 それと、画面サイズに応じて表示サイズや表示文字数を変化させるアプリだと、表示もちょっと違ってきて、「10.5インチiPad Pro」のほうが都合が良い表示になることも。たとえばiOS標準アプリの「メモ」の場合、横表示だとメモの件名が数文字多く表示されつつ、メモ内容が少し大きめに表示されたりします。ちなみに、「10.5インチiPad Pro」の表示画素数は2224×1668ピクセルで、「9.7インチiPad Pro」は2048×1536ピクセルです。画素密度は同じ264ppiなので、表示の綿密さは同じです。

 といった感じで、iPad愛用者であるほど違いを感じる画面サイズ。「10.5インチiPad Pro」のほうが「9.7インチiPad Pro」(やRetina表示の9.7インチ系iPad)よりも画面表示についてより有利で都合が良い要素が多いのは明らかで、9.7インチ常用者なら確実に気付く違いがあります。でも、たまにしか使わないくらいの人だと気付かない程度の差かもしれません。

 もうひとつ、新型「10.5インチiPad Pro」は画面を最高120Hzの速さで書き換える「ProMotionテクノロジー」を搭載しています。リフレッシュレート120Hz、毎秒120回の画面書き換えが可能なため、より滑らかな画面表示が可能とのこと。

 ということで、リフレッシュレートが60Hzだというウワサの「9.7インチiPad Pro」と比べてみたところ、たとえばiOS標準のマップアプリを思いっ切り高速でスクロールさせたりすると「ん~と、10.5インチiPad Proのほうが少し滑らか?」という印象。Apple Pencilで線を描いたときの表示追従性は「10.5インチiPad Proのほうが線が描かれる遅延が少ないような気がしなくもない」という感じ。いずれにしても「画面表示に相当こだわっている人でないと見分けがつかない差なのかな」というのが正直な印象です。

携帯感は従来機と同様、純正アクセサリーは流用可能な品も

 携帯した感じですが、前述のように「10.5インチiPad Pro」と「9.7インチiPad Pro」のサイズ・質量差は大きくないので、まあ似たような感じです。「9.7インチのiPadがちょうど入るバッグ類」をいくつも持っているワタクシですが、全てのバッグ類に「10.5インチiPad Pro」が収まりました。長辺・短辺とも増加サイズが最大1cm程度なので、10.5インチと9.7インチの差があるものの、バッグなどへの収まり感はよく似ています。

 ただ、「10.5インチiPad Pro」と「9.7インチiPad Pro」では端末のサイスが異なりますので、「9.7インチiPad Pro」用として売られていたカバーやケースの多くは使えなくなると思います。背面だけ覆うカバーはより大きい「10.5インチiPad Pro」に装着できませんし、マグネット式の画面カバーなどもサイズが合いません。

 余談ですが、純正Smart Coverも同様で、「10.5インチiPad Pro」用と「9.7インチiPad Pro」用とでは互換性はありません。まあサイズが違うのでそもそも互換もなにもナイんですが、一応装着だけはできます。「10.5インチiPad Pro」に9.7インチ用Smart Coverを装着したり、その逆の組合せも可能です。が、端末のスリープや復帰には非対応です。

 Apple PencilやSmart Keyboardなどの純正外部機器は、従来品を使うことができました。Apple PencilはLightningポートに挿せばペアリングが行われ、使用感は従来のiPad Proと同様です。

 Smart Keyboardは「10.5インチiPad Pro」用(公式ページ)として日本語配列のものと英語配列のものが発売されました。日本語キーボード派にとっては嬉しい新発売ですね。

 また、従来品の「12.9インチiPad Pro」用や「9.7インチiPad Pro」用のSmart Keyboardは、新型「10.5インチiPad Pro」に接続して利用することができました。ただしこれらの「サイズ違いのSmart Keyboard」は、当然ですが「10.5インチiPad Pro」のカバーとしてはマッチせず、またスリープや復帰にも非対応です。

「10.5インチiPad Pro」と、「9.7インチiPad Pro」用Smart Keyboardや「12.9インチiPad Pro」用Smart Keyboardを組み合わせた様子。キーボードとしてはとくに問題なく機能しますが、カバーとしてはサイズが合わなかったりスリープや復帰が機能しなかったりします。でもキーボードとしてはフツーに実用的。

 という感じで、「12.9インチiPad Pro」用や「9.7インチiPad Pro」用の周辺機器・アクセサリーのなかで、ちゃんと流用できるのはApple Pencilくらい。従来機種iPad Proユーザーはアレコレと改めて買い直す必要がありそうです。まあ、端末サイズが変わったんですから当然ですネ。

どんな人なら「買い」なのか?

 独断と偏見で「10.5インチiPad Pro」が「買い」な人を考えてみますと、まずワタクシのような「9.7インチiPad Pro」ユーザーの場合、強い理由がない限り、現時点では買うメリットは大きくないと思います。ワタクシの場合、前述のようにアーリーアダプタでありレビュワーでもありつつ、じつは家族がiPad Proを欲しているということもあり、購入に至りました。

 ところで、秋に公開が予定されているiOS 11は、iPadに関する多くの機能強化が予定されているそうです。ドラッグ&ドロップができるようになるなど、ファイル管理がより効率的で使いやすいものになるそうですが、そういった将来的なOS機能を見越してなら、期待しつつの「10.5インチiPad Pro」購入もアリかもしれません。

 古いiPadからそろそろ買い替えようかなと思う人には、「10.5インチiPad Pro」がかなり魅力的じゃないかと思います。画面サイズもApple Pencil対応もネガティブな要素になりませんし、容量・価格幅も広い(64GBが税別6万9800円、256GBが税別8万800円、512GBが税別10万2800円)ので、選びやすいと思います。

 古いiPadから乗り換えると、たぶんかなり楽しんで使える「10.5インチiPad Pro」だと思います。9.7インチ系iPadと同様の携帯性の良さがありつつ、ペンが使えて画面も広めで、ステレオサウンドも動画コンテンツを観たりする場合において秀逸。個人的には、ステレオサウンドの聞こえ方の良さから、iPad Proシリーズは映画など動画鑑賞端末としてもかなり優れていると思います。どうでしょう、初代iPad Airあたりから乗り換えると「あら見やすいし速い! 音もイイ!」と喜べる機種じゃないかな~、と思います。

 それと、iPhoneユーザーにもオススメしたい感じ。当媒体をご覧の読者の方にとっては「当然」みたいな話になってしまいますが、iPhoneを使っていてソコにiPadを加えて同じApple IDで使うと、できることの幅が大きく広がります。写真やメモなど多くの情報をiPhoneとiPadで自動的に共有できますし、iPhoneに取っていたメモが長くなりそうなのでiPadを手にしてペンで続きを書くというコトもフツーにできます。

 さらにMacが加わるとデキることがズガンと多くなるんですがさておき、iPhoneだけ使っていて、「もう少し快適にやりたい」「できることを増やしたい」なら、まずiPadの追加が良いと思います。で、どうせ追加するなら、ペンが使えて画面表示もキレイで音も良くて処理速度も速くて常時携帯できる携帯性もある「10.5インチiPad Pro」がピッタリなのでは、みたいな気がします。ま、1~2世代古いフツーのiPadでも、ペンが使えなかったり画面が少し小さいだけで、主だった「加わる利便」は同様ですけどネ。

 でもまあしかし、いわゆる「新しモノ好き」にとっては、なかなか買いにくい「10.5インチiPad Pro」だと思います。新しモノ好きなら比較的に新しいiPad持ってるでしょ? そうなるとこの最新型、やっぱり結局「これは欲しい!」的なインパクトに欠ける気がするというのが正直なところです。しかし、そうでない方にとっては、多くのケースで非常に魅力的だし実用的な最新iPadになると思いますので、ぜひ実機に触れてみてください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。